No.529(Web版179号)3

 三度藤子・F・不二雄SF短編ドラマが

 中村達彦

「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」が、今年もNHKで放送され、全話視聴した。
 昨年もPMで取り上げたが、また紹介する。
 藤子・F・不二雄が1968年から95年に描いた短編SFマンガから選びドラマ化。2023年、2024年と続き、3度目だ。6月に4本、8月末から9月初めに7本(うち1本は前後編)が放送された。
 平凡な生活を過ごしていた主人公が、奇妙な出来事に囚われる展開。
 私は中学時代から、原作を読み、大体のストーリーは知っていた。SFを含んだ、爽快な結末が多い。品がある。世にも奇妙な物語と言ったところか。
 2023年の第1シリーズから、楽しませてもらった。面白い。こう言うことが未来に起きるんじゃないか、もしかしたら本当にこうなんじゃないかと一抹の恐怖を匂わせた話もある。
 SFアイデアは古い感は特にない。入門書として適している。
 多くの作品は、既にストーリーはわかっていたが、映像化したらどうなるか楽しみだった(第1シーズンに放送された「流血鬼」は昔小中和哉に映画化の話があり、企画倒れに終わり残念に思ったものだ)。
「えっこの人が」と何度も起用に驚かされた俳優の演技と、苦労して制作したVFXやアニメーションを取り入れ仕上がった。作り物と感じない。
 3度目11本のうち、後半の7本を取り上げる。
 最も楽しみにしたエピソードは「みどりの守り神」。前後編だ。
 旅客機の墜落事故に遭った少女みどりは、父母を失い、雪山で眼を覚ました時、かなり時間が経過していたが、どうなっているのかわからない。
 同じ生存者の坂口青年と山を下る。
 行けども行けども、人はおろか、鳥や獣、魚や虫の姿も無い。草木が生い茂るばかり。
 慣れぬ行程に。みどりは傷つき、遅れるばかり。一見親切な坂口もイライラを募らせる。
 無人の集落で過ごした後、急造した筏で川を下るが、生きるものの姿は無く、濃い緑が続くばかり。やがて筏は廃船と衝突、2人は投げ出されてしまう。
 しかし蔦に絡まり岸に打ちあげられていた。その前にお腹が空いた時、木の実があったり、怪我をした足が一晩経つと治っていた。
 陸路を進む2人の前に、やがてジャングルに呑み込まれたビル群が。事故から100年が経過した東京だった。
 残されていた新聞から、細菌兵器が漏洩し、人類を含む生物が死滅してしまったことが明らかに。
 坂口はショックで発狂、行方不明となる。
 1人残されたみどりは、自分の住まいへ向かう。緑に覆われていたが、墜落事故の前と同じ状態で残っていた家、何も希望が無くみどりは自殺する。だがその後……。
 救いのある結末。作品タイトルに秘密が隠されており、唸ってしまう。
 緑に包まれた東京は、CGで描かれた。機体に違わぬ映像化。昔は、ここまで作れなかっただろう。少年ドラマシリーズの匂いを感じたと言う声も。
 みどりは藤崎ゆみあ(新人のモデル出身)、坂口は大河ドラマ「べらぼう」で好演したばかりの宮沢氷魚、最後に出演する人物を仲村トオルが演じる。
 脚本・演出・VFXを手がけたキムラケイサクは、東映特撮のCGデザインを長く務め、昨年のシーズン2でも、「鉄人をひろったよ」を担当した。
 「みどりの守り神」は34年前にアニメ化され、YOUTUBEでも視聴可能。
 映画「復活の日」とあちこち重なる。
「みどりの守り神」マンガが描かれたのは1976年。「復活の日」映画は1980年で、小松左京の原作が書かれたのは1964年。藤子・F・不二雄は原作を読んだのか?
 他にも、藤子・F・不二雄ならではの、宇宙人と少年の心温まる交流「宇宙(そら)からのオトシダマ」、石をペット替わりに売る営業マンがタイムマシンと出会う「オヤジ・ロック」がある。
 続いて「マイロボット」「分岐点」は、ハッピーエンドと言い難いラスト。伝説の虫を巡るひと夏の体験「ユメカゲロウ」は夏の終わりに相応しい幻想的な物語。「異人アンドロ氏」は不思議な能力を持つ隣人に巻き込まれた、大人向けのドラえもん的な話。
「異人アンドロ氏」。本来は連作のエピソードであったが、本作発表の翌年、藤子・F・不二雄は逝去、絶筆となる。
 藤子・F・不二雄も石ノ森章太郎も手塚治虫も60歳で逝去。天命とは言えあと2、3年生きて、作品を遺してもらいたかった。
 基本的には原作に忠実だが、あちこち改変されている。
「みどりの守り神」では、みどりが自殺する前に、川で裸になり沐浴するが、NHKドラマでは、さすがにそれは……。
 第2シーズンの「じじぬき」は、死後の世界で、老人が妻を殴るシーンが原作であったが、泉谷しげると原田美枝子のドラマではカットされた。
 藤子・F・不二雄SF短編ドラマは沢山ある。ヌードやDVのシーンがあり、「これはちょっと」と思うものもあるが、「幸運児」「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」「ポストの中の明日」「倍速」など面白い話がまだまだある。
 来年シーズン4をやらないだろうか?
 前に言ったように星雲賞で「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」を取り上げた企画があってもと思う。
 そう言えば、浅田次郎原作の小説「母の待つ里」がNHKでドラマ化された。岩手の山里を舞台にした人情ものだが、これもSFと言えるのでは無いか?



