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No.376 (Web版26号)2

SF essay (191回)

川瀬広保

 「リアル・スティール」など

 久しぶりにレンタル店へDVDを見に行ったら、最新作がいくつか出ていた。
 3枚、選んでレジへ持っていったら、あと2枚借りれば、1000円ですという。この3枚だけよりも安くなりますという。そう言われればだれでも「じゃあ、選んでくる」と言うだろう。
 もう2枚選んだ。それが「リアル・スティール」と「センター・オブ・ジ・アース 神秘の島」だった。
 これが正解だった。
 全部で5枚のDVDは、次のタイトル。
 「バトル・シップ」
 「ヒューゴの不思議な発明」
 「タイタンの逆襲」
 「リアル・スティール」
 「センター・オブ・ジ・アース 神秘の島」

 この「リアル・スティール」には、いろいろなものが小気味よく詰まっていて、見る者の目を画面から離さない。話のテンポ、父子の心のつながり、近未来2020年では人間のボクシングは禁止されていて、ロボットのボクシングで観客が興奮するという設定、子役の魅力など。
 リチャード・マシスン原作のこのタイトルだけは知っていたが、まだ見ていなかった。

 「バトル・シップ」はやたらと戦闘シーンが続く映画だ。ハワイ沖で、海軍がエイリアンの乗っているやたらと巨大で、頑強な宇宙船と激しく闘うという内容。非常にアメリカ的で、戦いには常に最後には勝つというラスト。エイリアンはいつでもハ虫類の目をしている。これでもかというくらい、戦闘シーンを用意している。
 「ヒューゴの不思議な発明」はアカデミー賞の5部門を受賞しているという触れ込みだったので、期待して見始めたのだが、やはりこれはファンタジーの色合いが濃く、期待したほどではなかった。

 「タイタンの逆襲」はゴッドには善と悪があり、神々どうしで戦っている。日本の神、スピリットとは違うものがあって、なかなか話に溶け込めない。共感できないのだ。

 それが、この「リアル・スティール」はひと時も画面から目を離さずに120分余の映画を見続けられたのだから、傑作だといっていい。2011年のアメリカ映画である。2020年の近未来を表わしている。子役の演技が光っている。映画では、マックス、実名はダコタだ。
 原作は、リチャード・マシスンの“Steel”。 ノイジー・ボーイと名付けられたロボットに、漢字で「極悪男子」などと書かれているのに笑ってしまう。英語で指示しても反応しないので、突然、マックスが日本語で「右!左!」と指示するとすぐに反応する。「今のは日本語か?どこで覚えた?」と聞かれて、「ゲームだよ」と答え、「日本製はサイコーだよ」と答えさせるようなところが、われわれ日本人の心をくすぐる。
 マックスが見つけてきた旧式ロボットをATOMと名付けて、最後には・・・。
これ以上書くと、未見の人の感興を損なうだろう。

 このあと「Journey2:神秘の島」を見た。
こちらは、とても楽しい。古きなつかしきジュール・ヴェルヌの“Mysterious Island”を映画化したものだ。
 邦題では、「センター・オブ・ジ・アース2」となっていたので、私は誤解していた。地球の中心への旅行の物語だと思っていた。
 漫画的なところもあるが、冒険心と、文明社会から離れたなつかしさにあふれている。小さなゾウが出てきたり、ハチに乗ったりだけでなく、父子の物語をからませている。それは、父と息子であり、一方、父と娘であったりするのだ。
 こちらもお勧めの映画だ。

 私としては、「リアル・スティール」が一番だった。まだ見ていない方々には、お勧めの5店満点の映画だと思う。

                (2012・10・1)

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