No.386 (Web版36号)2
SF essay(204回)
川瀬広保
SFファングループ資料研究会からのCDデータ・ベース
ある日、郵便物の中に、森東作さんからの厚めの封筒を見つけた。
森東作さんのお名前は存じ上げていたが、お会いしたのは、横浜で行われたワールドコン・トーコンのときだけだったような気がする。
中を開けてみると、印刷物のほかにCD-Rが入っていた。
それは「SFファングループ資料研究室 CDデータ・ベース」だった。
さっそく、パソコンに入れて、開いてみる。いろいろやってみると、これはすごいデータだということがわかってきた。
われらの東海SFの会の「ルーナティック」や「ペーパームーン」のもっとも初期のものまでちゃんとちゃんと収録されている。「ルナティック」と「ルーナティック」の別や、「純粋桃色新報」の時代のことなど、実に詳細だ。
私としては、「ルーナティック」と伸ばす発音の方がいいと思っているのだが。
そもそも、われわれSFファンというのは、昔からファンジンを発行したがるし、ファンダムの中で、あれこれ行動したがるものである。
日本にSFというものが発生し始めてから、ファンができ、ファンジンが多く発行されてきた。そのファンジンを詳細に調べ、記録し続けているのが、この「SFファングループ資料研究会」である。
SF界は、有名な作家やビッグ・ネームだけで、存在しつづけているわけでなく、SFファンジンやファンダムという広野の上に存在しているのだ。
このようなデータ・ベース作りは実に地味で目立たないものだと思うけれども、大変貴重な活動だと思う。
このデータの森に分け入っていくと、簡単には抜け出られない。筆者である私自身がもう忘れているようなことまで、記録されていて圧倒されてしまう。
森さん、すみません、白柳孝さんの名前がシロヤナギさんとなっているところは、シラヤナギさんが正しい名前です。できれば修正をお願いします。
われわれ人間は、記録する習性をもっている。たとえば、日記を書く人は何十年も書いているであろう。一日何をどこでしたかの詳細な記録は難しい。
SFファンダムも、詳細で欠けることのない記録はほとんど不可能だろうが、こういう仕事をやる人がいて、後代にSF史が残っていくのだ。
この活動は今後も続いてほしい。
(2013・8・5)
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