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No.529(Web版179号)2

 かまこんアフターレポート

 by 渡辺ユリア

 8月30〜31日に東京都大田区蒲田の日本工学院専門学校でかまこんがひらかれました。JR蒲田駅西口から徒歩10分ほどで着けました。駅から会場までには “工学院通り” という通りがあって飲食店が多くありました。実は受付け場所まで遠回りしてました。その広い庭の地下4Fにディーラーズルームなどがあるアリーナでした。受付の後、エスカレーターを乗り継いで地下4Fへ。ディーラーズルームをまわったり、その後、ステージの上でやってるヒーローショーをみました。けっこう面白かった。
 次は午後2時からの “すごい科学で守ります” の分科会へ。長谷川裕一先生や笹本祐一先生たちのヒーロートークと今回はドラえもんの映画のアイディアを考えてみよう、という企画で面白かった。午後3時半からの “光瀬 龍顕彰没後四半世紀〜光を保つ光瀬 龍” の分科会に入っていくと16人の顕彰文を収録した小冊子を頂きました。そして目蒲線ゆかりの作家という観点から大橋博之先生が光瀬先生のジュブナイルの作品について語られました。 “暁はただ銀色” などでした。そして菊地秀行先生が “光瀬 龍先生はハードボイルド作家だ” という観点から語られました。それはどんな小説か?・・行動が先に行く 人間の心情は後回しが多い 組織から離れた主人公が自分の意思をつらぬいて行動する かかわる必要のない事件に遭遇した主人公のやりきれないわびしさ そしてかわいたミステリー
 31日は11時からの “寺薗淳也の宇宙開発あれこれ” へ。今回は宇宙開発の広報に関係するジャーナリストの方々をお招きしていろいろな話をききました。月面に着陸したSLIMの話もありました。興味がわきました。
そして午後2時からの茶風林朗読劇はアリーナのステージ上でひらかれました。麻宮先生のマンガ「スペオペ」を人気声優陣と日本工学院専門学校の学生さんも交えての生朗読、楽しかったです。スクリーンには「スペオペ」のマンガの1ページが大きく投影されていました。では、この辺で。
                        yullia 2025.9.17
P.S JR蒲田駅の電車のメロディーは、今でも蒲田行進曲です。懐かしかったです

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No.529(Web版179号)1

「スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」のことなど

 中嶋康年

7月17日にドラマ「スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」シーズン3が始まった。配信はAmazon Primeの中のParamount+を月額770円追加でサブスクライブすることで、視聴可能となる。本作は「スタートレック」シリーズ8作目のドラマであるが、「スタートレック:ディスカバリー」のスピン・オフである。ディスカバリーの臨時船長を務めたクリストファー・パイクがエンタープライズNCC-1701の初代船長として宇宙を駆け巡る。このパイク船長は「宇宙大作戦」のジェイムズ・T・カークの先代ということになる。
 サブタイトルの「ストレンジ・ニュー・ワールド」は「宇宙大作戦」の冒頭のナレーションの一部からとられている。

宇宙。
それは人類に残された最期の開拓地。
これは、宇宙船エンタープライズ号の物語だ。
その5年にわたるミッションで
彼らは驚きに満ちた新世界を探索し、
新たな生命体や新たな文明を求め、
勇猛果敢に進む。
誰も行ったことのない世界へ。

Space.
The final frontier.
These are the voyages of Starship Enterprise.
Its five-year mission:
to explore strange new world
to seek out new life and new civilizations
to boldly go where no one has gone before.

