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2011年2月

No.358 (Web版8号)3

ラッチャング制作日誌                  新村佳三

「君は見たか?探偵オペラを!」

私信・・「渡辺ユリアさんへ、SF大会の時の写真、どうもありがとうございました。秋の名古屋コミティアのときもどうも。残念ながらそのときには、ルーナティックも含めなかなか本は売れませんでしたが、めげずに頑張りますので、3月13日の名古屋コミティアも参加予定ですから、その時にでも個人誌の新刊をお預かり出来れば。」

実はすでにこの間、最終回を迎えてしまったのだが、深夜に「探偵オペラ」なるアニメ番組が密かなる人気だったとしたら。                 

この番組、かつて話題になった「コードギアス」とよく似た構造のストーリーなのだが。
コードギアスは「ギアス」と呼ばれる「能力」を持った者達の戦いを描いた物語だったのだが、「探偵オペラ」も同様に「トイズ」と呼ばれる能力を持った者同士の戦いを描いている。「トイズ」の能力は一様ではなく、サイコキネシスだったり、変身能力だったり、発火能力だったり、怪力だったり、超知覚・・(何か、サイボーグかXメンみたいな気もするが・・)等だ。              そんな能力者同士の戦いが、近未来の「ヨコハマ」を舞台に展開してゆく。能力を得た者の中で、その魔力に抗うことが出来なかった者がいわゆるダークサイドに堕ち、犯罪者となり、「怪盗」と呼ばれるようになる。それに対抗すべく、法と秩序の側に立った能力者を「探偵」と呼ぶ世界。恐るべき「トイズ」の力を振るう「怪盗」に伍する能力を持つ「探偵」になる為の「学校」が存在し、主人公達はそこへ入学する。                       
そして、その学校で、かつて「能力者」だった「コバヤシ」から指導を受け、一人前の「能力者」もとい「探偵」となるべく奮闘する。やがて「コバヤシ」の元を離れ、「怪盗」に立ち向かうのだが・・・                  

ある事故が原因で主人公達は「能力」を失ってしまい・・         

「能力」を失ってしまった者は「探偵」の資格を失ってしまう・・      

まだ、これからというところで、第1シーズンは終ってしまった。       
「探偵オペラ」というタイトルは、別に歌を歌うワケではなくて、スペースオペラ、ホースオペラと同様の意味と考えるべきらしい。そういうわけで探偵物なのだが、どちらかというと推理よりも活劇重視の色合いが濃い。ストーリーは途中で終っているので、是非第2シーズンを制作してもらいたい。       

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No.358 (Web版8号)2

 最近読んだマンガの事などいろいろ

 by 渡辺 ユリア

 皆様、今日は。そして新年おめでとうございます。まず、マンガの話。梶尾真治原作、アサミ・マート画の “クロノス・ジョウンターの伝説”  クロノス、というのは時間を司る神の事。ジョウンター、は接続、接合という意味らしいです。4年くらい前に原作を読んだ事があります。あっさりした印象の表紙とそのタイトルに惹かれてその本を手に取ったのです。まず、読みやすかったです。梶尾さんが小説の素材によく使われているタイムマシンの出てくるロマンスの話であると思っています。そしてその小説を読んでいると心が暖かくなった事もあります。
 では、マンガのほう。アサミ・マートさんは月刊リュウで “木造迷宮” を連載されています。こちらのほうの絵柄とストーリーは、私はけっこう気にいっています。ふわっとしたペンタッチと絵柄と人と人との出会いや毎日の何気ない仕草が何故かあったかいのです。そして “クロノス〜” のマンガのほう。表紙を見てびっくり。この青年が主人公の吹原さんなんだ、と。 “木造迷宮”のほうでは、あんまり青年が出ていないので新鮮でした。そして花屋の店員の来美子さんは暖かい感じの素朴な若い女性という印象。主要な小道具のペンダントは、こうやって絵になると何と輝いてみえるでしょうか。そしてクロノス・ジョウンターの装置が絵になって私たちの前に出た事によって絵というのはすごい力があるものだ、と思いました。
 次に連載中の “テガミバチ” 浅田弘幸 作。これはファンタジーと最初に思っていたら、何やらその作品世界は複雑になっていきました。人工太陽、飛行船、精霊琥珀、心弾など。次第にSFっぽくなっていったと思います。琥珀、というのは地球でも何らかの昆虫が石や岩の中に入りこんで、それが変化して宝石になるようです。そして “テガミバチ”の世界の人々は悲惨だな、と思っています。次回が待ち遠しい物語です。

