SF essay (174回)
川瀬広保
今回の巨大地震で被災されたすべての方々に謹んでお見舞いを申し上げます。また、一日も早い復興をお祈りしています。
2011年3月11日、午後2時30分ごろ、私は自宅でテレビを見ていた。
どの局もつまらない番組だと思っていたら、NHK教育テレビが健康番組をやっていた。何か新しいことを教えてくれるかもしれないと思って見ていたら、午後2時46分、「緊急地震情報」を伝え始めた。その10秒後ぐらいに、今までに体験したことがないような揺れを感じ始めた。これは大きい!愛知県にいる娘から真っ先にメールが入った。
「結構揺れたら?」
東北三陸沖でM7・9の地震が起こって、大津波警報が出たとアナウンサーのうわずった声がひっきりなしに言い始めた。
そのうち、M8・8、翌日にはM9・0にまで変更され、世界でも例を見ないような巨大地震が起こったということがわかった。
その後の10日間はテレビにくぎ付けだった。毎日ほとんど一日中NHKを見ていた。あまりにリアルな津波の映像に息をのんだ。
翌日から、津波の惨状を知るにつけ、何かしなくてはといたたまれなくなった。結局一個人ができることは、義援金を送ることだった。
半月たった現在(3月30日)、こうして事の顛末を記しておこうという気持ちになった。
まず、いくつかの疑問をあげてみる。
疑問1 どうして日本政府(あるいは東京電力は)地震発生の翌日、アメリカの原子炉冷却剤の提供を断ったのか。
疑問2 どうして、恥も外聞も捨てて、チェルノブイリのように、石棺で遮断してしまおうとしないのか。
疑問3 テレビや新聞は、外国からの支援、援助のニュースをなぜあまり、伝えないのか。
疑問4 産経や読売は政府批判を書くけれど、朝日はなぜ、あまり書かないのか。
などと、疑問がつきない。
もう少し、早く対応していれば、避難所に避難した人が亡くなるというような二次災害、自衛隊員が亡くなるというような三次災害は少なくなったであろう。
映画「2012」や「日本沈没」への序章でなければいいがと思う。
SFや映画であるうちはいいけれど、現実になったら逃げることもできない。
幸い、ここ浜松は計画停電の範囲にはなく、富士宮付近で起きた地震の被害もなかった。(揺れたときは、恐ろしかった!)
放射能漏れの恐ろしさは、映画やSFでの話どころではない。
食糧等の備蓄もすぐに始めた。ところが、かなり早く反応したつもりでも、乾電池の単一、単二は入手できない。米はしばらくしたら並ぶようになった。
備蓄は人間の心理だ。安全だとか、直ちに健康に影響はないなどと言えば言うほど、食糧を買い、家に閉じこもる。この地震・津波のニュースを見聞きすればするほど、人間は親を選べないが、死に方も選べないと思っている。
映画「クリスマス・キャロル」
これは西洋版「十王讃歎鈔」だ。仏教では、生前におまえはどう生きたかと裁きを受けることになっている。
レンタルで借り、その後買って、今までに合計7〜8回見ている。
字幕を日本語にしたり、また英語にしたりして、あれこれ考えながら、この映画を楽しんでいる。
映像もよくできていて、感心させられる。おそらく中学生ぐらいから、大人まで老若男女を問わず、考えさせられるものを持っている。エベネザー・スクルージというおよそ実在しない変わった名前を持つ、徹底した偏屈で、守銭奴の主人公が精霊たちに導かれて、話の終りにはだれよりもクリスマスを祝う、ロンドン一の好人物になったというエンディング、またGod bless us,everyone!という最後の言葉には宗教の違いを超えて、見る者を深く考えさせる素晴らしいお勧めの映画だ。
精霊たちは、みな「善意」だ。この世に生きたすべての人を導こうという「善意」があるからこそ、見ていられる。
これは、日本の仏教の教えにも通低するものがあるのではないだろうか。
洋の東西を問わず、この世でいかに生きたかが、未来へとつながっている。スクルージは金のことしか考えていず、わずかな寄付もしなかった。その結果、皆に嫌われ、ほぼだれひとり自分の葬式にさえ来ないという痛烈な「未来」を見させられる。
ウオルト・デイズニー映画にかかると、映画化が難しい原作もこのようにアクションに満ちたリアルな映像になった。
万人にお勧めの傑作です。
銀河系から130億光年のかなたへ「ファー・アウト」
昔、中学生だった私は鈴木敬信著『天体写真集』を買って、毎日毎日、繰り返して見ながら、星雲や星団の名前を覚えた。見るのに飽きるということはなかった。その写真集はもちろん白黒だった。あれから50年近くが過ぎ、その写真集はまだ書庫に保存してある。
時代は進んで、ハッブル宇宙望遠鏡等で撮られた数々のすばらしい、鮮明な宇宙写真を見ていると、悠久の宇宙空間に漂っているかのような錯覚にとらわれ、いつまでも見ていたくなる。日常生活の些末なことはどうでもよくなってくる。
人間はいかに小さな存在か。宇宙に対する畏敬の念を呼び起こす写真の数々である。とりわけ、見開き計4ページ分の銀河系やアンドロメダ星雲などの詳細な写真には圧倒される。
テレビやインターネットを一時やめて、時にはこうした宇宙写真を見て、想いをめぐらすのも、忙しい現代人には必要であろう。
ちょっとした大金を支払わなければならないが、それだけの価値のある1冊である。『フル・ムーン』『ビヨンド』ともに万人にお勧めです。
(2011・4・3)
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