例会連絡4

3月24日、31日の例会も、浜松市中区幸1-4-12 「しまうま珈琲 幸店」です。21時過ぎくらいから

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No.498(Web版148号)2

 陰の実力者になりたくて! について 困田次郎 

(この文章にはアニメ「陰の実力者になりたくて!」のストーリー上のネタバレがあります)

2022年秋から放送され先日20話で終了したアニメ「陰の実力者になりたくて!」が話題になっている。普段は目立たぬ一般人だが実は強大な力で世界を暗躍する人物「陰の実力者」に憧れて、ひたすら強くなる修行をしていた高校生が、なんやかんやで異世界転生。普段はただの学生だが裏では闇の組織を率いて活躍する物語だ。

「陰の実力者」に憧れる高校生、影野実は山奥で修行中に走ってきたトラックに飛び込み、剣と魔法の異世界、ミドガル王国に。地方貴族の赤ん坊に転生した。名はシド・カゲノー。前世の記憶が残っていたので、そのまま強くなる訓練は継続された。少年に成長すると自分の実戦トレーニングを兼ねて、悪い盗賊を退治し捕らえられていたエルフを救った。そして自分は「シャドウ」という名でありディアボロス教団が諸悪の根源であると語ると、エルフはそれを信じ共に戦う仲間となり、ここにシャドウガーデンが結成された。ディアボロス教団は適当なでっち上げだが、たまたま偶然同じ名の極悪宗教団体があり、世界を裏から牛耳っていた。エルフは仲間を集め、組織を構築し、いつの間にかシャドウガーデンは巨大な闇の勢力となっていった。

やがて成長したシド・カゲノーは魔法と剣術を学ぶ魔剣士学園に入学する。そこで同じ学園の生徒、アレクシア・ミドガル王女と知り合う。アレクシアは親に決められた婚約者を誤魔化すために、シドと付き合っているふりをするのだが、そこで興味深い会話をする。アレクシアは王国最強と言われる剣士の姉、アイリス・ミドガルにコンプレックスを持っており、姉に比べて地味な自分の剣技を恥じている。基本に忠実なシドの剣技が自分と似ていて好きではないというアレクシアの言葉に「僕は君の剣が好きだ。普段は自分以外の物は割とどうでもいいと思っているが、僕が好きな物を他人に否定されると腹が立つ」シドの言葉に怒ったアレクシアは剣を向けるが、シドは無視する。たわいもない会話にも思えるが、シドという男の本質をよく表している。自分の美意識を何より優先している。それ以外の事には興味がないのだ。

シドは客観的にみると異常性格者である。目的の為ならばどんな行動もいとわない。自らの戦闘スキルを高めるためには殺人なども喜んでする。(後に自らに災いが及ばぬように、顔を隠して盗賊を襲ったり)戦いに勝つために美女の首の頸動脈を食いちぎって殺したり、(血に汚れた口でほほ笑む姿は明らかに狂人のそれ)自分の正体を隠すためなら、まともな人間ならとても耐えられない犬のような屈辱的な扱いも、三日三晩にわたる残酷な拷問も平気だ。人からどう見られているかより、今自分はこういう姿を人に見せたいんだ、という思いを優先させる。

こういうシーンがある。旅先で何かの間違いでアレクシアと大浴場で遭遇するのだが、悠然と誰もいないかのように湯船に入り鼻歌を歌ってくつろぐ。動揺するアレクシア(CV花澤香菜)が声をかけるが「温泉ではあまり人を見ないようにしてる。お互いに気持ちよく入るために。だから君も僕のエクスカリバーをチラチラ見るのをやめてくれないか」といなす。「それがエクスカリバー?ミミズの間違いじゃないの?」と言われると、彼はアレクシアの目前に立って「物事を見掛けだけで判断してはいけない。君がミミズだと思った物は、まだ鞘に入っただけかもしれないんだから」と言い放ち、大浴場を後にする。

