No.474(Web版124号)5

 「見えない生物バイトン」について あれこれ

 by 渡辺ユリア

昔々の本をみつけて、最近読みかえしました。私が中学生の頃に父に買ってもらった本“講談社のSF世界の科学名作”(あの青い本たちです。うら表紙が青いので)。本のタイトルは、エリック・フランク・ラッセル作、矢野徹訳「見えない生物バイトン」です。ジャンルは、おそらく侵略系。目にみえない生物が地球人をおそう話。科学者たちが次々と謎の死をとげるのをふしんに思った記者が謎を解明していくうちにとある生物がいることを発見するのです。その生物バイトンとは…科学者たちはある薬品の作用でバイトンが見えるようになるのですが…姿は約1mの青い光の球。球…ということで私は色彩と大きさは異なるのですが、まるでコロナウィルスのようだ…と思いました。
では、このへんで                  2021.2.18 yullia

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No.474(Web版124号)4

 冬と修羅(その二)

 中井 良景

 友が死んだ。大学時代に所属していた漫画同好会の二年先輩、Mさんだ。
 大昔の話だが、私は大学入学後、ひと月くらいして漫画同好会に入会した。それまでにもかなりのジャンルのまんがを読み、自分でも描いていたから、まんがに一家言持っていた。高校までまんがについて語り合える友は僅かで、大学の同好会に入れば話が出来ると大きな期待を抱いていた。
 漫画同好会では、青焼コピー版ではあるが機関誌を定期的に発行し、さらに会内サークルが数種類のミニコミ誌まで発行していた。これで私が描く作品の発表舞台は確保出来たと嬉しかった。ただ、まんがについてのお喋りは完全に期待を裏切られた。先輩たちはまんがの話など一切しなかった。もっと言えば、当時かなりの発行部数を誇っていた少年マガジンやマーガレット、セブンティーン、ビッグコミックなどは全くと言っていいほど読んでいなかった。唯一読んでいたのは“まんがエリートのための”と題された虫プロ商事発行の「COM」であり、青林堂発行の「ガロ」であった。この二誌を逆に私は読んでいなかった。会話が成り立たなかった。
 漫画同好会では、喫茶店で珈琲を飲みながら会話するのが常だった。先輩に連れられて、毎日のように喫茶店に通った。それまで真面目な生活を送ってきた(それが普通だと思っていた)私には、先輩たちの軟派な雰囲気が心地良く、彼らの後をついて回るようになった。
 会には学年による上下関係は一切なかった。先輩には“〇〇さん”とさん付けするが、それだけだった。彼らの話題は映画であり、麻雀であり、パチンコであり、珈琲であり、女の子だった。それと小難しい古今東西の文学や評論も彼らのテリトリーにあった。彼らの作品はそれをベースに描かれていた。先輩たちの話は、高尚で、少しだけ難しく、聞いているだけで楽しかった。そんなところに大学生になった幸せを見出した。
 漫画同好会は、会員が描いた作品を持ち寄って機関誌を発行するのが主な活動だった。それぞれの作品はとても個性豊かだった。ひとりとして似たような作品を描く会員はいなかった。そんな中で、Mさんの描くまんがは、私が今まで読んだことのないジャンルに属するものだった。可愛い絵とその詩的な内容で、会内外に女性ファンも大勢いた。
 漫画同好会には学外のたまり場が何か所かあった。いずれも先輩の誰かの下宿だった。その中のひとつが大学から歩いて一◯分くらいの所にあって、仲間の一番のたまり場になっていた。その部屋の主は外出していることが多く、皆でお邪魔して、勝手に珈琲を飲み、ギターを弾き、歌を歌って、夜遅くまで話をした。興が乗ると話は深夜にまでおよび、帰ることなど忘れてみんなで雑魚寝した。繰り返すが、まんがの話は全くしなかった。それが私にはかっこよく見えた。
 会員の多くは下宿生だったが、Mさんは自宅から通っていた。そして大学から近いそのたまり場にかなり頻繁に出入りしていた。狭く、汚くもあったが、そこは会員たちのサロンだった。トキワ荘に見立てた仲間もいた。私もしょっちゅう出入りした。幸か不幸か、Mさんは一年留年した。それで交流が途切れることはなかった。卒業して職に就いてからもサロンにやってきて、我々後輩と遊んでくれた。私は四年に亘って彼と話をし、彼から大きな影響を受けた。今だから言えるが、彼の作品に一種の憧れを抱いていた。まんがの作風は全く異なっていたが、だからこそ憧れていたのかも知れない。私は卒業後、彼の全集を企画し、三巻にまとめて発行した。本当は四巻目も考えていたのだが、原稿が出来上がらず見送った。
 そのMさんが亡くなった。病気だったようだ。年賀状のやり取りをしていて今年も受け取ったが、長いこと電話はしていなかった。今はそれが悔やまれる。

 二◯二一年二月

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No.474(Web版124号)3

 金融な人々(社長の決断)

