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No.354 (Web版4号)3

SFエッセイ(169回)

川瀬広保

「ゲゲゲの女房」

 これだけ「ゲゲゲの女房」の人気が出ると、このエッセイにも思い出を書いてみようと思った。
 私は、水木しげるの名前は知っていたが、氏のマンガや本を読んでいなかった。どうしてだろうとあれこれ思いだしてみた。この番組を見てわかったことだが、1968年(昭和43年)ごろから「ゲゲゲの鬼太郎」は一世を風靡し始めたのだが、私はほとんど見ていなかったように思う。そのころ、私は大学生で下宿をしていたし、テレビもなかった。なにより、SF研を設立しようとしていたり、SF大会に参加し始めたころであり、そちらの方に夢中だった。
 テレビを見ている若い人たちには、連ドラ「ゲゲゲの女房」は夫婦愛の物語だと思う人も多いだろうが、私にとっては、昭和30年代や40年代を思い出させてくれる久々の番組である。
 その昔、貸本屋があって、そこへ本を借りに行ったかすかな記憶がある。また、紙芝居の拍子木の音が打ち鳴らされると、5円玉を握りしめて、近くの農道へ走って行った。アメを買わないと見せてはもらえないシステムだった。そのうち、書店が出現するようになるのだが、田舎にはその書店もなく「街」まで行かなくてはいけない。小遣いも少ないので、「少年マガジン」や「少年サンデー」などを毎号買えたわけではないのだが、やがて手塚治虫の「鉄腕アトム」に夢中になる。
 このあたりのことを思い起こさせてくれたのが、このNHK朝の連ドラ「ゲゲゲの女房」だった。
 ところが、この番組を見はじめると、毎朝8時から毎昼12時45分からの二回、必ず見るようになった。一回目は、ストーリーを追ったり、登場人物の表情を見たりして、二回目は背景の細かいところを確認したりしている。昭和30年代から40年代へと、水木しげるが貧乏時代から売れっ子になっていくと、画面に写る家具などの背景もいろいろ変わってきていて、面白い。
 また、今まで読んでいなかった水木しげるの本もあれこれ買って、読んでいる。
「のんのんばあとオレ」「悪魔くん」「悪魔くん千年王国」「敗走記」「白い旗」「人生をいじくり回してはいけない」「ゲゲゲの先生大いに語る カランコロン漂泊記」「水木サンの迷言366日」「水木しげる伝」(上)(中)(下)「ゲゲゲの鬼太郎」1〜5「総員玉砕せよ!」「ねぼけ人生」「河童の三平(全)」「水木サンの幸福論」「私はゲゲゲ 神秘家 水木しげる伝」「ゲゲゲ 家族の肖像」「水木しげるの遠野物語」等々、それから、こんな本「ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘」、そして今回のNHK「ゲゲゲの女房」の原案になった「ゲゲゲの女房」も買って、何回か読んだ。

 ちょっとした水木しげるブームが私にも起こってしまった。
 水木しげるには、不思議な魅力がある。SF漫画家ではないので読んでいなかったのだが、今更のように、読み始めると不思議な魅力を感じる。
 この人物の数奇な人生にも圧倒される。戦争体験、九死に一生を得て、片腕になりながらも、生還する。努力に努力を重ねても、認められない貸本漫画家時代、一転して、超売れっ子になる、売れっ子になったがゆえの苦悩、88歳になっても元気だというそのエネルギーやタフさ、その他いろいろ。
 また、手塚治虫との関係にも興味をひかされる。本人も書いているが、お互いに敬して遠ざけるといった面があったそうだ。また、お互いにお互いの本は読んでいなかったということにも、マンガ界の二大巨頭の心理面が感じられて興味を持った。

 この前、ニュースを聞いていたら、今年は、水木しげるロードは147万人を超す観光客であふれているそうだ。これもこのNHKの朝の連ドラの影響だろう。
 今朝の朝刊によると、「ゲゲゲの女房」は20パーセントを超す連続4週トップの視聴率を誇っている。私自身の水木しげるブームもまだまだ続きそうだ。
               (2010・8・12)

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