« No.384 (Web版34号)1 | トップページ | No.386 (Web版36号)1 »

No.385 (Web版35号)1

SF essay(202回)

川瀬広保

「まんが道」ついに完結!

 2013年6月26日の朝刊に、リチャード・マシスンの訃報記事を見つける。87歳だったそうだ。
 マシスンと言えば、なつかしい名前でハードSFを書くクラークや抒情SFを書いたブラッドベリらとはまた違う異色のSF作家だった。
 最近では、マシスン原作の映画「リアル・スティール」に感銘を受けたばかりである。
 往年のビッグ・ネームの一人がまた没した。
 残念である。ご冥福をお祈りしたい。

 同じ朝刊に
         「まんが道」44年で完結
        藤子不二雄A「実体験がドラマ」

の記事も見つけた。「まんが道」の続編「愛・・・知りそめし頃に・・・」が完結とある。最新刊12巻が28日、小学館から刊行されるとのこと。
 さっそく、書店へ一番に電話して、購入。すぐに読みだした。

 藤子不二雄が、藤子・F・不二雄と藤子不二雄Aに分かれてから、「ドラえもん」と言えば、藤子・F・不二雄だったが、藤子不二雄Aはどうかというと、それはもう確実に、「まんが道」だった。
 その続編「愛・・・しりそめし頃・・・」もとうとう12巻に達し、このほど完結した。実に、44年かかっている。
 これは素晴らしい44年だと思う。
 私は、この「まんが道」を3回ぐらい買い替え、読みなおしている。藤子不二雄Aの代表作であることは、間違いない。この「まんが道」は「愛・・・知りそめし頃に・・・」まで含めて、青春のグラフィッティだということだが、青春時代のあこがれやがんばりや夢などが表現されていて、誰が読んでも一気に読ませるものを持っている。
 私の場合、漫画と言えば、まず手塚治虫だった。「鉄腕アトム」から入った。アトムが太陽に突入していく場面では、この後どうなるだろうと子供心にハラハラドキドキしたものだ。
 その手塚治虫が亡くなり、次に私の愛読漫画家は藤子不二雄になった。F氏とA氏に分かれてからも、F氏が亡くなった後も、A氏の動向はいつも気になっていた。
 もうじき80歳になるという。実に44年かかって自分の実体験を漫画化して、多くの読者を得ているのだから素晴らしいことだ。
 ひとつのことを続けることの大切さを教えてもらった。「まんが道」の最初、満賀道雄と才野茂がドキドキしながら、手塚治虫に会いに行く場面から始まって、すべての原稿を落として出版界から干される失敗や、徹夜してまで原稿を完成させる話や、チューダーを作ってみんなでワイワイ騒ぐ話など青春時代の実話だからこそ面白い。そして、読者の胸を打つのだと思う。
 「まんが道」以外では、「笑ゥせぇるすまん」が私は好きだ。以前、テレビドラマ化された。
 藤子不二雄A氏には、これからも面白い新作漫画を描いてもらいたい。
 小学生を切りつけたり、年金の目減りなど実際の世の中は困ったことが多い。世界に目を向けると、争いやもめごとが止まることがない。
 そんな中で、日本の漫画には人々の心を癒して、励ましてくれるような作品を読みたいと期待している。
 「まんが道」は44年で完結してしまったけれど、これはこれで「完結、おめでとうございます!」というべきだろう。

                  (2013・7・2)

|

« No.384 (Web版34号)1 | トップページ | No.386 (Web版36号)1 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: No.385 (Web版35号)1:

« No.384 (Web版34号)1 | トップページ | No.386 (Web版36号)1 »