SF essay(189回)
川瀬広保
金星の太陽面通過が見えた!
2012年6月6日に金星の太陽面通過が見られるという。
前回、見られたのが8年前で、これを逃すと次は105年後だという。
これは、ぜひ見なくちゃと思い、当日6時30分ごろ起きた。
空を見上げると、厚い雲。
だが、準備は怠らずと、例によっていろいろなものを外へ出す。外といっても、狭い駐車場の一角なのだが。
ビクセンの8センチ屈折望遠鏡。国際光器の太陽フィルターが取りつけてある。ヘリコイドやそれを取り付けるためのマウントなど。そしてカメラ。すでに取りつけておいた。
日食グラスは3枚ほど用意。椅子2脚。老眼用のメガネ、天文年鑑、ペン、ノートなど。
7時10分に金星の第一接触が始まる時間になると、テレビのニュースもそれを言いだす。しかし、厚い雲はいっこうに晴れない。天気予報では午後は晴れるだろうと言っている。
実は天気予報にもいろいろあって、
1 NHKの天気予報。全国版ではいつも名古屋のところで見ているのだが、曇り。
2 NHKの天気予報の静岡県のところでも曇り。
3 ケータイの天気予報は、浜松市蜆塚に合わせてあるのだが、10時から12時までは太陽マークになっていた。
結局、最後のが一番役に立った。本当に10時が近づいてきたら、西から晴れあがってきたのだ!!
さて、いろいろと困難なことがまだ待ち受けていた。
1 赤道儀のない経緯台の望遠鏡では天体を導入することが、なかなか難しい。わかってはいたのだがあわてればあわてるほど、なかなか太陽は視野に入ってくれない。
2 天頂付近へ太陽が昇ってくればくるほど、体に合わせて椅子に座って接眼部分に目をあてることが難しい。
3 晴れあがれば、もう夏の暑さ。撮影した映像を確認するのも一苦労。あわてて、傘をさして日をよけてみたりする。
4 シャッター速度設計は金環日食のときほど難しくはなかった。200分の1秒から100分の1秒だろうと思っていた。しかし、いちいち映像を確認するのは大変だ。
やはり、反省点がいろいろ残る。
お金があれば、屈折用の赤道儀を購入するのだが・・・。
で、今回も幸運なことに、ほとんどこの貴重な天文現象をカメラに収めることができた。ニュースによると、世の中にはもっと熱心な人がいて、朝、新幹線に乗って、名古屋まで来て写真を撮ったとか。
NHKでは、「宙(そら)ガール」などという流行語を言いだして、思わず笑ってしまった。
若い女の子で、天文に興味を持つ人が増えているのだとか。私はさしずめ、昔から、「宙ボーイ」だった。
今回の観測で、初めてわかったことは、金星は太陽面を直線的に横切るのではなく、曲線を描いて通過していくのだということ。
近所の方が見に来た。車の人が声をかけてきた。ニュースでこれだけ取り上げられると、みなさんご存じなのだ。
往年のSF界の大人物、SF作家のレイ・ブラッドベリが亡くなった。91歳だという。
老いてますます盛んで、創作意欲は衰えないと聞いていたから、少し驚いた。
「華氏451度」「火星年代記」「何かが道をやってくる」などを熱心に読んだことを思い出す。
(2012・6・8)
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