 中井 良景

 会社というのは、ひとりでは出来ないことを多くの人や資金を集めて可能にする組織である。株式会社が主流だが、会社(法人)を設立せずに活動している個人企業はもっと多い。
 わが国には企業が約四一◯万あり、そのうち法人(会社)が約一七◯万、個人企業が約二四◯万だそうだ。全企業のうち中小企業が九九. 七パーセントを占めている。四一◯万のうち、毎年一万から一万五千の企業が倒産するという。
 私は長い間地域金融機関に勤めていた。取引先は中小企業と個人だったから、少しは実態を見てきたという思いはある。私が働いていたこの地域には製造業が多く、特に自動車部品の製造下請けがかなりあった。もちろん自動車関係ばかりではない。建設業も不動産業も金属加工業も繊維産業もあった。ただ、自動車関係の会社のシェアは大きく、その動向は地域にかなりの影響があった。自動車の販売台数は国内景気だけでなく、世界経済の動向や若者の車離れ傾向の影響も受けて、一時に比べて落ち込みが大きくなっていた。今後はEVが主流になるから、さらに当地区の自動車部品製造下請けは厳しくなって、廃業や倒産が増えるだろう。
 組織は設立するよりも解散が難しいとよく言われる。企業も同じだ。業績が良い時ならば解散も容易だろうが、そんな時は解散する理由もなく、社長(企業代表)も幹部社員(従業員)も解散しようなどとは考えない。業績が振るわなくなり、赤字が累積してくると初めて企業の終焉を意識し始める。ただ、社長は従業員やその家族を路頭に迷わせるわけには行かないと考え、その気持ちが解散の遅れを助長する。そして、余裕ある解散が出来なくなる。
 たとえ余裕がなくとも、資産と負債のバランスがとれていればまだいい。問題は負債過多の場合だ。そんな時は、おそらく銀行からの借入金の返済も滞っている。そんなにきつくはないが、銀行からの返済要請は日増しに強くなり、ある日、社長は視野狭窄に陥った中で、誤った判断を下す。従業員の給与と取引先からの買掛金を支払い、銀行への返済を行うためには保険金を受け取るしかない、と。保険金とは死亡保険金である。中小企業の社長は万一の場合に備えて、多額の保険金を受け取れる保険に入っている。自らの判断で保険に入るケースもあるが、銀行サイドが融資時に保険加入をセットしているものもある。有名なものは個人の住宅ローンだ。借主が死亡したり重度障害に陥ったりした時、保険金で債務を返済出来る仕組みになっている。そんな保険付きの融資を社長は知っているから、周囲に迷惑を掛けないようにと、普段ならば考えないようなことを決断する。
 私が直接経験したわけではないが、先輩からそんな話を聞いたことがある。借金を返せなくなったある企業の社長が自殺したのだ。生命保険は普通、自殺の場合保険金が支払われない。が、中には契約後一定期間が経過すれば、自殺であっても保険金が支払われるものもある。社長はそれを分かったうえで決断したのだ。
 その先輩はその頃、その会社のメインバンクの支店の支店長だった。支店長は次長とともに亡くなった社長のお通夜に出向いた。焼香を終えて社長の奥様と向かい合った時、その奥様から支店長は大勢の前で怒鳴られた。詳しい内容は知らないが、あんたたちが融資したからあの人は死ぬことになった、というものだ。確かにうわべはそうだ。奥様だって事情は分かったうえで、それでも何かを言わずにはいられず怒鳴ったのかも知れない。支店長と次長は何も言えず、ただ頭を下げ続けることしか出来なかったそうだ。仕方ないだろう。葬儀にも参列し、その後何度か会社を訪問したが、その奥様は全く口を利いてくれなかったという。支店長はかなり落ち込み(ノイローゼになったかどうかは不明だが)、その後暫くして本部に異動になった。何も珍しいことではない。銀行ではよく聞く話だ。

 二◯二一年一月

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No.474(Web版124号)2

テレビドラマ(今クールの鑑賞作)

 中井 良景

 今月になって新しい連続TVドラマとアニメが始まったので録画し、鑑賞している。下記がそうで、前月以前に放映開始したものや、過去に放映されて今回再放送が始まったものも一部混ざっている。ただ、前月以前に放映終了したものや、一、二回限りのドラマは除いてある。
 まだあるかも知れないが全てはフォロー出来ていない。頭に「×」を付けてあるのは、初回(または二回目、三回目まで)を観てつまらないので以後観るのをやめたものである。回を重ねて観るとまだ増えそうだ。
アイドールズ!  ×アイ☆チュウ  IDOLY PRIDE  青のSP 学校内警察
熱海の捜査官  ×新あたしンち  ×あなた犯人じゃありません  甘々と稲妻
×WIXOSS DIVA(A)LIVE  ウチの娘は、彼氏が出来ない!!  
ウマ娘プリティーダービーSeason2  ×裏世界ピクニック  ×EX-ARM
×SK∞  ×江戸モアゼル 令和で恋、いたしんす。  オー!マイ・ボス!恋は別冊で
×オルタンシアサーガ  俺だけ入れる隠しダンジョン  ×俺の家の話  ×怪病医ラムネ
回復術士のやり直し  怪物事変
書けないッ!?〜脚本家吉丸圭佑の筋書きのない生活〜  からくりサーカス
GARO炎の刻印  監察医朝顔(第2シリーズ)  カンパニー 逆転のスワン
機動戦士ガンダム 第08MS小隊  君と世界が終わる前に  ×グッド・ファイト2
×蜘蛛ですが、なにか?  ×黒執事  刑事ゼロ
京阪沿線物語 古民家民泊きずな屋へようこそ  汚れた舌  ×ゲキドル
刻刻  五等分の花嫁∬  3Bの恋人  ここは今から倫理です。
シルバニアファミリー ミニストーリー ピオニー  ×スケートリーディング☆スターズ
×装甲娘戦記  ×ソード・アート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル オンライン
その女、ジルバ  たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語
×旅がらす事件帖  ×D4DJ First Mix  ×でっけぇ風呂場で待ってます
天国と地獄 サイコな2人  転生したらスライムだった件(第2期)  ×天地創造デザイン部
Dr.倫太郎  ×ドリームチーム  ナイルパーチの女子会  にじいろカルテ
×のんのんびより のんすとっぷ  ×七つの大罪 憤怒の審判
2.43 清陰高校男子バレー部  働かざる者たち  はたらく細胞!!
はたらく細胞BLACK  ×バック・アロウ  ×BEASTARS2
×ヴィエナ・ブラッド  ブラッディ・マンデイ2  プレイタの傷
×ふろがーる!  ×文豪ストレイドッグス わん!  ホリミヤ
×まじっく快斗1412  ×魔道祖師 前塵編  無職転生 異世界行ったら本気だす
明治開化新十郎探偵帖  メンズ校  モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜
約束のネバーランド(Season2)  ×弱キャラ友埼くん  ×LOVE STAGE!!
Re:ゼロから始める異世界生活 2nd Season  ×レッドアイズ 監視捜査班
Levius レビウス  ×ワールドウィッチーズ発進しますっ!
×ワールドトリガー  ワンダーエッグ・プライオリティ

