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No.371 (Web版21号)3

SF essay (186回)

川瀬広保

 ハヤカワSFシリーズと新☆ハヤカワ・SF・シリーズ

 SFファンへの原点は、何回も書いたがいくつかある。
 瀬川昌男の「白鳥座61番星」
 SFマガジン第53号
 星新一「夢魔の標的」
 SFファンへの元となったのは、
 鈴木敬信「天体写真集」
 野尻抱影「星と伝説」 
など。
 そして、早川書房から発行されていたハヤカワSFシリーズである。
 昔、高校生だったころ、谷島屋や文泉堂へよく行って、ハヤカワSFシリーズの新刊を買い求めた。
 そのころは毎週木曜日がハヤカワSFシリーズの新刊の出る日だった。定価が160円とか220円など、古き良き時代であった。
 銀背にくっきりと赤でSFのマーク。箱に入っていた。箱はカバーの代わりだった。「お客様にきれいなままの本をお届けしたくて、こんな箱をつくってみました。いわば、包装紙代わりです。お買い上げ後はお捨てください」とかいうような言葉が書き添えてあった。
 もちろん、簡単には捨てられず、買ってもしばらくはその箱に入れていた。
 その特別の想いのあるハヤカワSFシリーズが、50年もたって、新☆ハヤカワ・SF・シリーズとなって、復活した。
 以前のシリーズを知らない人も、そのシリーズを持っていない人も多いだろう。
 しかし、私にとっては、いつまでも捨てられず大事に書庫に保管してある。

 そのころのSFマガジンの裏表紙の裏を見ながら、タイトルを列挙してみよう。
「盗まれた街」「ドノヴァンの脳髄」「火星人ゴー・ホーム」「宇宙人フライデイ」「吸血鬼」「21世紀潜水艦」「クリスマス・イヴ」「宇宙の妖怪たち」「大真空」「宇宙病地帯」「時間溶解機」
 このあたりまでは、そのころ、まだ、私が出会わなかった書名である。
 だから、私はまだ「宇宙人フライデイ」「宇宙病地帯」「時間溶解機」にはお目にかかったことがない。復刊されなければ、古書店で見つけなければ(ほとんど行かないが)、SF大会のオークションで見つけなければ、見ることもなしに永遠にうずもれていくだろう。
 そして、「宇宙の眼」「渦まく谺」「神経繊維」「アトムの子ら」と続く。その次が有名な「鋼鉄都市」。
 これで、完全に私はこのシリーズにはまった。
 毎週、次の本が出るのが待ち遠しかった。
とにかく、胸躍るタイトルがひしめいていた。
やがて、いつしか、この叢書は文庫にとってかわられた。
 ここで、はっきり言えることは、私は、このシリーズから海外SFへ入って行ったということだ。もし、この叢書がなければ、われわれは海外SFの面白さ、素晴らしさを知らずに何年もそのままになっていただろうということだ。
 そんな想いの強いシリーズが復刊された。
 だが、結論を最初に言えば、この二つのシリーズは実はやはり別物であるということだった。
 例えて言えば、藤子・F・不二雄亡き後のドラえもん映画に違和感があるように。
 過ぎ去った古き良き時代を懐かしむのもいいのだが、この新シリーズを拍手を持って迎え入れなければいけないのかもしれない。
 ここで疑問がある。
 青春のハヤカワSF文庫とこの新シリーズとはどう違うのだろう。どのようにタイトルを選び分けるのだろう。
 そのうち、だんだんわかっていくのだろう。

 「猿の惑星 ジェネシス 創世記」をツタヤで借りてきて、見た。実は、それより前にJALの飛行機の中で見たのだが、画面が小さかったので、あまり強い印象はなかった。
 今回、もう一度見てみて、5点満点の4点ぐらいかなと思った。前半はどうということはない。後半が面白い。猿の人間への反乱が描かれている。元の「猿の惑星」を知っている人には、何だこれは、という印象がある。
 シーザーがアルツハイマーを直す新薬によって、人間化してとうとう「しゃべる」場面が面白かった。
 まだ見ていない人は、見てもいいかもしれない。
                     (2012・3・9)

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