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2013年1月

No.379 (Web版29号)2

SF essey(194回)

 川瀬広保

 追悼 依光隆氏

 皆さんは依光隆の名をご存じでしょう。
 星新一や小松左京、アーサー・C・クラークといったSF作家の巨匠、また手塚治虫や藤子不二雄などの天才的漫画家はだれでも知っている有名人である。
 私にとって、依光隆は彼ら同様、思い出多いSF挿絵画家である。
 その依光隆の訃報を朝日新聞の夕刊でこの間、知ったとき、また一人のSF界のビッグ・ネームが没したと思った。残念でならない。
 私にとって、氏の思い出はSFという呼称がまだなかった時代にさかのぼる。SFマガジンとの出会いは53号だが、その数年前にはもう「SF」があったのだ。
 さらにそれ以前、たぶん私と同世代の方々は講談社や岩崎書店から出ていた「少年少女宇宙科学冒険全集」や「少年少女世界科学名作全集」を読みふけっていたことだろう。そのころは、今の人には信じられないだろうが、SFではなく「空想科学小説」という名前だったのだ。

 ちなみに、手元にある講談社から出ていた「少年少女世界科学名作全集 全20巻」のラインナップを記してみよう。

 1 金星のなぞ ムーア
 2 宇宙探検220日 マルチノフ
 3 少年火星探検隊 イーラム
 4 宇宙船ガリレオ号 ハインライン
 5 ハンス月世界へいく ガイル
 6 海底五万マイル アダモフ
 7 土星の宇宙船 ハラン
 8 地底王国 カーター
 9 赤い惑星の少年 ハインライン
10 第十番惑星 ベリャーエフ
11 緑の宇宙人 ザレム
12 星雲からきた少年 ジョーンズ
13 なぞのロボット星 カポン 
14 光速ロケットの秘密 ダレス
15 第二の地球へ レッサー
16 水星基地のなぞ フレンス
17 星の征服者 ボバ
18 なぞの惑星 ライト
19 月航路 カザンツエフ
20 宇宙への門 ベルナ

 これらのすべてを読んだわけではない。今、見ている「光速ロケットの秘密」の最終ページには、もう今となっては詳細は思い出せないが私なりに○や△や×で評価してある。おそらく書店に全巻そろっていたわけではなく、たまたま乏しい小遣いを握りしめて赴いた谷島屋または文泉堂(もう今は存在していない!)の棚にあった面白そうなタイトルを買ってきたのだろう。
 いや、三省堂にあったのに◎がしてあった。三省堂ももう浜松市には存在していない。
 ◎のいくつかが、「光速ロケットの秘密」「星の征服者」「宇宙探検220日」である。
 もう本の小口は赤茶けてしまい、時の経過は隠しようもないが、私には捨てることなど考えもしない、いとおしい、昔懐かしい本である。

 岩崎書店から出ていたものにも懐かしい思い出が詰まっている。こちらは第一期と第二期合わせて、24巻。思い出多いタイトルを三つだけ記してみよう。
 「火星救助隊」(ムーア)、「地球のさいご」(ジョーンズ)、「凍った宇宙」(ムーア)。
ああ、何という良い時代だったことか!!
エクスクラスメーションをいくつくっつけても足りないほどだ。
私の小中学生のころの「SF」への原点だ。
 それらの多くの本の表紙絵や挿絵を描いていたのが、依光隆さんであった。
 私は、小説の中身はもとより氏の描く数々の絵に魅せられた。
氏の絵が大好きだった。そこには主人公たちの少年や少女、学者や博士、宇宙船操縦士らがいた。少年は聡明で明るく、少女はかわいらしく、大人たちは思慮深く威厳のある顔立ちをしていた。
 もし、まったく絵のない文字だけの本だったら、いくら内容が傑作でも、もしかしたら読まなかったかもしれないし、後に一生続くSFファンにはならなかったかもしれない。そこには私という人格を育成する大切なものがあったのだ。
 人はいろいろなものに影響を受けて成長する。ある人にとって、それは書物である。12歳の少年はほとんど間違いなく、宇宙や星や未来や宇宙船などといったものに強い興味を抱く。私も同様であった。そこには胸躍る冒険があり、主人公の少年少女たちの生き生きとした息吹きがあった。その物語を目に見えるように描いてくれたのが、挿絵画家依光隆氏であった。

 もうひとつ忘れてはいけないのが、いやこちらのほうを真っ先に書かなければいけないのが、日本人「空想科学小説」作家、瀬川昌男の「白鳥座61番星」である。諸外国の作家に負けず劣らず胸躍る、夢多いこの作品を読んだのは私が小6のころである。
 甘く、なつかしく少年のころの思い出がよみがえる。感傷的に言えば、そのころの自分がいとおしい。
 そして、そこにも挿絵画家、依光隆の名前は私にとって、物語の作者同様、またはそれ以上に光り輝いていて、素晴らしいものであった。

 幼いころに出会った本や音楽や絵などを、今の子どもたちも大事にしてもらいたい。

 依光隆さんの心からのご冥福をお祈りします。

                 (2013・1・6)

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No.379 (Web版29号)1

 SF essay (193回)

 川瀬広保

 SFファンは天文ファンか、そして猫好きか?