二◯二一年一月

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No.474(Web版124号)1

 テレビドラマ(前クールの面白作)

 中井 良景

 前三か月間に次の連続テレビドラマを観ていた。ただ、最終回まで観終わって面白かったと思えるものは、頭に「☆」を付したものだけだ。期待はずれだったものには「×」を付けた。
☆赤ひげ3  ×アクダマドライブ  暴れん坊ママ  ☆アンという名の少女   
池袋ウエストゲートパーク(アニメ版)  一億円のさようなら
いわかける!Sport Climbing Girls  ウマ娘プリティーダービー
☆エール  江戸前の旬  閻魔堂沙羅の推理奇譚  おカネの切れ目が恋のはじまり
かえるのピクルス きもちのいろ  ×彼女が成仏できない理由  ☆神達に拾われた男
☆牙狼MAKAISENKI  記憶捜査 新宿東署事件ファイル  危険なビーナス
きょうの猫村さん  恐怖新聞  ×キワドい2人-K2-  くまクマ熊ベアー
☆GREAT PRETENDER  ×鞍馬天狗(野村萬斎版)  刑事七人(シーズン6)
警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜  刑事のまなざし  ×極主夫道
子連れ信兵衛  五等分の花嫁  ☆さくらの親子丼(第3シーズン)
35歳の少女  七人の秘書  ☆6 from HIGH&LOW THE WORST
執事西園寺の名推理2  シドニアの騎士 第九惑星戦役  ×小河ドラマ 龍馬がくる
ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース  ×SUITS2  S.W.A.T.
×すぐ死ぬんだから  先生を消す方程式。  ×蒼穹のファフナー EXODUS
×そして、ユリコは一人になった  ×DIVERー特殊潜入班ー
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのだろうかIII  つくもがみ貸します
天使にリクエストを〜人生最後の願い〜  ×テンペスト  洞窟おじさん  ×都市伝説の女
☆トニカクカワイイ  ×姉ちゃんの恋人  のだめカンタービレ  ×バベル九朔
ひまわりっ 宮崎レジェンド  ×Find Me in Paris パリでタイムトラベル
FAKEMOTION 卓球の王将  ☆ブラザー☆ビート  ブラッディ・マンデイ
禍つヴァールハイト ZUERST  ☆魔女の旅々 THE JOURNEY OF ELAINA
マリーミー!  南くんの恋人(高橋由美子版)  ☆未来少年コナン
メイちゃんの執事  約束のネバーランド  妖怪シェアハウス  ☆ラッキーセブン
ルパンの娘(第2シーズン)  連続殺人鬼カエル男  レンタルなんもしない人
One Room サードシーズン

二◯二一年一月

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No.473(Web版123号)3

 会津磐梯山はすごい山だ

 by 渡辺ユリア

 磐梯山は表側のなだらかな斜面と異なって裏側は、切り立った崖がけわしく見える。丁度裏磐梯レイク・リゾートの前庭からよく見えます。山体崩壊した場所が痛々しくみえますね。その崩壊した岩が川をせきとめた結果、数多くの湖は沼が出現したわけです。五色沼などは美しいです。青い色彩でも沼ごとに異なった色です。
 そして磐梯山の周辺には熱塩温泉があって(そのあたりは昔々海だったそうです。凝灰岩が地表に出ているばしょがあるそうです)そして温泉の湯をあたためて、蒸発させて塩をつくるのです。江戸時代には、その塩を売って会津藩は藩の収入にしていたそうです。
(株)KADOKAWA発行 ブラタモリ8巻より
                  yullia 2021.1.14