この「驚きに満ちた新世界」が「ストレンジ・ニュー・ワールド」である。

登場人物はパイク船長を始め、科学士官スポック、士官候補生として勤務を始めるウフーラ、「Xメン」でミスティークを演じたレベッカ・ローミンが副長のウーナ・チン・ライリーとして出演。私は記憶に残っていないが、「宇宙大作戦」で準レギュラーだった看護師(ナース)チャペルが登場。この人がなかなかに魅力的。初代ナース・チャペルを演じたメイジェル・バレットはロッテンベリーの妻だったんだそうだ。ジェイムズ・T・カークの兄、サムが異星人科学者として、そして、ジェイムズ自身も少し登場する。「宇宙大作戦」のスコットも若き日の姿で出てくる。

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No.528(Web版178号)4

金曜日の例会会場の変更について

 

毎週金曜日の21時前後くらいから行われている例会ですが、しまうま珈琲 幸店から移動しました
新会場は、浜松市曳馬郵便局隣の
k.r.t.design cafe/bar です。

https://maps.app.goo.gl/Ax4Gyg7u8ajF14ST7

住所は浜松市中央区曳馬5−6ー36 最寄駅は遠州鉄道曳馬駅 駐車場は店舗前に4台分 夜間は隣の曳馬郵便局の駐車場も使えます(6台くらい) 店舗前の道路の向かいに第二駐車場もあります(6台くらい)

いつもはお店の2階で例会が行われていますが、2階が混雑、もしくはイベント、ライブ等がある場合が時々あるので、その場合は1階で行なっています。
また年末年始や、全館貸切の特別イベント開催の場合もあるので、事前にインスタグラム
https://www.instagram.com/k.r.t.designcafe/
か、WEB版ペーパームーン
http://papermoontokai.cocolog-nifty.com/blog/
で、ご確認してください。

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No.528(Web版178号)3

 この本についてあれこれ

 by 渡辺 ユリア

 一億年のテレスコープ 春暮康一 早川書房(書影は印刷版paper moon参照)

 子どもの頃から星空に魅了されてきた鮎沢 望は、高校の天文部で天体観測に夢中になり、大学では電波天文学を専攻した。やがて望は太陽系規模の電波望遠鏡を実現するための、独自の超長基線電波干渉計ネットワークのアイディアを夢想するようになる。天文部時代からの友人の千塚 新、大学の研究仲間の八代 縁という夢を共有する仲間を得た望は、三人で計画の実現を検討し始めた。それは望、新、縁ら人類が銀河文明の繁栄に貢献する道へとつながっていく、小さな一歩であった。ファーストコンタクトSFの世界水準を軽やかに更新する、傑作宇宙探査SF・・と本の内側に書かれています。私は小学校2年くらいの時の望くんと父親の会話が気にいりました。では、この辺で。
                 yullia 2025.8.20