この言葉は単なる浴場での下ネタ話と捉えることもできるが、後のエピソードで語られる彼の哲学「真の強さとは、力ではなく、その在り方だ」とも繋がる。

この作品は、巨大悪徳教団を想像ででっち上げた主人公が、自らの妄想に則って行動するが、たまたま実際に存在していたその教団との戦いの中で、部下が彼の妄想を深慮と誤解するコメディであり、中盤までは喜劇色も強いのだが、終盤になって物語は暴走し始める。

シドは王国の一大イベント「武神祭」に参加する。王国内外を問わず参加可能な剣士の試合のトーナメントだが、名を偽り「ジミナ・セーネン」として予選から勝ち上がる。決勝トーナメントでアイリス王女と対戦するが、王国最強のはずのアイリスは圧倒的な実力差の前に何も出来ず敗北する。敗れた彼女の眼にジミナからシャドウへと変貌する姿が映る。ディアボロス教団はシャドウガーデンの名で多くの悪事を働いており、シャドウはその汚名を放置していた。アイリスにとってシャドウはディアボロス教団同様、王国の平和を揺るがす「敵」。試合で敗れたとはいえ目の前のシャドウに挑まざるを得なかった。幸い、強力な破壊力を持つ「ミスリルの剣」を手にすることができ、招待客として来ていた武神祭5連覇のエルフ、剣聖ベアトリクスも共に戦ってくれた。しかしシャドウの力の前に二人は無残に敗れた。倒れたアイリスの「タダで済むと思っているのか。王都中の騎士に動員がかかっている、ミドガル王国の全てがお前の敵だ、もうお前にどこにも逃げ場はない」との言葉をシャドウは嘲笑する。「逃げる?誰が?何処へ?何故?」シャドウは自らの魔力を解放させ、二人の前で人類が手にした最強の力「核の光」をみせる。光は都市の空を覆う分厚い雨雲を全て吹き飛ばし、二人にまぶしい陽光が。シャドウはどこかに行ってしまっていた。完全な敗北にアイリスは号泣する。

彼女のこれまでの人生、王女としての誇り、責任、王国最強剣士としてかかる国民の期待、国の平和を守らねばならない義務感、愛国心、正義感、それら多くの背負ってきたものが、シャドウの個人的な美学の前に砕け散った。何故だろう?ここでまたシャドウのセリフが思い出される「真の強さとは、力ではなく、その在り方だ」そして全編に流れる魂を揺さぶるBGMは・・

この最終回「魔人降臨」をみて、皆が連想するのは、アニメ「コードギアス反逆のルルーシュ」の第1話「魔神が生まれた日」だろう。また主人公の人間性が次第に失われていく(ようにも見える)物語、アニメ「オーバーロード 」を思い出す人も多いらしい。4月からはBS等で再放送も始まる。また2期制作も決まり、おそらく来年以降に、シャドウの新たな冒険を目にすることになるだろう。