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No.473(Web版123号)2

 55年目のウルトラマン

 中村達彦

 昨年2020年は、新型コロナに苦しめられた1年で、他にアメリカ大統領選挙や香港民主化の問題があり、騒動は現在も続いている。また多くの方が亡くなった。ご冥福を祈りたい。11月23日にSF作家で小林泰三が亡くなった。58歳。
 1995年に「玩具修理者」でデビュー、以後創作活動を続け、SF以外に「アリス殺し」など推理小説や「脳髄工場」などホラー小説も多数発表した。短編から長編まで幅広く、残酷で猟奇的描写や記憶を巡る作品を書いた。1998年「海を見る人」、2004年「AΩ超空想科学怪奇譚」、2010年「天体の観測について」、2012年「天獄と地国」などの作品があり、2度星雲賞を受賞している。
 まだまだ活躍してもらいたかったが。
 亡くなる前に「ウルトラマンF」と言う作品を発表していた。2015年にSFマガジン誌上で連載され、翌年単行本化され、2018年には文庫化、また2017年に星雲賞を受賞した。
 物語は、「ウルトラマン」の世界観で語られ、ゼットンとの戦いが終わってから、科学特捜隊を中心にすすむ。
 世界各国は、怪獣の残骸から各々兵器の開発にしのぎを削った。科特隊は、未知の技術メテオールを用いて、ウルトラマンをベースにした強化服ウルトラアーマーの開発を進め、かつてウルトラマンだった科特隊員早田進は人体実験に従事させられていた。
 実験に異議を唱える科特隊の富士明子は、かつてメフィラス星人に仕掛けられたナノシステムの仕組みが作動、巨大化してしまう。また外国の天才学者インペイシャントが行う巨人兵士計画研究からの圧力、次々に世界を超えて来襲する侵略者と凶事が相次ぐ。
 物語の主人公科特隊の井出光弘は苦渋の決断で、ウルトラアーマーを武装強化し、巨大化した富士隊員に装備することに。
 ウルトラマンFの誕生である。
 人類の生み出した科学技術がきっかけで生まれた侵略者が街を襲い、科特隊やウルトラマンFは立ち向かう。ウルトラマンに似た敵、通常世界を超えた敵との戦い。
 最後、ハイパーゼットンとの対決。戦いが終わってから、井出に送られるウルトラマンからのメッセージとは?
 イラストは円谷プロの後藤正行が担当。
 読んでみて、残酷的な描写があり、それは「ウルトラマン」の世界観とそぐわない。
 しかし、後に作られる「ウルトラマンネクサス」や「ウルトラマンメビウス」の敵や登場人物も絡んでくる。キャスト的にもニヤリとさせられる設定もあり、ウルトラシリーズへの深い想いを感じてしまう。
 最後まで面白く読ませてもらった。
 小林泰三は、円谷プロとSFマガジンが2015年にコラボしたが、そこでも「ウルトラマンギンガS」の外伝「マウンテンピーナッツ」と言う小説を書いている。その時、他にも複数の作家がウルトラシリーズを舞台にした作品を発表し、「多々良島ふたたびウルトラ怪獣アンソロジー」で書籍化された。
 ちなみにウルトラシリーズの第1作「ウルトラQ」もSF作家クラブが企画に協力し、ストーリーを提供したりしている。
 承知の通り「ウルトラQ」と続く「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」は高視聴率の大ヒットとなったが、昨年亡くなったマンガ家の桑田二郎や一峰大二は、放送当時、雑誌でウルトラシリーズのマンガを描き、両氏の代表作の1つになった。まだビデオソフトが普及する前で、読んだ人もいるだろう。
 TVの作品をベースにしているが、ストーリーや怪獣のデザインで独自のアイデアを入れることもあった。
 昨年の初めに、脚本家の上原正三も亡くなった。上原は「ウルトラQ」以来、ウルトラシリーズの脚本を多数書き、他にも東映などの多くの特撮・アニメ作品を手がけた。傑作と言われる脚本が多くあるが、没になった話も少なくない。
 その中には「ウルトラセブン」のエピソードで、「宇宙人15+怪獣35」がある。視聴率もブームも下降気味な時、盛り返しを目指した。「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」の宇宙人・怪獣が大挙して攻撃、ウルトラセブンやウルトラ警備隊が迎え撃つ。監督は実相寺昭雄を予定していたが、没になった。
 映像化されていれば注目のエピソードになったであろう。
 40年後の2007年、一峰大二に「宇宙人15+怪獣35」はマンガ化された。一部絵柄、設定が合っていないところもあるが、昔の一峰のマンガを思い出してしまう。
 円谷プロは一時経営が困難になったものの、持ち直し、近年は「ULTRAMAN」「SSSS.GRIDMAN」と話題作のアニメを発表し、特撮のウルトラシリーズも新作が続いている。現在は半年間の放送だが、2013年から連続している。もっとも「ウルトラマン」と比べ、デザインが用途に応じて次々に変わるなど設定やストーリーフォーマットが昔とは異なるが。
 去年放送された「ウルトラマンZ」も話題作となった。
 ウルトラQやウルトラマンの怪獣が登場する世界で、Zと言うウルトラマンが活躍する話だが、防衛隊は、セブンガー、ウインダムなどのロボット怪獣を操縦して戦っている。劇中いろいろアイデアで工夫しているので、一度観ていただきたい。
 スタッフで脚本・構成で貢献した吹原幸太と言う方がいたが、「ウルトラマンZ」放送開始前に逝去した。
 このように昨年はウルトラマン関係のクリエイターが次々に亡くなったが、今年はウルトラマン誕生から55年。
 初夏には、庵野秀明企画脚本、樋口真嗣監督の映画「シン・ウルトラマン」が公開されると言う。
 ウルトラマンの物語は続いていく。