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No.528(Web版178号)2

 児童文学で面白かったSF作品

 中村達彦

 40年前、日航ジャンボ旅客機の墜落事故が起こる。520人が亡くなり、坂本九もいたのはショックでした。
 坂本九は世代的に人形劇「新八犬伝」で、2年にわたる黒子のナレーションが記憶で大きい。面白い語りで、「新八犬伝」人気の一因になった。
 同じく76〜78年、日曜家族スタジオ、こども面白館と言う番組では、「立体講談」をやり、こちらも好き。古今東西の名作物語が紙芝居で4〜8回位に分け、語られた。
 有名な物語ばかりではなく、横溝正史の「幽霊鉄仮面」とかオリジナル冒険SF「謎の惑星アラサターン」も取り上げられた。
「謎の惑星アラサターン」は宇宙冒険もの。原作は無く、制作スタッフが作ったオリジナルと思うが、坂本九の語りもあり注目した。
 1976年から78年に、TVドラマや児童文学のSF作品で、当時小学生〜中学生だった私がはまって、何度も観返した作品が複数あった。その作品を取り上げてみたい。
「消えた化けねこ帝国」 1976年刊行。
 団地が連なる場所に、3つの塾があり、勉強が苦手な子、女の子たち、ガリベンとそれぞれグループを形成している。
 ある時、女の子たちリーダーの愛犬が惨殺され、暗躍する猫の仕業と明らかに。
 猫は世界を乗っ取ろうとしていると。
 子供たちは、違うグループの垣根を越えて、団結、猫の陰謀に立ち向かう。
 主人公の少年、リーダー格や参謀格の友達、ヒロインで動物と会話ができる女子グループリーダー、秘密兵器開発で才能を発揮するが他の子を馬鹿にした言動が絶えない子。それぞれ個性が描かれる。
 猫は催眠術を使って、侵略を進めていた。
 中盤、主人公と衝突、飛び出したヒロインは行方不明に。子供たちは秘密兵器を使って地下にある猫の本拠を探し出す。
 塾の若い先生やヒロイン姉も関わっていき、猫を束ねる首領が明かされる。
 顛末は?首領の正体は?
 作者のしかたしんは、70年代から長く活躍、歴史ものや古典リニューアルなどでも著作があり、妖精戦士たちと言うSFもある。
 「竜のいる島」 1976年刊行。
 画家の息子の一郎太は、父のアトリエのある南の島に来ていた。島民の友達留吉と伝六と海に行った時、首長竜を目撃する。他にも怪獣を見たとの報が。だが一郎太が目撃したのはほんの一瞬で、他の友達は見なかった。
 その時、神社のご神体が首長竜頭部の化石らしいと、一郎太、留吉と伝六は神社に忍び込み、騒動を起こす。
 古代生物の化石を研究する一郎太の叔父は、首長竜が生きていると言う話は相手にしないが、ご神体では興味を持つ。
 イタリア人の研究家や島の新聞記者が絡み、首長竜捜索が進む。夜間の孤島岸壁でその姿を見かける。首長竜の血液も見つかり、核実験に巻き込まれたのかもと。
 一方、首長竜の首を除く全身の化石が発見され、一郎太の関心はそちらにも向く。
 現代に生きる首長竜と白亜紀に生きた首長竜の化石はクローズアップする。
 研究家はヨットを使って、海上で首長竜を確認しようと、荒海へ漕ぎ出す。
 同道する一郎太ら。対決の行方は?
 海の美しさや神秘、潜むものの不気味さが伝わってくる。
 一郎太の父や叔父は、子供の言うことを信じないばかりの頑迷な大人ではなく、子供の理解者でもあり、独自の信念を持つ。
 当時、ネス湖のネッシーをはじめクッシーやイッシー、ニュージーランドでの謎の死骸発見など相次ぎ、話を盛り上げた。
「竜のいる島」は、国際アンデルセン賞と産経児童出版文化賞を受賞。
 作者のたかしよいちは、児童向けの古生物で著作が多く、名前を聞いた人もいるのでは。動物児童文学の椋鳩十に師事している。
 「少年エスパー鬼無里へとぶ」1979年刊行
 少々、異色の作品。物語は1999年が舞台で、地球の周りに複数の宇宙植民地島が完成し、宇宙探検が行われている。
 東京中学校の生徒会長を務める雅也は、春休みに突如、中学校校舎が消失、長野県山奥の鬼無里村に転送する怪異に出くわす。
 世界各地で同じことが起きていた。
 また雅也や周囲の同級生たちは、テレポテーションなど超能力を身につけていた。
 校舎が無くなったが、雅也は町の店や住人と提携して、中学校を存続させるアイデアを提案。容れられ、新しい中学校がスタート。
 幾つかの邪魔があるが、助けてくれる謎の老人や、宇宙科学庁長官、不良風貌の同級生など謎の人物が見え隠れする。
 冤罪が続き、危うくなった時、雅也や仲間たちは真相を知った。
 謎の老人は良心的な宇宙人で、ある組織が暗躍し、大規模なテロを目論んでいると言う。
 雅也らは超能力を高め、組織と対決しなくては。不良風貌の同級生は、超能力を鍛えるリーダーで、実は可憐な美少女であった。
 彼女の特訓で、超能力が強化された雅也たちは、鬼無里で、組織と決戦をすることに。絶対に人を殺してはいけない。
 夏休み、特別修学旅行で鬼無里に赴いた生徒たちを、組織に先導された機動隊が襲う。
 決戦の行方は? 組織の正体は?
 一部設定が飛躍しすぎだが、いろいろアイデアが盛り込まれ、飽きさせない。
 作者の堀切徳太郎は他に「笛吹きピエロの秘密」があるが、それっきり。残念だ。
 こう言う現実から非現実へ入っていく話で、私はSFに引き込まれた。続く話は来年のルーナティック33号で。

