No.351 (Web版1号)3
SF essay (167回)
川瀬広保
「2012」
カタストロフィー映画、またはデイザスター映画「2012」はかつてないほど、迫力のある世界滅亡のSF映画だ。予約してあったDVDが届いたので、さっそく見た。
2009年映画だから、去年から見て2012年というのはごく近未来というわけだ。そういえば書店にも2012関連の本が並んでいる。
惑星直列による地球の終りという予言本は今までにもあった。今度のこの映画は地球の壊しかたからいっても、なかなかの迫力だ。早々にアメリカ大統領は死んでしまうし、残ったのは現代のノアの方舟乗ることができたごく少数の人間だけだ。
そして、ヒマラヤ山脈は津波にのまれて水没し、それ以前に日本列島は簡単に沈没させられるしで、結局アフリカ大陸の一部が地殻変動のために隆起して、そこだけが人類が生き延びるための陸地になるというかつてない設定で面白い。
面白いが、気分が滅入るのも確かだ。だって、あと2年後でしょ!これが本当になったら、滅亡する方のひとりだね、私は、と思った。反面、ちょっと漫画的だと思うところもある。つまり、地球が壊れることによって、世界を滅亡させるのは徹底的だが、ここには何らかの思想性がない。一言でもいいから、おごり高ぶった人類が「神」から天罰を下されるというような言葉があればまた、違った感想を持ったかもしれない。
いや、この映画の作者はわざとそういうものを避けたのかもしれない。
それにしても、「アバター」の時と同じように、ニュースに取り上げられた。
3月25日の朝日新聞朝刊の国際欄にいわく、
米映画「2012」見たら逮捕!
という記事が載っていて、某隣国内で米映画「2012」をDVDで見た住民が逮捕されている、とある。主席生誕100年という重要な年にこんな映画をみるな、ということらしい、とある。
私は日本人でよかったね、と思った。それだけ世界的に影響力があるよくできたパニック映画だといえるだろう。
1999年の時も、結局は何もなかったから、まあ、大丈夫でしょう。しかし、最近のチリ地震とその大津波、ハイチの大地震、去年の静岡県西部の地震、昨今のいつまでも続く寒さ・・・。こういうのに接すると、何かの前触れかもなどと思ってしまうが・・・。
「ザ・ムーン」
以前、ツタヤで借りてきて一度見たが、よくできたドキュメンタリー映画なので、インターネットで購入して、再度見た。
アポロが月へ行って、人類が初めて月へ降り立ってからもう40年経ったことを、改めて実感した。
このときは、私は大学生で確か東京のどこかの食堂のテレビで中継を見守った記憶がある。あのときは何十億もの人類が、月に落ち立つ瞬間を見た。
バズ・オルドリン、マイク・コリンズ、アラン・ビーン、ジム・ラヴェルら、かつての英雄たちも歳を取ったなあというのが、まずいつわらざる感想だ。ラヴェルはもう82歳になるし、その他の面々も80歳か78歳ぐらいの年齢だ。
だが、これらの英雄たちの思い出やコメントを聞いていると、かつての彼らの好奇心や勇気やフロンティア精神が、まだ大いに感じられて、大げさに言えば、血が騒ぐ思いにさせられる。
それにしても、40年前には、2012年ごろになったら、それこそSFの世界みたいに、われわれ人類は、次は火星に、金星にと次々に有人宇宙船で太陽系を探索していたであろうと思っていたのに、実際の2010年は、まだその後、月へ再び、人間を送っていないし、火星になどはもちろんだ。
この現実との差はいったい何だろうと思ってしまう。
それはそれとしても、この「ザ・ムーン」は実際に、望遠鏡で晴れた夜、どんな月齢の月でもいいから見ていると、あの夜空に光っている「月」に本当にわれわれ人類は到達し、足跡を残してきたのだと、あらためて、感慨深いものを感じざるをえない。
アポロ40周年の記念すべきこのドキュメンタリー映画は、必見の映画であると言えよう。
(2010・3・29)
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)
最近のコメント