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No.473(Web版123号)1

 My BESTS 2020

 中嶋 康年

1「シオンズ・フィクション」イスラエルSF傑作選 竹書房
去年辺りから「竹書房」のSF部門が立て続けに注目作を出している。その中の一つで、これはあたりでした。「アレキサンドリアを焼く」「完璧な娘」「シュテルン=ゲルラッハのネズミ」が中でも感銘深い。「ギリシャSF傑作選」も企画されているというので、楽しみである。

2「日本SFの臨界点」伴名練 編
去年「なめらかな世界とその敵」がヒットした伴名練が編んだ日本作家短編集。[怪奇編]と[恋愛編]の2冊に分かれている。あまり知られていない作家のいい作品、名の知られている作家の隠れた名品など、よく集めたものだと思う。PM11月号の表紙に使わせてもらった。

3「マーダーボット・ダイアリー」マーサ・ウェルズ
保険会社の人型警備ユニットが自らを縛る統制モジュールをハッキングして自由になりながら、そのことを隠して契約者の保安業務をこなしていく物語。いわゆる、「意識あるロボット」のひとり語りで、1人称が原語では単に“I”なのだが、それを「私」ではなく「弊機」と訳している訳者が素晴らしい。

4「ドラキュラ伯爵」NETFLIX
ブラム・ストーカーの原作「吸血鬼ドラキュラ」の登場人物を使いながら今までにない展開のミニシリーズ。意外な展開の連続で、「そう来るかー」とのけぞる。ただし、原作を知らないとどこが面白いのかわからない可能性ありです。

5「メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち」シオドラ・ゴス
「ジキル博士とハイド氏」のジキルの娘とハイドの娘、「モロー博士の島」のモローの娘、フランケンシュタイン博士の娘、「ラパチーニの娘」の呼気に毒が含まれるベアトリーチェという娘の5人がシャーロック・ホームズと「錬金術師協会」の謎を追う。他にも名作と呼ばれる小説の登場人物が多数登場する。キム・ニューマン「ドラキュラ紀元」の趣向です。

6「三体II」劉慈欣
近頃、懐古調・復古調的な作品を読むことが多いと感じているが、これもその一つ。どこかレトロチックな感じがする。乱暴な言い方をすれば「I」はモダンで「II」はレトロ調。このベスト10では、2・4・5・6・7・8あたりがそれ。山村正夫とか生島治郎、今月と昨年7月の表紙に使ったエドモンド・ハミルトンの新刊などが出ていて、世間的にもそんな傾向か。

7「ワンダーウーマン1984」(映画)
言わずと知れた女性スーパーヒーロー映画の第2弾である。昔は「スーパーヒロイン」という言葉を使っていたが、最近は男性でも女性でも「スーパーヒーロー」と呼ぶようになった。ワンダーウーマン役の女優としては、ガル・ガドットはまさにはまり役でアクションも素晴らしい。

8「幻綺行」横田順彌 著╱日下三蔵 編
1989年に「SFアドベンチャー」に掲載され、90年に「中村春吉秘境探検記」シリーズと銘打たれて単行本が出たが、未収録だった2編を追加して「完全版」としてとして文庫化。明治SFものなのでレトロチックなのはもちろんなのだが、そのレトロ具合が気持ちよく、めっぽう面白かった。

9「ロック&キー」NETFLIX
父親を殺された3人の子供(といっても2人は高校生、1人は小学生)が母親と一緒に父の実家の屋敷に引っ越してきて、父の死の真相を探るミニシリーズ。このドラマの面白さは秘密のドアがいくつもあって、末っ子の男の子がどこからかその鍵を見つけてきて開けていくというところ。そのドアの向こうは自分の行きたいところにつながっていたり、人の心の中だったり、体から抜け出して霊体となって空を飛べたりするのである。

10「ザ・ボーイズ」season2 Amazon Prime
昨年のベスト10で2位につけたドラマの続編。新しい女性のスーパー(アンチ)ヒーローの登場で、ますますエグさ倍増。ヒーローチーム「セブン」のリーダー、ホームランダーの心の闇も深く描いて充実のシリーズ。

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その他、印象に残った作品(順不同)
君待秋ラは透き通る、東京の子、プロジェクトぴあの、月の光、堕地獄仏法/公共伏魔殿、婆沙羅/少年室町倶楽部、きらめく共和国、ワンモア・ヌーク(以上、書籍)
サルベーション/地球の終焉、SHAZAM、ドロヘドロ、BNA、グレートプリテンダー、シスター戦士、オールドガード、呪術廻戦、ママは世直しヒーロー、スタートレック・ピカード、波よ聞いてくれ、TENET、キングズマン・ゴールデンサークル(以上映像作品)

