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No.368 (Web版18号)2

SF essay(180回)

川瀬広保


「小松左京を宇宙へ送り出す会」へ行ってきました!

 2011年11月29日、午後1時30分から、東京紀尾井町のホテルニューオータニで「小松左京を宇宙へ送り出す会」が開かれるという案内状を受け取ったので、行ってきた。
 この会は、小松左京研究会の会員だけが参加できる。私がこの研究会の会員になったきっかけは、2007年に開かれたワールドコンに出かけていったとき、ディーラーズルームの一角に、小松左京研究会のブースを発見したからだ。
 そこには、まだ見ていない「小松左京マガジン」の新号が並べられてあった。浜松の谷島屋には、「小松左京マガジン」は並べられていないので、こういうときに、入手しようと3冊ほど購入した。帰宅してから、ゆっくり見ていると、会員になれば確実に入手できますと書いてあったので、遅ればせながら入会させてもらおうと思った。
 私は、小松左京に二回、会ったことがある。一回目は、TOKONⅣでサインをもらった時、二回目は浜松に講演で来られた時、終わってから名刺をいただいた。
 小松左京は、『虚無回廊』が中断したあたりから、近況がわからなくなってきていた。時々、思いついたように買った「小松左京マガジン」で、以前にくらべだいぶやせられたとか、ワールドコンでは車いすに乗り、マイクを使って話されていたが、うまく聞き取れなかったりなどと、若いころのように元気な小松左京でなくなってきているのは、少しずつわかっていた。
 私は、「東海SFの会」や「宇宙塵」の会員だが、それ以外にSFの会に入っていないことを思い出し、日本SF界の巨人である小松左京のこの会に、遅ればせながら入会しようと思った。
 それから4年、早すぎる小松左京逝去のニュースが流れて、この送る会案内が私のところにも来たというわけだ。
 行こうかどうしようか、かなり迷った。
 文字通り、日本SFをブルドーザーのように牽引した小松左京のご冥福を祈り、宇宙へ送り出すためには、一SFファンとして、やはり参加しようと、出かけることにした。
 この前、東京に来たのは、柴野拓美さんを偲ぶ会の時だったなあなどと思いながら、東京駅に着くと、工事中で丸の内口に着くのに、ちょっとまごついてしまった。早めに出かけたが、ニューオータニの鳳凰の間に着くともうたくさんの参加者が開場を待っているところだった。
 すぐに、開場になり、入口でウィスキーのコップをもらう。中にはすでに見たことがあるような写真が各所に飾られている。中央に大きく、「小松左京を宇宙へ送り出す会」と飾られている。協賛の出版社の中に、早川書房がないことに、違和感を覚える。遺影ならぬ生頼範義による小松左京の肖像画が飾られてあった。まるで、そこに小松左京本人がいるみたいに迫力のある本人そっくりの絵である。

 やがて、開会。
 まず、発起人の一人である松本零士さんがあいさつ。
 小松左京がマンガを描いていたときの話から始まった。ビデオメッセージには、由美かおるとか、三浦友和などの有名人がいた。小松左京の映画化で関係のあった人たちである。小松左京の一生をうまくまとめたビデオ画像を見る。そして、いよいよ毛利衛さんのカウントダウンによる小松ロケットの打ち上げ。「笑顔」を送った人たちがどれだけいたのか知らないが、それらの人たちの顔までは識別できなかった。
 やがて、献杯。テーブルごとに置かれていたビールをつぎあいながら、献杯する。約40分ぐらい、会場内をうろうろする。私も「肖像画」に他の人たちがしたように、タバコを一本、ささげてきた。
 会は時間通り進み、最後に小松左京作詞「青い地球の歌」(山本直純作曲)を歌って、終了の宣言があった。みなさん、まだ名残おしげに、残っていた。会場入り口に徳間書店が新刊を並べていたので、『虚無回廊』と『追悼 さようなら小松左京 完全読本』を購入。
 最後に、もう一度、「肖像画」を写して、会場をあとにした。
 タクシーで、東京駅に戻り、新幹線に乗る。ビールを飲みながら、さっき買った読本に目を通す。
 とうとう小松左京も亡くなってしまったのか、いや、彼の膨大な作品は残っているではないか、などとあれこれ考えながら浜松へ戻る。
 日本SF界の第一世代作家たちが、次々と他界していく。私も、もしかしたら、SFファン第一世代なのかと最近、思うようになった。こうして送る会について、書き残すことは意義があることだと思っている。
 さて、私には、未読の小松左京の本を読むという楽しみが残っている。
                  (2011・12・2) 


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