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2012年6月

No.372 (Web版22号)2

SF essay(187回)

川瀬広保


電子書籍考

 以前から、ほしいと思っていたソニーのリーダーをとうとう買った。
そして、リーダーズ・ストアからインターネットを通して何冊か購入してみた。
 紙の本と電子書籍ではいろいろ差があることがわかった。
 リーダーの良いところは、老眼の人には文字を大きくすることができるということだ。
最近の本はどういうわけか、表紙のタイトルやら著者名やら翻訳者名などの文字が小さい。
つまり、若い人にはその方が格好いいと思われるからだろう。
 しかし、人間歳を取ってくると、誰しも老眼になり、細かい文字は読めない。そういう一点をとってみても、電子書籍はいいと思う。次によいことは、小さな器械に1400冊も「本」が入ってしまうということだ。だから、わざわざ書斎へ行って、探す必要がない。「吾輩は猫である」(上下)も「山椒魚戦争」も「宇宙戦争」も「タイムマシン」もみんな「一冊」の中にある。非常に便利だ。
 だが。
 だが、電子書籍をリーダーに入れてみて、「どうかな?」と思うことがいくつか出てきた。

1 本を読んでいる気がしない。
2 ディスプレイ上で文字を読んでいるだけだ。
3 好きなSFのタイトルは昔のものばかりだ。
4 早川書房のSFは見当たらない。創元文庫は昔のものがほんの少し。
5 著作権等の関係だろうが、年数がたって権利が切れたようなタイトルしか見当
  たらない。その中でも、わずかだけ、紙の本と電子書籍の同時発売というもの
  がある。
6 どういうわけか、電子書籍には著者あとがきとか、訳者あとがきが入れられて
  いない。したがって、これはいったいどの「宇宙戦争」だろうと惑わされる。

 紙の本も買い、電子書籍も買うという二重のことをやっていたりする。
 書庫の2万冊の本が、ソニーのリーダーにすべて入ってしまえば、家の中はすっきりする。それでいいのかどうかは未知数だ。
 これまでに、インターネットを通じて購入したのは以下の通り。

「宇宙船ビーグル号の冒険」「山椒魚戦争」「モロー博士の島」「人民は弱し官吏は強し」「きまぐれロボット」「日本沈没(上)(下)」「宇宙戦争」「きまぐれ星のメモ」「ドウエル教授の首」「タイム・マシン」「注文の多い料理店」「吾輩は猫である(上)(下)」「ストレスが自信に変わる本」
 全部、紙の本としてすでに買って、読んだものばかりだ。結局、一番多くこの電子書籍でまた読んだのは、「吾輩は猫である」だった。
 最新のリーダーズ・ストアからのメールによると、藤子・不二雄Aの「まんが道」などが電子書籍として、発売されるとのことだ。
 たぶん私は、これから紙の本も買い、電子書籍も自分にとって興味のあるものが出たら買うだろう。

 あれこれ言っても、時代は先へと進む。私の頭の中にひらめくのは、次の二作だ。ひとつは、ブラッドベリの「華氏451度」。もうひとつは、星新一のショートショート「景品」。
 消防士の役割が、火事を消すのではなく、本を隠し持っている人の家から、本を見つけ出して、燃やして、消し去るという未来社会。
 また、本というものが何かの景品でしか手に入らないというどちらも痛烈に未来社会を風刺した作品であった。
 いつか「本」の未来は、この二作のようになるのだろうか。
                     (2012・4・20)

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No.372 (Web版22号)1

「はまなこん2012」のお知らせ


  今年の11月10日(土)11日(日)に、
  新居の清風荘にて
  「はまなこん2012」が開催されます。
  内容、費用、企画、タイムテーブル
  などの詳細は
  今後PM等で発表していきます。
  久しぶりのはまなこんですので
  みなさまのできるだけ多くのご参加を
  お待ちしています。
  会員のみなさまのご同友の方にも
  ぜひお知らせしてみてください。
  また企画も募集しております。
  「はまなこん2012」についての
  ご意見ご希望がございましたら
  PMや掲示板などをご利用してください。

         はまなこん2012実行委員会

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No.371 (Web版21号)3

SF essay (186回)

川瀬広保

 ハヤカワSFシリーズと新☆ハヤカワ・SF・シリーズ

 SFファンへの原点は、何回も書いたがいくつかある。
 瀬川昌男の「白鳥座61番星」
 SFマガジン第53号
 星新一「夢魔の標的」
 SFファンへの元となったのは、
 鈴木敬信「天体写真集」
 野尻抱影「星と伝説」 
など。
 そして、早川書房から発行されていたハヤカワSFシリーズである。
 昔、高校生だったころ、谷島屋や文泉堂へよく行って、ハヤカワSFシリーズの新刊を買い求めた。
 そのころは毎週木曜日がハヤカワSFシリーズの新刊の出る日だった。定価が160円とか220円など、古き良き時代であった。
 銀背にくっきりと赤でSFのマーク。箱に入っていた。箱はカバーの代わりだった。「お客様にきれいなままの本をお届けしたくて、こんな箱をつくってみました。いわば、包装紙代わりです。お買い上げ後はお捨てください」とかいうような言葉が書き添えてあった。
 もちろん、簡単には捨てられず、買ってもしばらくはその箱に入れていた。
 その特別の想いのあるハヤカワSFシリーズが、50年もたって、新☆ハヤカワ・SF・シリーズとなって、復活した。
 以前のシリーズを知らない人も、そのシリーズを持っていない人も多いだろう。
 しかし、私にとっては、いつまでも捨てられず大事に書庫に保管してある。