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No.472(Web版122号)2

 冬と修羅

 初村 良明

 宅八郎(本名:矢野守啓)が死んだ。新聞にカラー写真入りで訃報が載っていて、今更ながら大きな影響力を持っていたことを認識した。Wikipediaにも彼の項があり、活動の概要はそれでも把握出来る。私は、彼のコラムやエッセイを読んでいないし、タレントとしての活動もほとんど知らない。知っているのはヤノくんとしての彼だけだ。Wikiに書かれていない彼との交流を思い出してみたい。
 彼の姿を初めて見た(会ったわけではない)のは、一九七八年八月だ。「石森章太郎ファンクラブうなぎ支部」が、アニメの「佐武と市捕物控上映会」を開催したので、私はそれを観に行った。彼もその会場に観客として来ていた。その時は声を掛けあうわけでもなく互いに知らないまま別れた。
 翌年九月、彼は地元のまんが評論サークル「浜松まんが文化研究会」の例会に顔を出した。彼はまだ高校生で「浜松南高等学校漫画研究部」の部長を務めていた。例会で話をするうちに親しくなり、彼から、編集中の自主制作特撮八ミリ映画があるから観に来てほしいとの申し出があった。一九八◯年四月、彼のお宅にお邪魔した。八ミリ映画を観て驚いた。ブルーバック合成や弾着を駆使した本格的特撮映画が出来上がっていた。
 この時、ヤノくんは高校三年生だった。趣味にのめり込んで、受験勉強が疎かになっていたようだ。あとから知ったことだが、「石森章太郎ファンクラブうなぎ支部」のメンバーは、ヤノくんの両親から、息子を“悪の道”に誘わないように、と釘を刺されていたらしい。私はそんなことは知らなかった。知らずに、ヤノくんに、受験生なんだから受験勉強をしっかりするように、とアドバイスしていた。それが功を奏したのかどうかは別にして、その後彼は頑張って受験勉強をするようになったようだ。彼のお母さんが、息子が初村さんの言うことなら何でも聞いて、受験勉強をするようになった、と嬉しそうに話し、夕食を用意してくれた。
 その後、ヤノくんは、わが家にも何度か遊びに来た。若干心配ではあったが、趣味と受験勉強を上手く両立させているようだった。私の妹も弟も彼と親しく話をするようになった。
 その前年の七月、私は地元のまんがサークルメンバーと一緒に、「浜松まんがファンダム」という活動を始めた。同ファンダムは、浜松市民会館の会議室で、まんがの話題を含む他愛のないお喋りや情報交換をするのがメインの活動だったが、ヤノくんの参加により、アニメーション映画の上映も行うようになった。彼の直接、間接の声掛けにより高校生も参加するようになっていた。高校生が相手では、お喋りや情報交換だけでは間が持たなかったことも確かだ。当初、十数人の参加者だけでこじんまりとアニメ映画を観ていたが、せっかくだからもっと大勢の人に観てもらおうと、少し大きな上映会を行うことになった。ヤノくんはアニメーションに詳しく、岡本忠成やベルギーの作家ラウル・セルヴェ、カナダの作家ノーマン・マクラレンの作品を選んできた。ただ、上映作品がテレビで放映される作品とかけ離れていて、参加者の好みとずれていたらしく、上映会そのものの評判は芳しくなかった。
 一九八◯年五月、浜名湖畔の舘山寺荘で「星コン・3」が開催された。事前に主催の「エヌ氏の会」担当者から「東海SFの会」へ八ミリフィルム映写機の操作が出来る者がいれば手伝ってほしいと連絡が入り、何故か私に白羽の矢が立った。星(新一)さんが参加すると聞き、私は気楽に引き受けたが、これまで八ミリフィルム映写機など触ったことがない。あわててヤノくんに操作を習って、当日は何とか星さん原作の「花ともぐら」ほかの八ミリ映画の上映をこなすことが出来た。
 同年一一月、地元で初めてのSFコンベンション「SFクリスマスin浜松」を開催した。ヤノくんの作った特撮八ミリ映画を大勢の人に観てもらおうと借りてきていたが、私の大学時代の友人が弁士を務めた関西SFファンダムの記録映像(MIYACON等)のフィルム上映がウケて、それが長引き、残念ながらヤノくんのフィルムは上映出来ずに終わってしまった。
 一九八一年四月、ヤノくんは受験勉強を頑張った甲斐があって、めでたく大学生になった。彼のお父さんがわが家までわざわざお礼に来た。彼は帰省すると私の所へ必ず連絡してきた。その都度一緒にお茶を飲んだ。大学生になりたての五月の帰省時、精神的にかなり参っていると感じた。五月病だったのかも知れない。彼の話をしっかり聞き、何とか気分を盛り上げようと努めたことを覚えている。彼は東京の大学に通っていたが、私の友人たちが活動する関西のサークルに何度も遊びに行っていたようだ。
 浜松で開催したローカルSFコンベンション「HAMANACON」にも彼は参加した。音源やアンプ、電飾を持ち込み、部屋をひとつ使って、当時流行っていたチェッカーズのような格好で場を盛り上げてくれた。