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No.498(Web版148号)1

 最近のNHKドラマについてあれこれ

 by 渡辺 ユリア

 まず “大奥” 実は漫画原作読んでません。けれどドラマの感想を書いてみます。吉宗の時代から物語は始まって、そして家光の時代へ。男女逆転ストーリー、そして歴史改変ファンタジー・・と思って観つづけると、それだけではなく、その時代にもしかしたら、そういう物語があったかもしれない・・・と思いようになりました。その時代に一人の女性が社会やまわりの人たちの荒波にのみこまれそうになりながら、自分は今、何をすべきなのか、を問い続けながら、そして決心して生きていく・・という感じです。そういうのが物語りとして秀逸であると思います。
 そして “探偵ロマンス” 平井太郎青年(後の江戸川乱歩)がある元探偵と出会って、その人物がなぜ探偵となったのか、誰、もしくは何を追っているのかに興味を持ち、謎の事件に巻き込まれていく・・というストーリーになっている(と思います)その時代の街のふんいきが謎めいており、オペラ座 赤い部屋 お百・・など謎の言葉も出ている。そしてオペラ座の前で客引きするラッパ吹きやごみを集める人々、古本屋、支那そばを作っている平井太郎、行きかう人々、古めかしい郵便ポストの前にすわるよごれた顔の女の子など、物語の中に入り込めそうです。そして殺人事件や銃撃戦が起こる。逃げる犯人と追う人物。なぜ彼は追うのか・・・
 ラストは “どうする家康” 大河ドラマです。第1話は “どうする桶狭間” 1560年にあった事件。この戦いは重要です。弱小と言われていた尾張の織田信長が大国駿河などを支配する今川義元の軍を打ち破った戦い。その後、日本の多くの人々が驚異の目を向けたのが織田信長。ドラマに戻りましょう。松平元康(後の徳川家康)はその頃、18才か19才で初陣でその戦いに出たのです。これまでのドラマで描かれた家康像とは異なり、戦いたくない、できれば逃げ出したい・・と思っている家康。それでも大高城に必死に入城できた後、その城から逃げ出して海岸をさまよう・・その場面は返って新鮮で現代の私たちと等身大の家康さんなんだと思っています。では、この辺で
                      yullia 2023.2.14

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例会連絡3

3月17日の例会も、浜松市中区幸1-4-12 「しまうま珈琲 幸店」です。21時過ぎくらいから22時過ぎくらいまで

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例会連絡2

3月10日の例会も、浜松市中区幸1-4-12 「しまうま珈琲 幸店」です。21時過ぎくらいから22時過ぎくらいまで

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例会連絡

今週の例会は、浜松市中区幸1-4-12 「しまうま珈琲 幸店」です。21時過ぎくらいから22時過ぎくらいまで

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No.497(Web版147号)3

 ますむらひろし画のふたつの “銀河鉄道の夜” についてあれこれ

 by 渡辺 ユリア

 1983年初版発行の前者、その2年の後に描かれた後者。前者は112p、後者は198p。比べてみると色々な場面が前者よりもくわしく描かれ内容が深い。物語の導入部分が前者とは違っています。こちらのほうが物語りに入りやすい。夜のにぎやかな街の祭りの場面。人々は街の広場に集まって、一緒に “星めぐりの歌” を歌ったり、花火をもやしたりしている。ジョバンニの父さんと母さんの事情も描かれています。牛乳が買えなかった事。そして帰り道でザネリたちに酷い言葉をかけられたりした事。そして彼は山のほうへと走ってゆく。背の高い木立ちや真っ暗な草を抜けて、一本の道を辿って。にわかにがらんと空が開け、山の頂上に行く。そこで不思議な体験をするのですが、前者は光がまたたくといつの間にか列車の座席にいるのに対して、後者は光がまたたき、遠くからセロのような声が聞こえてくるのです。そして光がぐーんと伸びて広がり・・・何時の間にかジョバンニは列車の座席にいるのです。カムパネルラとの再会。そして列車での旅が始まる。北十字とプリオシン海岸、いろいろな人たちとの出会いと別れ。そしてカムパネルラとどこまでも行こう・・・と言った事。でも、不意にカムパネルラが消えた時、彼は大きな声を挙げて泣きました。前者はそこで目が醒め、元いた山の頂上にいる事に気ずいたのに対し、後者は、不意に「お前はいったい何を泣いているの・・」という声。その人物は説明する。それには原作者の賢治の想いが詰まっているように感じます。ではこの辺で。