 そのころのSFマガジンの裏表紙の裏を見ながら、タイトルを列挙してみよう。
「盗まれた街」「ドノヴァンの脳髄」「火星人ゴー・ホーム」「宇宙人フライデイ」「吸血鬼」「21世紀潜水艦」「クリスマス・イヴ」「宇宙の妖怪たち」「大真空」「宇宙病地帯」「時間溶解機」
 このあたりまでは、そのころ、まだ、私が出会わなかった書名である。
 だから、私はまだ「宇宙人フライデイ」「宇宙病地帯」「時間溶解機」にはお目にかかったことがない。復刊されなければ、古書店で見つけなければ(ほとんど行かないが)、SF大会のオークションで見つけなければ、見ることもなしに永遠にうずもれていくだろう。
 そして、「宇宙の眼」「渦まく谺」「神経繊維」「アトムの子ら」と続く。その次が有名な「鋼鉄都市」。
 これで、完全に私はこのシリーズにはまった。
 毎週、次の本が出るのが待ち遠しかった。
とにかく、胸躍るタイトルがひしめいていた。
やがて、いつしか、この叢書は文庫にとってかわられた。
 ここで、はっきり言えることは、私は、このシリーズから海外SFへ入って行ったということだ。もし、この叢書がなければ、われわれは海外SFの面白さ、素晴らしさを知らずに何年もそのままになっていただろうということだ。
 そんな想いの強いシリーズが復刊された。
 だが、結論を最初に言えば、この二つのシリーズは実はやはり別物であるということだった。
 例えて言えば、藤子・F・不二雄亡き後のドラえもん映画に違和感があるように。
 過ぎ去った古き良き時代を懐かしむのもいいのだが、この新シリーズを拍手を持って迎え入れなければいけないのかもしれない。
 ここで疑問がある。
 青春のハヤカワSF文庫とこの新シリーズとはどう違うのだろう。どのようにタイトルを選び分けるのだろう。
 そのうち、だんだんわかっていくのだろう。

 「猿の惑星 ジェネシス 創世記」をツタヤで借りてきて、見た。実は、それより前にJALの飛行機の中で見たのだが、画面が小さかったので、あまり強い印象はなかった。
 今回、もう一度見てみて、5点満点の4点ぐらいかなと思った。前半はどうということはない。後半が面白い。猿の人間への反乱が描かれている。元の「猿の惑星」を知っている人には、何だこれは、という印象がある。
 シーザーがアルツハイマーを直す新薬によって、人間化してとうとう「しゃべる」場面が面白かった。
 まだ見ていない人は、見てもいいかもしれない。
                     (2012・3・9)

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No.371 (Web版21号)2

SF essay (185回)

川瀬広保

 ドラえもん映画再考

 そこで、まだ見ていなかった、あるいは、買っていなかった映画を求めて、ドラ映画を買って今見ている。もう昔見たものもまた見て喜んでいる。

 例えば、「のびたの日本誕生」では、のびたが北極の吹雪のなかで、凍えて死にそうになる場面で、ママが夢に現れ、ラーメンのおつゆをこぼしてしまう場面がある。
 これは、原作ではラーメンどんぶりに足が生えて逃げていくようになっている。映画では、ママがおつゆを捨ててしまう。「だって、いつも飲まないでしょ?」と言いながら。
 つまり、原作と映画では少し、変えてあるのである。
 他にも、見ていなかった映画がいくつかあった。
 私としては、実にうかつであった。
 しかし、逆に考えればまだ見ていなかったドラえもん映画を何作か見られるというしあわせが、今になって出現してきた!

 「のび太と恐竜」からもう30年になるとのことだ。作者、藤子・F・不二雄が亡くなり、声優たちも代わって、「絵」や「声」が変わると、違和感があって何となく遠ざかっていたのかもしれない。

 大山のぶよらなどのわれわれになじんだ声優たちと藤子・F・不二雄描く「絵」によるドラ映画は次のタイトルである。

のび太の恐竜
のび太の宇宙開拓史
のび太の大魔境
のび太のドラビアンナイト
のび太と雲の王国
のび太とブリキの迷宮
のび太とアニマル惑星
のび太の海底鬼岩城
のび太の魔界大冒険
のび太の宇宙小戦争
のび太と鉄人兵団
のび太と竜の騎士
のび太のパラレル西遊記
のび太の日本誕生
のび太と夢幻三剣士
のび太の創世日記
のび太と銀河超特急
のび太のねじまき都市冒険記
のび太の南海大冒険
のび太のワンニャン時空伝
のび太の宇宙漂流記
のび太の太陽王伝説
のび太と翼の勇者たち
のび太とロボット王国
のび太のふしぎ風使い

 最近の映画では、それまでなかったようなセリフが出てくる。
 スネオ「ポケットのないドラえもんなんて、ただの中古ロボットじゃないか!」
これは、ドラえもんにとってはきつい言葉だ。
 また、ドラえもんのポケットが盗まれるという設定が見られるようになっている。
 最後は、ハッピーエンドだから、安心して見ていられるのだが。
 私自身を含めて、これだけ老若男女を問わず、また世代を越えて人気が続いているドラえもんおよびその周囲のキャラクターを生み出した藤子・F・不二雄はやはり天才ではないだろうか。
 ドラえもん誕生まで、あと100年。3月には新作映画が公開される。暇とお金がなくても、時間を作って、お金をねん出して見に行こうかと思っている。「絵」と「声」に違和感を覚えるなどともう言わずに。

                   (2012・2・19)

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