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No.528(Web版178号)1

「ファンタスティック4」のことなど【ネタバレあり】

 中嶋康年

7月25日に映画「ファンタスティック4 ファーストステップ」が公開された。今まで「ファンタスティック4」の映画は3回制作されている(未公開を含めれば4回らしい)が、20世紀フォックスとしての映画で、ディズニーの20世紀フォックス買収により、「Xメン」と同様、これで正式にMCUに組み込まれることになった。MCU初登場は「デッドプール&ウルヴァリン」(2024)にヒューマントーチが少し出ているから、そちらの方が先だが。
 MCUでは「アイアンマン」(2008)から始まる「アベンジャーズ」結成までをフェーズ1、インフィニティ・ストーンとの関係が始まるフェーズ2、そのインフィニティ・ストーンを操るサノスとの戦いを描くフェーズ3。ここまでを「インフィニティ・サーガ」とし、マルチバースへの道を開いた「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」で「マルチバース・サーガ」を開幕するフェーズ4が始まり、2023年の「アントマン&ワスプ:クアントマニア」からフェーズ5に入ったとされる。当初の計画ではここで登場した「在り続けるもの・征服者カーン」がメイン・ヴィランとなって「アベンジャーズ:カーン・ダイナスティ」となるはずだったが、俳優のジョナサン・メジャーズが暴行事件を起こして逮捕されたことで、大きく舵を切ることになったが、結果的にこれでよかったと私は思う。カーンは非常にわかりにくいキャラクターだったのだ。そして、この「マルチバース・サーガ」の終結フェーズとして仕切り直しとなったフェーズ6の第1作が「ファンタスティック4:ファーストステップ」である。このフェーズ6は「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」(2026年7月)「アベンジャーズ:ドゥームズデイ」(2026年12月)「アベンジャーズ:シークレットウォーズ」(2027年12月)と続く予定になっているので、次回作まで1年4か月は待たなくてはならない。
 話はシルバーサーファーが先導する“惑星の捕食者”ギャラクタスとの戦いである。これは2007年「ファンタスティック4:銀河の危機」とほぼ同じ。違うのは演じる俳優。シルバーサーファーが女性形であること。リードとスーの息子フランクリンの登場。ギャラクタスの本体の登場。舞台設定が1960年代風のレトロフーチャー世界(今のアベンジャーズがいるアース616とは別のアース828というマルチバースの一つ。後の展開でアース616と合流するという噂がある)。「ファーストステップ」を見た後に「銀河の危機」をDisney+で観たが、見方によってはこっちの方が面白かったかもしれない。スーザンを「ダークエンジェル」のジェシカ・アルバ、ヒューマントーチを、のちに「キャプテン・アメリカ」となるクリス・エヴァンス、ザ・シングはドラマ「シールド」のマイケル・チクリスが演じていた。

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No.527(Web版177号)4

 この本についてあれこれ

 by渡辺 ユリア

アーサー・C・クラーク  宇宙島へ行く少年   山高 昭訳

書影は印刷版paper moon527号 参照

 そもそもこの本との出会いは去年の日本SF大会やねこんRのディーラーズルームの時でした。うず高く積まれた本の中の一冊。何冊でもいいですよ、という声で2冊受け取りました。カバー絵が素敵。鶴田一郎さん画。ストーリーは航空会社主催の航空クイズ番組に優勝したものは、世界中どこでもただで旅行させてもらえる、という事で、優勝した16才の少年ロイの話。彼の行きたい場所は地上500マイルに浮かぶ島、宇宙ステーション。大宇宙にあこがれる少年の夢と冒険を巨匠クラークが生き生きと描き出した宇宙SF。時代はどうやら21世紀の後半のようである。宇宙ステーションに入った少年はドイル司令というそこでの訓練の責任者と、ロイより少し年上の10人の訓練生と出会う事になる。
 では、この辺で          2025.7.22   yullia

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No.527(Web版177号)3

 日本の平和はずっと続くか?