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No.497(Web版147号)2

 やはり続く不滅のまんが道

 中村達彦

 昨年、マンガ家の聖悠紀が亡くなった。
 マンガ同人集団作画グループで活動。少女マンガやアニメ・特撮のコミカライズマンガの活躍で注目され、「宇宙戦艦ヤマト」「忍者キャプター」などを手がけた。アニメでは「超電磁マシーンボルテスV」や「闘将ダイモス」のキャラクターデザインに参加した。
 少年マンガでも作品を発表。病気に悩まされながら、長く描き続けた。
 代表作「超人ロック」は作画グループで始まってから、雑誌を替えて50年も続いてきた長寿のシリーズだ。
 遥か未来に活躍するエスパーのロック、外見は緑色の髪が特徴の少年で、その超能力はサイコキネシスやテレパシーはもちろん、自らを不老不死に、惑星を滅ぼしてしまうほど、計り知れない。
 ロックは平穏に一人の人間として過ごすことを願うが、その超能力からいろいろな事件に巻き込まれる。ロックは普段善人だが、悪意には怒りをもってあたる。
 多くの人がロックとすれ違い、大小の時間を経て去っていく。
 人類はドライブ航法で他の天体へ。銀河連邦を築くが、長い時の後、大変動で崩壊、銀河帝国を樹立する。動乱は続き、再び銀河連邦へ、更に長い年月が流れていく。エスパー以外にクローン、アンドロイドなどSF小道具が多く登場する。
 ロックの物語は、80年代初頭から注目されアニメに、84年に映画化され、その後複数OVAになった。他のSFマンガ、SF小説にも影響を与え、「超人ロック」を題材にしたゲームも作られている。
 シリーズ中、「魔女の世紀」「ロード・レオン」「光の剣」と幾多の話がある。
 デザインやタッチは最初と大して変化が無いが、ストーリーは工夫されていた。あるエピソードのキャラクターが、後続のエピソードにおいて再登場をしたり、あるエピソードでロックが登場しなかったが、後半意外な姿で絡む、ロックが家庭を作るなど考えられ、マンネリを感じさせなかった。しかし長く話が作られた。最初ははまっていた自分もいつの間にか、長すぎる物語の追跡をあきらめた。
 そして作者の死と共に、物語は幾つかの謎を残して未完で終わった。
 聖は作画グループの活動でも、他のマンガ家たちと共作し、作品を生み出した。
 70年代半ばから80年代初めに一世を風靡した。同じ世代のマンガ家で、柴田昌弘、和田慎二、新谷かおるがいる。
 彼らは少年マンガのみならず少女マンガでも活躍、メカも可愛い女の子もうまく、ヒットしアニメになった作品を幾つも生んだ。
 彼らの描いた作品読みたさに、周囲の眼を気にしながら、少女マンガを読んだ記憶が。
 皆、逝去もしくは引退した。
 先日、マンガ家の桜田吾作が亡くなった。少女マンガからデビュー、幾つのオリジナル作品を発表したが、マジンガーシリーズのコミカライズで注目された。それはアニメよりハードな展開でやり過ぎの感があった。女性キャラクターも色っぽかった。
 多くのマンガ家は、先人の大御所マンガ家に大きな影響を受けた。聖も石ノ森章太郎(石森章太郎)の「マンガ家入門」を読んでマンガ家を目指したとされる。石ノ森章太郎も手塚治虫に大きな影響を受けた。
 昨年NHKで36年前にドラマ化された「まんが道」が再放送された。脚本を書いたのは、「純ちゃんの応援歌」「たけしくん、ハイ!」も手がけたヒットメーカー布勢博一。
 第二部の「青春篇」はトキワ荘が舞台になっており、若きマンガ家たちが描かれた。ドラマキャストには、もう亡くなられた方や、当時は脇役だったが後にブレイクし現在も現役の方があちこちに。
 87年、ドラマが放送された直後、作者の藤子不二雄はコンビを解散し、2年後には劇中で若手マンガ家を励ましていた手塚治虫が亡くなっている。
 昨年秋、藤子 不二雄Ⓐに続いて、「まんが道」にも出演した永田竹丸も亡くなった。
 児童マンガをメインに活躍、大ヒットは無かったが、70年代にテレビマガジンで「冒険コロボックル」「ジムボタン」「クムクム」とアニメ作品のコミカライズを手がけた。
 当時のテレビマガジンは仮面ライダーやマジンガーシリーズの特集で人気を誇ったが、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄も同誌でマンガを描いており、トキワ荘状態だった(桜田吾作も別冊で東映まんがまつりのマジンガー作品をやっている。多作だがよくやれたな)。
 トキワ荘のマンガ家たち、作画グループの活動、マンガ家たちの活動は時を経て続いていった。
 フィクションでも、マンガ「ケロロ軍曹」8巻に、「まんが道」オマージュのエピソードがあるし、コミックが長期連載され、アニメや実写映画になった「バクマン」も「まんが道」後継作品であろう。
 そう言えば、マンガ連載が続き、Eテレでアニメが放送されている大今良時の「不滅のあなたへ」はファンタジーだが、突然現れたものが動物や様々な人間に生まれ変わって、長い年月を過ごすのは「超人ロック」を連想させる。
 前にも言ったが、まんが道は続いてるのだ。