 ところでルーナティックの特集の事ですが、エドモント・ハミルトン特集をしてはどうでしょうか。図書館で奇想コレクションの短編集 “フェッセンデンの宇宙” を借りてきているので、ひとつひとつの短編について感想を書きたいと思っています。

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No.358 (Web版8号)1

 SF essay (173回)

 川瀬広保


渡辺ユリアさんへ

「SFファン48年」の感想と日本SF大会の時の写真、また御手紙、ありがとうございました。また、「妖精たちの集い」も拝受しました。
 感想は、また、近いうちにこの紙上で。とりあえず、お礼まで。

 今月の話題はまず、水木しげるさんの文化功労者受賞についてから。
吉永さゆりや王貞治らとまじって、水木しげるの名前が入っていたことを知って、「すばらしい!」と思った。
 それにしても、文化勲章受章者にも文化功労者にも、漫画家や作家などが選出されることはほとんどない。マンガの天才、手塚治虫も藤子・F・不二雄も、ショートショートの神様、星新一も受賞していない。いろいろ見てみると、ちゃんとした選出基準があるわけではないということだ。国民栄誉賞についても、いかにもあいまいだ。
 試みに、過去の文化功労者の一覧を見てみたところ、私の知っている名前には、海音寺潮五郎、井上靖、遠藤周作、金田一春彦、小沢征爾などで、漫画家やSF作家らの名前はいっさい見えない。
 そんななかにあって、今回の水木しげるさんの受賞は漫画やSFを愛する者にとってよろこばしいかぎりのニュースだった。
 また、国が授ける賞としては、漫画やSFという分野は、まだまだ認められていないということなのかという気持ちもした。
 水木しげるのコメント、「もっと上の賞はないの?」も「私は賞をもらうといつも戦死した同僚のことを考えるのですよ。私がもらっていいのかと・・・」という言葉はどちらも本音を語っているのだろうと思う。

 そんなことを考えていたら、今年の流行語大賞にも、「ゲゲゲの〜」が選ばれた。いかに今年、「ゲゲゲの女房」がきっかけとなって、水木しげるが再評価、流行になったかということだろう。