 一九八五年、彼は大学を卒業し、互いに連絡を取ることも少なく疎遠になった。
 ある時、私はたまたまテレビの深夜番組で、戸塚ヨットスクールの戸塚宏氏がヨット指導をしているシーンを観た。指導を受けていたのは髪の長い眼鏡を掛けた痩せぎすの男だった。ウエットスーツに身を包み波打ち際で戸塚氏のしごきを受けていた。妻とふたりで笑いながら観ていたのだが、ヤノくんに似ているねと話しているうちに番組は終了してしまった。
 それから暫くして、彼はオタク評論家の宅八郎としてメディアを賑わすようになった。しかし、そこからの彼を私はほとんど知らない。
 一九九三年八月、大阪で「第三十二回日本SF大会DAICON6」が開かれた。地元の仲間十数名と貸し切りバスで会場へ乗り込んだが、大会一日目の夜、私は新幹線で静岡へ戻り、翌早朝、静岡だいいちテレビに出向いた。地元出身の有名人宅八郎の友人として、日本テレビの「24時間テレビ」に出演するためだ。本番前には彼と顔を合わせず、本番でサプライズという演出だった。生放送である。せっかくだから二年後に開催する日本SF大会をPRしようと、大きなポスターを抱えて本番に臨んだが、ポスターを開きかけたところでカットされてしまった。放送終了後、ヤノくんの愛車ジャガーに乗せてもらって、彼と静岡市内をドライブした。早めの昼食をとったあと、ヤノくんと別れ、私は新幹線で大阪へ引き返した。再度会場入りして、DAICON6のエンディングのステージに上がり、二年後の「第三十四回日本SF大会はまなこん」をPRした。
 同年一◯月から一年半、私は仕事で品川へ定期的に出張するようになった。ヤノくんは宅八郎として芸能界で大ブレイクしていた。そんな中で彼と落ち合って食事をした。ホテルのレストランに入った時、ヤノくんは長髪を帽子に隠して変装していたが、見る人が見れば分かるようで、オーダーを採りに来たウエイトレスが彼に向かって“頑張ってください”と声を掛けてきた。
 一九九五年八月一九日、二◯日、仲間とともにアクトシティ浜松を借り切って「第三十四回日本SF大会はまなこん」を開催した。ヤノくんには、24時間テレビに出演した時、参加を了承してもらっていた。問題はどんな出番を用意するかだ。電話で何度か打ち合わせたが、なかなか内容が固まらなかった。彼は直前に、自身のマンションで愛車アルファロメオが絡む事故を起こして、週刊誌に興味本位の記事を面白おかしく書かれていた。その車を展示イベントホールに展示するということを考えたが、車の展示は消防法により、ガソリンを抜いたうえで様々な手続きが必要だということが分かり、残念だったが諦めた。
 当日、ヤノくんは大会スタッフルームに来てくれた。スタッフをしていた私の弟がヤノくんと話をした。弟が“遊びに来ていた姉(私の妹)が昨日一人息子と一緒に大阪へ帰ったばかり”と説明したら、妹にもその息子にもひと目でいいから会いたかった、とすごく残念がったそうだ。大ホールで浜松交響吹奏楽団のコンサートを行った。妻が浜松交響吹奏楽団をバックに「天空の城ラピュタ」の主題歌「君をのせて」を歌った。ヤノくんは最前列に陣取って観ていた。
 アクトシティ浜松での一日目のプログラム終了後、ヤノくんを誘って新居町の清風荘の合宿企画を見に行った。車は別だったので詳細は不明だが、帰りに彼の愛車アルファロメオは故障してJAFを呼んだそうだ。
 数年後、東京に出張した際、ヤノくんに連絡して一緒に食事をした。彼は不健康な生活をしていた。食事も不規則で、日に一食の場合が多いと言っていた。焼肉店に入ったが、彼は肉ばかりを食べて野菜には見向きもしなかった。歌舞伎町でホストをしているとも言っていた。彼と会ったのはそれが最後だったかも知れない。暫く年賀状が届いていたが、それがなくなり、電話番号もメールアドレスもいつの間にか変わっていて連絡が取れなくなった。彼のブログ「復讐山脈」も更新されなくなってから開いていない。
 今回の訃報に接して、あちこちのネット記事を覗いた。彼の死は、弟さん(矢野雄康氏)から発表されたようだ。その昔、ヤノくん本人から、弟と喧嘩して家族の縁を切られたと聞いたことがあった。雄康さんが語ったというネット上の文章からは、仲が良いように見えるので復縁したのかも知れない。また未公表だったが結婚もしていたらしい。奥様やご家族には心からお悔やみ申し上げる。幸せな結婚生活だったことも願わずにはいられない。
 オタク評論家というと中森明夫を連想する人が多いかも知れないが“オタク”を日本中に目に見える形で理解させたのはヤノくんだ。彼のスタイル、行動、言葉には、何者をも屈服させる強烈なインパクトがあった。彼はそれを緻密な計算の上に成り立たせていた。
 二年前にも若い友が逝った。ヤノくんが高校時代に作った八ミリ映画に登場するバルタン星人やメカゴジラの造形を担当した仲間だ。若い友がいなくなるたびに思う。こういうことこそ順番でなければと。

