No.359 (Web版9号)1
SPACEBATTLESHIPヤマト公開される
中村達彦
アニメ「宇宙戦艦ヤマト」実写版の「SPACEBATTLESHIP ヤマト」が公開された。「ALLWAYS三丁目の夕日」の山崎貴監督がメガホンをとり、パート1と続編「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」をベースにしつつ、新解釈で作った。
正直、実写版なんて見たくなかったが、怖いもの見たさもあり足を運んで見た。何だかんだ言いながらヤマトは好きなのだ。
冒頭、地球艦隊とガミラス艦隊との会戦、荒廃した地下都市の状況、飛来する謎のカプセルと続くSFマインドによる映像は悪くは無かった。宇宙空間を進む巨大戦艦の雄姿、波動砲発射やブラックタイガーの空戦などアニメに見劣りしないシーンが見られた。古代の相棒でロボットのアナライザーが意外なかたちで出演したが、ぶっ飛びである(まさにト●ン●フォ●●ー)。
ヤマトがイスカンダルへ向かう展開は同じだが、新設定が加えられ、ある秘密が隠されている。いろいろ新解釈やアイデアで肉づけされているが、、意外なところで、旧作ファンを「おっ!」と思わせるCVやシーンがある。例えば
ガミラス(=デスラー)、イスカンダル(=スターシャ)の正体は改変されているが、スターシャがヤマト特有のエコーに乗って語りかけるところ、デスラーが「ヤマトの諸君」と語りかけるところは身震いさせられた。
大敵との戦いより、艦内の人間ドラマに重点が置かれている。
木村拓哉演じる古代進を中心に、沖田艦長との師弟関係、兄の守との絆、親友でかつての相棒島大介との友情、旧部下ブラックタイガー隊や窮地を救った斉藤らとの戦友関係、先輩格の真田技師長や徳川機関長、姉御肌の佐渡先生との繋がり、何より最初は対立していたが、やがて深い関係で結ばれる女性パイロット森雪との話がいかんなく描かれている。特に黒木メイサ演じる彼女は、アニメ版と異なるキャラクターだが、映画が終わるまでにはこれも良しと認知できるまでになった。
話の中盤で、強引にヤマト艦長代理を引き継がされた古代が、当初は火星会戦で兄を見殺しにしたと沖田を憎んでいたが、敵の攻撃でやむなく旧知の部下を見殺しにしなくてはいけない苦渋の決断を下すのは、映画のオリジナルだが、逆にアニメでも描かれるべきであったエピソードである。
正直、この実写版ヤマトは褒められることばかりではない。
有名な錨のマークのヤマト乗組員制服やヘルメット、第1艦橋各座席の装備など、アニメ版に比べていささか見劣りする点がある。VFX(ビジュアル・エフェクツ)による特撮効果や、封切り直後ぎりぎりまでしつこく続いた宣伝効果にお金をかけすぎたのだろうか?
また木村拓哉はじめ有名な俳優を多く起用したが、なんとなくバラエティ番組の感があった。キムタクの演技もまあ‥‥‥。
更に惜しむらくは、古代がガミラス本星に達した直後に決意を述べるシーンがあり、その後、決戦へと突入していく。盛り上がっていくが、クライマックスや脱出のシーンの構成がいささか粗になっている。加えて、ここで明かされたガミラス侵略の理由も説得力に欠けている。
結末、最後の対決で古代とヤマトが辿る運命について、私は「何とかならなかったか?」と納得し難いものがある。展開は、一応筋が通っている。でもなあと、心の中でせめぎあう。人によって受け取り方が違うだろうが、個人的には最後の奇跡を想像していた。それこそ、私が子供の頃、ヤマトが大好きになった理由なのだが‥‥‥。
この映画は「惑星大戦争」のリメイクもしくは「ローレライ」+「日本沈没」(平成版)+「バトルスターギャラクティカ」の感ある(ヤマトがガミラス本星で敢行する作戦は、ギャラクティカにそのままのシーンがあるそうだ)。
いろいろ欠点もある「SPACEBATTLESHIP ヤマト」だが、決してダメな作品ではない。「ヤマトⅢ」以降のヤマト諸作品では一番面白かった。
少なくとも山崎監督以外で、これ以上うまく撮れる人がいるだろうか?
昨年末には、シリーズの続編でもある「宇宙戦艦ヤマト復活編」が、今年11月に事故死した西崎プロデューサーにより封切りにこぎつけた。
もっとも「26年かけて出来た続編がこれかよ」と突っ込みたくなるほど、あちこちにあら突込みが多かった。せめてシナリオがしっかりしていれば。
今後、ヤマトは、「復活編」ディレクターズカット版の制作やテレビ版の制作、映画続編の企画を検討中とのこと。確かにこれで終わるのは消化不良である。スタッフを入れ替えて再チャレンジしてもらいたい。
今回の作品も大ヒットには至らないだろうが、これをきっかけに新しいヤマト、新しい宇宙SFものが誕生することを祈ってやまない。
ヤマトより、その基本的ストーリーベースから、新たな作品が作られるべきかもしれない。
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