 私の場合、天文への興味が高じて、SFファンになった。初めての本で見た土星の絵(または写真)に魅せられて、本物の土星をボール紙製の学習望遠鏡で見たときの感激は忘れられない。同じような経験は多くの人にあるらしい。あのクラークも短編「土星の出」で書かれている。自分自身の経験だろうことはよくわかる。
 最近、浜松市天文台でボランティアを始めたのだが、予想に反して幼稚園ぐらいの子どもが立派な天文の知識を持っていた。恒星の名前をよく知っていたりして、感心させられる。先だって、流星群の観望会のときなどは、小2でありながら、こちら以上にあれこれよく知っていたので大いに感心した。
 こういう子はいずれ、天文の専門家になるのだろうか。途中で、SFファンにもなるのであろうか。
 昔、火星を観測していた人はそこに見える模様を運河と思って、火星人がきっといるのだと空想を膨らめた。金星には金星人が、海王星には海王星人がいると設定して、小説が書かれた。木星の衛星、イオには活火山が存在しているということがわかって、想像力をかきたたせた。
 アメリカの探査機「キュリオシティ」は水の流れた跡を見つけたらしいという。そうすると、昔は火星人がいたのかもしれないと空想が膨らむ。
 望遠鏡で、月や惑星を見たことがきっかけでSFファンへと進む人は多いだろうと思う。月や惑星を見て、現実に観測を続ける人は、空想に走るより、天文学者になるかもしれない。カール・セイガンのような人もいたから、天文学者でありながら、SFも書くという人も多い。
 天文からSFへと移行する人が多くて、天体観測を毎日やっているような人は、そのうち新星や小惑星などを発見したりするのであろう。

 さて、次に、SFファンと猫好きについての考察をしてみよう。
 「小松左京マガジン」の裏表紙に毎回登場している猫は、小松左京が生前飼っていた猫で、もう何代目かになるそうである。ハインラインについては言うまでもなく、あの名作「夏への扉」の献辞を見れば、単なる猫好きではすまされない「猫好き」だったらしい。すべての猫好きへという献辞の原文はaerulophileという語が使われている。この語はもう病的に猫が好きな人という意味である。
 なぜ、こういう話を書こうとしたか。
 それは、我が家の庭にもう数ヶ月、野良猫が出没しているからである。
 それも普通の猫ではない。台風の日に、どうやらどこかで出産したらしく、まったくコピーのような白黒の子猫が2匹現れた。さらにもう1匹縞模様の子猫も来て、母猫が産んだのは3匹らしい。
 その母猫は警戒心が強くて、こちらがキャットフードを持って、
 「こんにちは。久しぶりだねえ。元気?おなかすいてる?」
などと、話しかけながら、近づいていくと、ひげを震わせて、まず「フー!」という。さらにもう一歩、近づくと、「シャー!」という。
 こちらは、aerulophileだから、さらに、もう一歩近づこうとすると、「バシ!」とか「バン!」という。
 猫の威嚇音の「フー!」や「シャー!」は聞いたことがあるが、「バシ!」や「バン!」は聞いたことがないので、娘に言うと、笑って「まさか!」と言われてしまう。
 まるで、「もうそれ以上近寄るな!!」と言っているのに、「まだわからないのか!!!」と言わんばかりの威嚇である。 
 そんな状態がもう数ヶ月続いている。
 猫は、そこにいる人間が持っているキャットフードがほしいのである。こちらが、そんなに警戒しなくてもいいんだよと思っていても、皿に入れたフードを一口、口に銜えて逃げるようにして、食べている。
 私はそんな猫でもかわいいのだ。まさにaerulophileである。そこで何と猫ばかなんだろうと心の中で思っていても、スーパーで猫のフードを買う。ハインラインの『夏への扉』に出てくる登場猫と同名に名付けた自分の猫、アメリカン・カール(雄猫)のためのフードとは別に買ってきて、与えている。
 私の観察によると、世の中の8割の人は犬好きである。残りの2割が猫好きで、犬も猫もどちらも好きですという人は少ない。動物は好きではないという人はもっと少ない。いくら猫好きでも、警戒心が強すぎて、「バン!」(これは怖いですよ)と言ってくる若い猫(推定、人間の年齢に換算して20代?)でさえ、かわいいと思っている自分は、もしかしたら、間違いなくaerulophileであろう。

 今、こんな原稿を書いているとき、家猫、ピートがこっちをじーっと見ています。よその野良猫の話なんか書かないで、私と遊んでと言いたそうに。
 そこで、このへんで今回はやめておきましょう。私自身はSFファンと天文ファンをどちらも続けたい。

 来年は、天文現象としては3月にパンスターズ彗星がー3等、アイソン彗星は11月にー11等になって輝くだろうと予想されていて、彗星の一年になりそうです。
 SFとしては、「ルーナティック」30号記念号など、きっとまた話題の多い一年になるでしょう。
                  (2012・12・24)

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No.378 (Web版28号)3

はるこん2013 開催概要

「はるこん」は、日本で二回目のワールドコンを目指しているSFファンが主催するコンベンションです。 国、世代、ジャンルを超えた交流を、SFを通じて世界に広げていくことが私たちの主催テーマです。2010年の春から開催し、年に一度、海外と国内より一人づつゲスト・オブ・オナーをお招きしまして2日間、様々な企画を行います。
http://www.hal-con.net/ja/about_convention

日時 2013年4月27日(土)~28日(日)

場所 武蔵浦和コミュニティセンター

(埼玉県さいたま市南区別所7-20-1 サウスピア8~9F
    JR武蔵野線・埼京線 武蔵浦和駅下車。西口より徒歩1分。
    ※2013年1月にオープンする新施設です)
http://musashiurawa-sp.info/?cat=8

はるこん2013 ゲスト・オブ・オナー
ジョー・ホールドマン氏

1943年6月9日、米国オクラホマ・シティ生まれ。メリーランド大学カレッジパーク校で物理学、天文学を学ぶ。ベトナムでの経験に着想を得た『終りなき戦い』でヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を受賞。その後も戦争を中心とした力作を発表する。現在はフロリダ州ゲインズビルとマサチューセッツ州ケンブリッジ在住。

以上、はるこんHPより
http://www.hal-con.net/ja

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