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No.497(Web版147号)1

 My BESTS 2022

 中嶋 康年

1「爆発処理班の遭遇したスピン」佐藤 究
昨年の直木賞「テスカトリポカ」の作者、佐藤究の短編集。爆発物の解除に量子論、例の「シュレーディンガーの猫」理論を絡めたミステリの表題作。CGクリエイターからクリーチャー・デザイナーになり、実物のキメラを創作してしまう「ジェリーウォーカー」など、SF作家としても通用する多彩な作家だ。もっとほかの作品も読んでみたくなる。

2「プロジェクト・ヘイル・メアリー」アンディ・ウィアー
一人になりながら、それでも頑張って事をなしていく。でも、ほんとは一人じゃない。背後には仲間たちのバックアップがついている。「火星の人」もそんな話だったが、今回は最後の最後が効いている。

3「三体 X」宝樹
SF作家の宝樹が「三体」ファンとして、原作者も描かなかったあんなことこんなことを書いてしまったという「公式外伝」。宝樹自身の短編も邦訳されているが、なかなか面白い話を書く人だと思う。

4「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」マーベル・スタジオ(映画)
前作「ファー・フロム・ホーム」でスパイダーマンの正体はピーター・パーカーだと暴かれてしまった。これを何とかしたいと思い、ドクター・ストレンジに人々の記憶から自分の正体の記憶を消してもらうように頼みに行くが、友人には覚えていてもらいたいと思って呪文の邪魔してしまう。その結果、魔法は失敗、多元宇宙に穴をあけてしまうことになった。この3部作最終作のキモはその多元宇宙から別のスパイダーマンが来てしまうところ。スパイダーマンは過去2回映画化されており、違う役者が演じていたのだが、その二人が別次元のスパイダーマンとして共演した。

5「サイバーパンク エッジランナーズ」(アニメ)TRIGGER NETFLIX
2020年のアクションRPG「Cyberpunk2077」のアニメ化。ゲームの方は知らなかったのだが、鮮烈な色遣い、大胆なアクションが素晴らしい。人体改造を繰り返すアウトローの傭兵団に加入することになった、人体改造に耐性のある若者の物語。

6「黒衣の聖母」山田風太郎
2022年は山田風太郎生誕100年ということで、数多くの出版があった。山田風太郎というと、忍者物だが、これは太平洋戦争の時代の推理短編集。「戦艦陸奥」「潜艦呂号99浮上せず」「裸の島」「腐乱の神話」など全10編はどれもすごい。

7「兎の島」エルビラ・ナバロ
〈スパニッシュ・ホラー文芸〉がブームと帯には書いてあるが、実はこれが最初の1冊。ピラール・キンタナ「雌犬」、グアダルーペ・ネッテル「赤い魚の夫婦」もその系列といわれるが、「スパニッシュ・ホラー」とは銘打っていない。ネッテルはメキシコ人だし。今どき珍しい函入りで装丁に凝った短編集。