 中村達彦

 太平洋戦争終戦から80年になる。以来、日本は、長いこと戦争にならずに続いてきたものだ。今回あまりSFの話をせずに語る。
 前にPMで語ったことについて、また触れているがご了承いただきたい。
 朝ドラ「あんぱん」でも、6月、戦争中のドラマが描かれた。
 1960年代から朝ドラは続いてきたが、大半で舞台は昭和初期に、劇中では、戦争で生活が次第に厳しくなり、やがて東京をはじめ日本各地に容赦ない空襲が加えられ、主人公の家族や親しい人が戦死する。悲惨な戦争の様子が強調される展開がお決まり。
 朝ドラ以外でも、こう言うドラマや映画が昔は多かった。
 太平洋戦争で命を落とした人は310万人以上(戦死者の6割は戦って亡くなった訳ではなく病死とか餓死とか)。明治時代から得ていた植民地のほとんどを失い、空襲などで多くの文化遺産が灰塵となるなど、空前の大敗北になった。
 ちょうど40年前の日露戦争で、日本は近代国家への改革が終わっていないのに、大国のロシアと戦った。自彼の国力を見定め、苦い勝利だったが早く戦争を終わらせた。この時、奇跡の勝利と世界から注目された。
 しかし欧米列強の侵略から守る立場が、いつも間にか欧米同様、大陸へ侵略の手を伸ばし、中国のみならずアメリカ、イギリス複数の大国と戦争に、空前の大敗北へ。
 だが大復興を遂げ、経済大国に躍進する。
 NHKで、8月16・17日に「シミュレーション〜昭和16年夏の敗戦〜」と言うドラマが放送。昔、PM原稿で取り上げた総力戦研究所を扱っている。
 太平洋戦争の少し前、民間や軍のエキスパートが集められ、模擬内閣が作られた。実際の国力のデーターを提示、このまま日本が政策を続ければ、アメリカやイギリスとの戦争は避けられず、そうなったらどうなるかを予想するシミュレーションが行われた。
 その結果、戦争は不可能、日本必敗の結果が出て、近衛文麿、東條英機にもこの研究は報告された(原爆開発はSFのことで、予想できなかったと)。
 しかし日本は、アメリカとの戦争を選択し、シミュレーションと同じ経緯を進む夢。
 アメリカと戦争となれば、破滅すると知らされても、政府首脳は戦争を選択したのだ。
 もっとも、戦争を選択しなくても、当時の軍部独裁の状態だと、軍人たちがクーデターを興して、戦争に踏み切る(戦争を選択したのもクーデターを回避するためか?)。或いは10年、20年後に再びアメリカと対立が深まり、その時、戦争に突入して、原爆より強力な核兵器を何発も受け、史実より悲惨なことになったかも。
 戦争の責任一端は、軍部のみならず国民にもある。
 満州事変で、日本本土を凌ぐ広大な土地を得た日本人は優遇措置を与えられ大規模な移民を。日中戦争では、緒戦で、景気が良くなり、太平洋戦争開戦も、日本に経済制裁を課してきたアメリカ、イギリスを打破する戦争と考え、支持してきた(戦争を間違っていると唱える声も少数あったが)。
 日本で貧しい労働者や百姓が生活苦から軍隊へ志願したことも注目。軍隊は厳しい訓練や暴力制裁が日常茶飯事であったが、衣食住が保証され、努力次第では出世し注目されるので、軍の立場強化や戦争を望んでいた。
 当時、「のらくろ」「冒険ダン吉」などの大ヒットマンガで軍隊や日本の対外政策が賛美され、読者は信じ込まされた。また昭和前期に、日本がアメリカと戦争になる未来戦の小説が幾つか発表されたが、太平洋戦争の経緯を正しく言い当てたものは無かった。
 最近故人となった有名な政治家が、日本が欧米の侵略に立ち向かった結果、アジアの国々は独立を果たしたと言っていたが(その政治家が現在も生きていたら、トランプにNOと言えただろうか?)、疑問を呈する。
 東京をはじめ日本各地への空襲、広島・長崎への原爆投下、沖縄戦など惨禍を蒙ったが、その前に中国やアジア各国で日本が残虐行為を行なったのも事実である(日本の行動を戒め、良識的行動を行った軍人もいるが)。
 現在、戦争の悲惨さを知っているが、ミリタリー造詣に興味を持ち、戦争のマンガ・アニメ・ゲームが大好きと言う矛盾した人が多いのも事実。
 そして、第2次世界大戦で600万人のユダヤ人が虐殺されたが、ユダヤ人の国イスラエルはガザで戦争を繰り返し、多くの民間人が殺されている。
 ウクライナの戦争は、3年を過ぎたが終わらない。朝鮮は日本の植民地で塗炭の苦しみを味わったが、戦後2つに分かれ、ウクライナの戦争では北朝鮮がロシアに味方し、兵士や武器を送り込んだ。一方の韓国は、ベトナム戦争でアメリカに味方し、軍隊を送り込み、虐殺を行ったことが明かされた。
 アメリカは本気で戦争を止めさせようとしないし、ロシアもイスラエルも、アメリカの言うことを聞かない。イランとイスラエル、インドとパキスタン、タイとカンボジアでも衝突が勃発した。
 現在世界中には核兵器がごまんとあり、人類を何度も死滅させられるとのこと。
 核戦争は絶対に行ってはいけないし、日本が戦争になってもいけない。
 しかし、日本が戦争をしないと言っても、外国が戦争を望んで仕掛けられたら、それでも戦っては駄目なのだろうか?
 いじめも戦争も根絶しなければと盛んに言われているが、絶対に無くならない。
 それでも平和を願うのだ。