 映画「運命のボタン」をレンタルで借りてきて、見た。それも二回見た。
 最新の映画。リチャード・マシスン原作。キャメロン・デイアス主演。「アイアムレジェンド」のマシスンである。
 ボタンを押すと100万ドル(1億円)もらえる。しかし、どこかのだれかが死ぬ。決断は24時間以内にしなくてはいけない。
 アーサー・C・クラークの有名な言葉「十分に発達した科学は魔法と見分けがつかない」が出てきた。怪しげな、顔が壊れた男が持ってきた装置は、見た目には何もない。「夫」が中を開けてみても、からっぽだった。
 ただで、大金をもらえるということはない。いちど押したボタンは戻せない。ボタンを押してしまった「妻」の足が高価な義足でよくなっても、その見返りに息子は盲目になり、物を言えなくなってしまう。
 夫は「別の世界」へ1時間ほど行った。そこには「従業員」がたくさんいた。自己への欲望のために、他者を犠牲にはできない。そうするものには、見返りが来る。
 別のだれかがボタンを押すと同時に、「妻」は夫の銃で死ぬ。
 原作は、リチャード・マシスン『ボタン、ボタン』。原作は文庫でわずか20頁ほど。
 映画とはだいぶ違う。妻がボタンを押したため、夫が死ぬことになっている。
 教師の「妻」に足を見せろと言った、男子学生は「従業員」だったのか?
 夫のアーサー・ルイスという名前はアーサー・C・クラークからとったのか?
 夫は、火星探査機搭載のカメラの設計を担当していたほどの有能な技術者であり、妻も有能な教員なのに、教員割引はカットされるし、夫も首になってしまう。
 「鼻血」の意味がよくわからない。ラングリー・リサーチ・センターとは何なのか。
 顔の半分がない謎の男、リチャードは、どうして、またどんな事故にあったのか、語られていない。ただ、「従業員」だという。食欲とは無縁という謎の言葉も出てくる。
 「夫」は「妻」ノーマの義足作りをしてあげるが、「夫」は夢だった宇宙飛行士を不合格になる。サルトル「出口なし」の芝居を夫婦で見に行く。謎の箱に翻弄される人間の心理がよく描かれている。
 登場人物の「妻」以外のいろいろな人がボタンを押している。
 映画が始まって32分後に妻はボタンを押してしまう。
 その瞬間、だれかが撃たれ、死ぬ。
 息子は「驚くべきSFの世界」という雑誌を女の子に見せる場面があるが、この字幕は「アスタウンデイング・サイエンス・フィクション」とするべきであっただろう。
 「愚か者の日」?そういうSFがあるらしい。
 息子が女の子に自慢そうに見せてあげている「パパ」が集めている火星のことについてのあれこれがある部屋の中に、「高度に発達した技術は魔術と見分けがつかない」というアーサー・C・クラークの言葉が飾ってある。
 つまり、この映画の制作者はあのような謎の箱も将来はあり得るといいたいのか?
 アーサー・C・クラークは「パパの知り合い」だと言っていたが、ほんとうかと思った。このクラークの有名な言葉が出てくる映画は初めて見た。
 「鼻血」が出る人は、「犠牲者」なのか、「従業員」なのか?「出口なし」の落書きは何を示しているのか?
 デイナも鼻血が出る。彼女は「思い出せない」の言葉を発する。鼻血を出す人は、一度あっちの世界へ行った人なのか?
 「何もの」かが人類を「善」に導くために試練を与えようとずっとしていたのか?
 プールが向こうの世界への入り口になっている。謎の男、スチュワードが働いている「場所」はどこにあるのか?「人的資源」とはどういう意味なのか?つまり、己の欲のためにボタンを押さないような人のみ集めるのか?
 やはり人類を試していたのだ。救済の道は1つだけ。
 従業員用の図書館で、「魔術と見分けがつかない」という言葉が出てきた。
 稲妻を支配するものと連携している。
 他の二つは永遠の破滅。この映画は謎の言葉が多い。
 夫は別世界へ、妻はスチュワードに手を取られて、ベッドの上にいる。
 バイキングによる火星からの最初の送信後、スチュワードは稲妻に打たれた。彼は、別の「何か」になった。彼は病院に運ばれたが、死亡した。その後、彼は、蘇生し、異様に笑っていた。そして、驚くべき能力を示し始めた。
 通常の10倍の早さで傷が治る。細胞変性が停止する。
 この世の命は仮のもの。この試みが終わったら、「雇い主」にデータを渡す。雇い主には奇妙なユーモアがある。ボタンを押さなければ、試みもない。
 押さぬものが多ければ、試みは終わる。だが、まだ当分試みは続く。
 他者の利益のため、己の欲望を犠牲にできないなら、君たちに生き残る資格はないという厳しい言葉が出てくる。その時は、雇い主が人類の絶滅を実行する。ついに息子のウオルターは連れていかれてしまう。
 「人的資源開発マニュアル」という言葉は何を示しているのか。スチュワードの「君たちには尊敬と賞賛の念を抱いている」という言葉はどういう意味か。「希望を与えられた」とはどういうことなのか。
 ボタンを押したために、息子が死んだかもしれないところを、目と耳がだめになっただけという意味なのか?
ただの「器」(ヴェッセル)とはどういう意味か。夫や妻の生涯の無事とお金は、保証されるが、息子の障害は治らない。
 息子をとるか、妻をとるか?お金をとるか、他者の死をとるか?
 妻の「私は赦されるのでしょうか」という質問に、「赦されるかどうかは、わからない。サルトルの言葉が慰めになるだろう」という返事が返ってくる。

 作者、マシスンと映画製作者の言いたいことは「犠牲がなくては生きてはいけないということ、また人生において両方を取るなということ」なのだろうか。
 「あなたもボタンを押しますか」という問いには、「私は押さない。たとえ、職を失い、貧乏になっても。家族でつつましやかに生きて行けば幸せだ」と答える。
 結局、2回も見てしまった!!
 自分の利益のために、他者を犠牲にするなということだ。
 発売されたら買って、もう一度見てもいいと思う。
 お勧めの映画だ。

 最後に、金星探査機あかつきは金星周回軌道に入らなかったけれど、失敗とは思いたくない。6年後にはきっとうまくいくだろう。エッセイやメッセージを送ったひとりとして、引き続き応援したい。
                     (2010・12・11)

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