8「リコリス・リコイル」(アニメ)A-1Pictures NETFLIX/AmazonPrime
今年のアニメは?と聞くと、「リコリコだね」という声が聞こえたほどだった。

9「極めて私的な超能力」チャン・ガンミョン
今年は韓国のSFが数多く紹介され、何冊か読んでみてどうもあまりピンとくるものがなかったが、この短編集はちょっとハード系ですごいと思った。ごく短い短編とちょっと長めの短編が混じっている。「定時に服用してください」「アラスカのアイヒマン」「極めて私的な超能力」「データの時代の愛」がよかった。

10「ブラックアダム」ジャウマ・コレット=セラ監督(映画)
興行的には失敗とされ、続編は制作されないことに早々と決まったそうだが、個人的には、かなり楽しめた。最近DCではスーパーマンの俳優がまたもや変わることになりそうだとか、興行的にも成功したワンダーウーマンの続編は作らないことに決まったり、撮影も終わっていた「バットガール」は公開しないことになったり、あまりいいニュースはない。

その他、印象に残った作品(順不同)
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SFマンガ傑作選、半鐘の怪・半七捕物帳、文豪たちの怪しい宴、獣たちの海、メキシカン・ゴシック、疫神記、雌犬、怪物のゲーム、マルドゥック・アノニマス7、赤い蝋人形、スターシェイカーマーベル・グラフィックノベル・コレクション(以上、書籍)
ジョジョの奇妙な冒険:ストーン・オーシャン、イン・フロム・ザ・コールド、ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪、サマータイム・レンダ、シーハルク:ザ・アトーニー、シン・ウルトラマン、ウェンズデー、BLEACH 千年血戦篇、ソー:ラブ&サンダー、ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー、ドクター・ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス、攻殻機動隊 SAC-2045、サンドマン、ムーンナイト、MSマーベル、すべて忘れてしまうから、ペリフェラル〜接続された未来〜(以上映像作品)

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No.496(Web版146号)2

 2023年今年はどうなる?