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No.472(Web版122号)1

 火の鳥大地編は手塚作品か?

 中村達彦

 朝日新聞紙上で毎週土曜日連載されていた小説「火の鳥大地編」が、9月に2019年から続いた連載が終わった。
 同作は、手塚治虫のマンガを元に、桜庭一樹が小説化したもので、挿絵は黒田征太郎が担当している。
 連載は書き加えた上で、来年単行本化されるそうだ。
 手塚が逝去する前に遺した次回描く予定のプロットをベースにしており、そのプロットの存在は聞いていた。が、ストーリーの大半は桜庭による。
 火の鳥は、古代日本から未来まで複数の時代に、火の鳥に魅了された様々な人間を描いた幾つもの物語で、何度も単行本やアニメになっており、手塚の代表作の1つと言っても良い。その基本設定や大まかな流れは新聞連載開始前に述べられている。
 大地編の話の流れは、日中戦争の最中、上海において、中国奥地の遺跡に眠る火の鳥を求め、間久部緑郎を隊長とする(間久部は、財閥の娘を妻にしているが、夫婦の仲は冷えている)5人の探検隊が出発するところから始まる。
 探検隊に関わる人々は様々な思惑が交差し、野心や反発心など一筋縄ではない。
 火の鳥の世界観を知っている人は、飲むことで永遠の命を手に入れられる火の鳥の血を求めての探検と想像するだろうが、探検隊が中国奥地についた時、遺跡を知る探検隊の1人の娘が火の鳥との約束を破った過ちを明かし、更に突如現れた探検隊を組織した財閥の大物の告白により急展開する。
 その告白は、探検の行程より長くストーリーを占め、物語の鍵である。
 数十年前、財閥の大物は平凡な一青年に過ぎなかったが、日本が大陸に進出を開始した頃に、火の鳥を手に入れており、その火の鳥を元に、友人が何年も時間を巻き戻すタイムマシンを開発。以後15回もその力を使って、日本の歴史を都合良く書き換えてきた。青年が、父から受け継いだ会社も火の鳥の力を背景に、財閥として成長したのだ。
 最初はタイムマシンを、自分の家族を守ったり、好きな人との結婚のため使っていたが、日清戦争で中国との戦争で負けていた日本を勝たせたのを皮切りに、国策に介入するようになり、いつしか時間を巻き戻すことに躊躇しなくなっていた。
 彼の周りには軍や財界の大物が集まり(有名に人物が複数)、鳳凰機関という名前がつけられていた。
 火の鳥の力は、日本の国策のため必要とされたのだ。今回もまた。
 告白を聞いた間久部が取った手段は……。
 時代は太平洋戦争に突入し、それぞれ違う道を進み出した探検隊の面々により、タイムマシンの秘密は握られる。その結末は?
 読み終えて、マンガではなく小説で書かれていることもあるが、これまでの火の鳥とは異なっていると感じた。
 桜庭・黒田両氏とも手塚やその作品に敬意を払っており、スターシステムで間久部をはじめ正人や猿田と手塚の火の鳥に登場した者が出演している。他にも、文中に手塚作品のオマージュを感じさせるものが登場しているが、手塚ワールドとは認めにくい。
 火の鳥が人間に利用される展開も、今までのストーリーからは想像つかないし、話の筋にあちこち疑問を感じる。
 手塚の火の鳥はあちこちの雑誌で時代ごとに描き継がれ、一番新しい作品でも32年前になるが、実はSFだったり、火の鳥が登場しない、主人公は火の鳥のことは知らないなど、ストーリーだけでもいろいろ工夫され、現在にも見劣りしない。
 桜庭は、明治時代に急速に近代化し、中国やロシアとの戦争に勝利した日本についてその要因を本作のテーマにした。
 「火の鳥大地編」は、手塚作品ではないか、小説としては最後まで読ませてもらった。
 歴史改変はSFの題材で用いられてきた。機会を見てまた語ってみたい。
 今年は、もし手塚が現在も生きていてマンガを描いていたら、とAIに手塚の絵柄を学習させ、新しい手塚マンガを生み出すプロジェクトTEZUKA2020が試みられ、話題になった。
 一部の作業は人間が行ったが、AIにより手塚のタッチやストーリーを模倣したマンガが作られ、講談社モーニング誌上において、読み切り全2回で発表されている。
 そのマンガは「ぱいどん」というタイトル。近未来、日比谷公園で暮らすホームレスで小鳥のロボットを友とする青年ぱいどんが、ある姉妹に頼まれ、技術者の父親を探してやる。優れた能力で、父親の行方を突き止め、背後にある陰謀を叩き潰すのが大まかな流れだ。
 「ぱいどん」の評価は、賛否両論で、「面白かった」「手塚治虫の作品が帰ってきた」と好意的な意見から、「構成や物語のスピード感が伝わってこない」「コマに手塚のタッチを感じない」「このストーリーを手塚が通すだろうか」と否定的な意見もある。
 もう亡くなったマンガ家の作品をコンピューターに学ばせ、新しい漫画を描かせるなど、SFの出来事である。ぱいどんの正体や劇中明かされていない謎もあるが、続編が描かれるかまだ不明だ。
 昨年、美空ひばりの歌もAIで作られ、モーションキャプチャーで歌っている姿も撮影、紅白歌合戦で歌われ、反響を得た。
 手塚も美空も戦後から同じ時期に活躍し、カリスマ的存在であり、共に89年、時代の変わり目に合わせて亡くなった。コンピューターに新作が生み出されるとは。大御所ならではであろう。
 課題は多いが、いつか乗り越えるだろう。それが正しいかどうか別にして……。
 手塚が亡くなって31年になるが、彼のことや作品については、現在もなお語り継がれている。手塚の作品を、違うクリエイターが異なる感性でリメイクするということも続いている。手塚作品以外にもリメイクされた作品は多くあるが。果たしてこの先。

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