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No.527(Web版177号)2

「スーパーマン」のことなど【ネタバレあり】

 中嶋康年

7月11日に映画「スーパーマン」が公開された。
2013年「マン・オブ・スティール」から始まって2023年「アクアマン」の2作目「失われた王国」まで主にジャック・スナイダー監督によって牽引されてきたDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)を終了させて、親会社のワーナー・ブラザーズの会社再編を機に、今までマーベルで「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」などを監督したジェイムズ・ガンをCEOに抜擢。今まで作られてきた作品群を全てチャラにして、新たに「DCU」(DCユニバース)を開始するとぶち上げた。
 その第1作目がこの「スーパーマン」なのである。DCEUのダークで重厚な作品と比べて、新生DCUは明るい雰囲気に回帰するとしているが、実際見てみるとそうばかりではないようだ。明るい色調のコスチューム、スーパードッグ・クリプトの登場、1978年の「スーパーマン」のジョン・ウィリアムスのテーマ音楽のアレンジなどそこここにその片鱗は見られるのだが、「危機に瀕している人たちを見捨ててはおけない」というスーパーマンの行動はそっくりそのまま現在のイスラエルとガザ地区の紛争、ロシアとウクライナの紛争を思い起こさずにはいられない。そして、スーパーマンは異星人であるとの理由で排斥運動が起こる、レックス・ルーサーが無数の猿(!)を操ってSNSにスーパーマンの悪評を書かせるなど、現代の世相と深くリンクしている。こういうところが、監督としてのジェームズ・ガンの矜持として評判を得ているところの一つであるだろう。
 今回の「スーパーマン」の一つの特徴として「ジェスティス・ギャング」の登場がある。グリーンランタン(GL)、ホークガール、ミスター・テリフィックの3人のグループである。GLは全宇宙規模の組織グリーンランタン・コアに任命された地球人。2011年に映画化されたが、こちらのGLはアメリカ空軍パイロットのハル・ジョーダンで「スーパーマン」のGLは3代目のガイ・ガードナーが受け継いでいるが、性格が相当にひねくれている。ホークガールは映画「ブラックアダム」に出てきたホークマンの妻という設定。ミスター・テリフィックは天才科学者で映画では初登場。チーム名の「ジャスティス・ギャング」はガイ・ガードナーが勝手につけたもので、作中、ホークガールは散々文句を言っているが、コスチュームの胸についているマークはもう見ても「JG」の文字をデザインしたものだよなあ。スーパーガールはどこに出てくるのかと思ったら最期にちょこっと登場。これじゃ次回映画のプロモーションだね。

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