 中村達彦

 明けましておめでとうございます。2023年ですね。
 年末はサッカーワールドカップ盛り上がった。意外な番狂わせ相次ぎ、日本は善戦したが、2022年は良い年では無かった。
 コロナは4年目で、なおも続いている。去年2月に起こったウクライナの戦争はおびただしい犠牲を出し続いている。
 のみならず日本でも物価高に。戦争の影響は世界に広がるばかり。
 中国や北朝鮮は軍拡を続け、見逃せない。
 日本海へ盛んにミサイルを発射する北朝鮮の脅威が増えている。今はミサイルが頭上を通過したり、日本海に落ちるばかりだが、そのうち……。
 国会では防衛費を増やし、ミサイルを防ごうと。否、ミサイルが発射される前に、こちらから相手の基地を叩こうとの声も。
 中国でもロシアでも、そしてアメリカでも反政府デモが続いている。民主党と共和党の選挙戦は互角、移民問題も。ドイツではクーデター未遂が、イギリスは1月で首相が替わった。どこの国も問題を抱えている。
 日本では、7月、選挙の遊説中に安倍元首相が、公の演説で狙撃されて亡くなり、続いて国葬や旧統一教会と自民党との親密さが問題になり、尾を引く。
 この銃撃事件が起きなければ、旧統一教会と自民党の長い関係は、明らかにならなかった。しかし罪は罪なので。そう言えば45年も昔の人気マンガのラストと銃撃事件が似ているとの声も。
 日本の景気は平成に入ってから30年以上も好転せず、出産率は低下し、高齢者は増えるばかり、海外労働者に依存する割合も増え続けている。
 更にロボット化も進む。この前、近所のチェーン店にランチを食べに行ったが、席に着くとタブレットで注文を頼み、少しすると料理が車型のロボットで運ばれて来た。
 日常でロボットの普及は、携帯電話同様これからも進んで行くだろう。30年前も携帯電話がここまで広まるとは思わなかった。
 日本はどうなるか?他国にはハイチのような無政府で治安が最悪な島国もあれば、サッカーで日本に勝ったコスタリカのような世界幸福度の高い国も。
 2002年、ニューヨークのテロについて、その前にSFでこう言う、高層ビルにハイジャックした飛行機で激突する話を書いたら、一笑に伏されるだろうと聞いた。
 ウクライナの戦争も、安倍元首相の銃撃もまさか起こらないだろうと思っていたことが起きてしまった。
 去年の今頃、PMで今年はどうなるか書いたが、こんなふうになるとは。
 戦争で世界のエネルギーに影響が出て、日本でも石油やガスではなく、東日本大震災で危険視された原子力発電が注目されている。
 石油やガスは、地球温暖化で控える方向に行っている筈だったが……。
 海洋汚染などプラスチックの問題もある。
 砂漠が増え、山火事は多発し、南北極の氷はどんどん溶けている。冬季オリンピックが不可能な国が増えているらしい。
 21年夏の東京でオリンピックをやったが、観客の入場がコロナでかなわなかった上に、大企業の不正が明らかになった。幻滅。サッカーワールドカップ開催地ドーハも、開催にあたって不正が明らかになったり、海外労働者が多く解雇されたり、亡くなったことも問題になった。
 嫌なことが相次ぐが、宇宙への関心、月や火星へ再び目が向けられている。
 気象予報や通信でも宇宙開発は、我々の生活に大きくなった。
 昨年末、日本で作った月着陸船が打ち上げられた。宇宙開発企業スペースXの助けを借り、今年4月に月へ着陸する予定とのこと。
 アメリカが最後に月へ有人ロケットを送ってからもう50年余り経つ。
 現在、世界各国の協力を借りて、再び月への有人飛行アルテミス計画を進めている。2026年まで続き、月軌道上に宇宙ステーションを建設したり、資源調査まで視野に入れているとのこと。
 かつて国家の威信をかけて宇宙開発は行われたが、大企業が参入し、変わりつつある。
 その次は火星だ。
 アメリカは、ユタ州の土地を火星に見立て、そこに人間を送り込んで、有人探査のシミュレーションを長く行って来たそうだ。
 実業家で、ツイッター社買収で話題になったイーロン・マスクはスペースXを創設したが、諸問題を解決するためにも、火星植民を、宇宙開発の目標にしていると言った。
 中国の探査機も火星に送り込まれ、探査車が地表に降下し、調査を行っている。国際宇宙ステーションとは別に、中国も宇宙ステーションを建設し、月や火星に探査ロケットを送り込むなど目まぐるしい活動が続く。
 アラブ首長国連邦は、22世紀に火星に都市を建設すると計画を発表し、2021年に探査機を送り込んでいる。
 火星を改造して、地球と同等にするテラフォーミングをしようとの声も。その場合、膨大な年月がかかるだろう。
 火星に本格的探査が始まってから46年、まだ人類は火星に降り立っていない。
 1897年にイギリスでウェルズが「宇宙戦争」を発表。53年後、アメリカのブラッドベリ(2012年6月に亡くなった)が「火星年代記」を発表した。「火星年代記」は1999年に人類が有人探査を。人類そっくりの火星人は、地球人を拒むも地球人の持ち込んだ伝染病で滅亡(「宇宙戦争」ラストを意識している)。移民者が地球から火星へ。
 1979年に「火星年代記」は映像化され、後に日本でもTV放送された。
 ラスト、2026年に移民者の多くが再び地球へ、そして核戦争が起き、残った火星の移民者は新たな火星人となると言うもの。
 現実はどうなるだろうか?

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