No.378 (Web版28号)2
SF essay (192回)
川瀬広保
映画「アポロ18」
1969年、アポロ11号が人類初の月面着陸に成功したとき、私は21歳だった。あれから、43年も経った。アメリカは火星に火星探査機「キュリオシティ」を着陸させ、日本は小惑星「いとかわ」に探査機「はやぶさ」を着陸させ、満身創痍になりながらも無事、帰還させた。
ところが、月に関しては、アポロ計画は中止となったままだ。SFの世界では、月にホテルが建設され、月ステーションができて、月世界観光がさかんになっていてもいいころのはずである。
なぜなのか、その答えがこの映画にあるのかもしれない。
これは、普通の映画というより、ドキュメンタリーである。本当かどうかは表に出てはいない。結末がハッピーエンドの安心して見られる映画を期待している人は見ない方がいいかもしれない。
結末は、いきなりスイッチを切られたようである。
あのころはアメリカとソ連(!)が新しいフロンティアを求めて、月へ有人宇宙船を競って、飛ばしていた。全部が全部成功ではなかったはずだ。
チャレンジャー事故のことを知っている人は、その事故の爆発の映像を思い起こすだろう。アポロには失敗がなかったとは決して言えない。
もともと宇宙飛行士というのは、計画が無事成功すれば「英雄」であり、失敗なり、不測の事故が起これば、「死」に直結する危険な職業なのだ。
この映画は、娯楽でも「SF」でもない。闇に葬られた「真実」なのかもしれない。
(2012・11・18)
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