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2015年12月

No.412 (Web版62号)2

HANSHICHI

中嶋康年

 名古屋の「ちいなこん」で手に入れたということで、新村さんから送っていただいた岡本綺堂「半七捕物帳」のスペイン語訳版を紹介する。2012年スペインで発行されたもので、マリロ・ロドリゲス・デル・アリサル(Mariló Rodríguez del Alisal)、フジムラ・ユウコ共訳。「半七 ー日本のサムライ探偵ー(HANSHICHI Un detective en el Japón de los samuráis)である。扉には「親愛なるモトコへ 心をこめてあなたのご幸運を祈ります。 マリロ 2013/10/3」(Querida Motoko Te deseo mucha suerte contodo mi cariño. Mariló 3.X.2013)とのサインがある。どこかのモトコさんが訳者から献本をされたのだが、「いらない」とかいって横流ししたものと推測される。
 発行当時、そこそこ話題になったらしく、スペインのどこかのサイトで紹介記事を見たことがある。調べてみると、続編として、2014年に「半七の新しい冒険」(Las nuevas aventuras de HANSHICHI)が出ている。「発音の注意」として、名前は日本風に苗字・名前の順に表記してあること、「将軍」などの伸ばす音はshôgunのように山形記号をつけた文字を使用していること、Hは発音すること、j、sh、zは英語風に読むこと、ge、giはゲ、ギと読むことなど約1ページを費やしての注釈も載っている。
 また、初めて日本の時代物に接する西洋人に対しては当然のことながら、こと細かな日本の風習、言葉の解説などの脚注をほとんど毎ページにつけているのも、ご苦労がしのばれる。
 岡本綺堂という名前は知っていても、「半七捕物帳」は読んだことがなかった。見返しの解説によると、綺堂の父は下級武士だったが、明治維新後に英国公使館に就職、息子に若いころから英語を学ばせた。のちに新聞記者として演劇理論などを書きながら歌舞伎作家になることを夢見ていたが、ついに念願の歌舞伎作家になり、成功を遂げる。しかし、彼の名が最も知られるようになったのは、ある日偶然手にしたシャーロック・ホームズを原語で読み、感動して書き始めたこのシリーズだった。
 収録作は、「お文の魂」「石灯籠」「勘平の死」「半鐘の怪」「奥女中」「春の雪解け」「朝顔屋敷」「猫騒動」「山祝いの夜」「鷹のゆくえ」の10作。

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No.412 (Web版62号)1

第54回 日本SF大会『米魂』アフターレポート2
by 渡辺ユリア

 皆様今日は。前回のつづきの『米魂』のアフターレポートです。8月30日AM9:30〜11:00の分科会『はやぶさやロシア隕石から見えてきた太陽系の姿』では、鳥取県の三朝温泉の近くの研究所の研究員の方が、写真を指示したりして話して下さいました。去年の2月にロシアに墜落したロシア隕石…三つほどになぜか分裂して、その中の(たぶん)最大のものが湖に沈んだのですが、約半年後にその湖からクレーン車などを使って引き上げたようです。
 さしわたし2mほどの大きさだったらしいです。しかもすっごく重い。
 その後、その破片の一部を日本に持ってきて、けんび鏡で観察した結果、…実は、はやぶさが持ち帰ったあの小さな粒子の一部と似たところがあったため、ロシア隕石はもしかしたら、小惑星イトカワの一部がはがれて、宇宙をさまよい、地球の近くにやってきて、そして地球の引力に引かれて、大気圏を突破し、地球へと落下したのではないか…という仮説が生まれたのです。それにしても隕石が地球に落下する…といった情報って速かったのではないでしょうか?実はアメリカのスパイ衛星が、その妙な天体が地球へと落ちそうだ…というのを写真でとらえていて、国防省にすぐ連絡が入ったそうです。
 話はかわって、SF大会のクロージングの話です。暗黒星雲賞の発表と受賞式は見ていて楽しかったです。企画賞は『3Dプラネタリウム』が受賞。代表の方が「三度目!!」と喜んでみえました。今年は『進撃の巨人』の巨人がぞろぞろ出てきたそうです。ゲスト賞は藤井太洋先生。コスチューム賞はピンクあんこうのコスチュームの方。オリジナルのコスチュームなのと、なぜか迫力あるいで立ちのおかげかもしれません。首から下をすっぽりとおおったピンクの服装がついつい目立ってました。
 その他賞は、会場内のエレベーターに決定。10人以上乗ると、突然止まって、上がらないエレベーターだったらしいです。“よく止まるエレベーター”とうちの娘が言ってました。私は乗りませんでしたが、「直して下さいねー」と私は思いました。   では、この辺で
                   2012.11.16 yullia

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No.411 (Web版61号)1

SF essay(231回)

川瀬広保

 長年、通った浜松の谷島屋さなる店が10月いっぱいで閉店するという。
 本が売れない時代だからだろうが、何か寂しい。中高生ぐらいのころから、私はSFマガジンやハヤカワSFシリーズなどを買いにわずかなお小遣いを持って、谷島屋連尺店へ通った。今回の閉店は、さなる店なのだが、家から一番近くにあるから、本屋が遠くなるのは残念だ。
 本屋にあまり行かなくなってしまうと、脳も活性化しないだろう。買っても結局読まない本が、書庫などに積み重なっているのだが、それでも新刊が出ると買おうと思ってしまう。迷ったあげく、「よし!行こう!」と思って、今度はちょっとだけ遠い谷島屋に出かけなければならない。
 コンビニやスーパーはどこにでもあるのに、書店が消えるということは日本の文化が低迷していくということになりはしないか。
 新聞を開けば、毎日、新刊広告が並んでいる。ちょっと見落としていると、もうそんな新刊が出ていたのかと後で知らされることになってしまう。
 人間は、やはり何歳になっても、よい本を読まなければだめだ。書店が閉店するというニュースはやはり、寂しい。

 さて、国勢調査がやっと終わった。自治会役員をやっている関係で、調査員をやらされた。決して、進んでやったわけではない。
 やってみて、一番の問題は、集合住宅はもちろんのこと、一般の個人宅でも、玄関にも郵便受けにも一切、表札も表示もないところが多いことだ。
 市から示された地図だけをたよりに、何回も訪問する。地図によれば、この家でいいだろうと思って、思い切ってチャイムを鳴らす。合っていればほっとするが、違うと言われれば、「〜さんのお宅はどこでしょうか」と聞いてみる。出た相手は「わかりません」と答える。
 また、今回はインターネット回答と紙の回答のどちらでもいいというようになったので、作業が煩雑だった。約2ヶ月、国勢調査のことばかりで頭がいっぱいになった。
 終わってみて、近隣に詳しくなったなあという感想だけが残った。
 国勢調査とは何だろう?いくら、国民の義務だとはいえ、巨額を使ってあれこれ調べて、パーセントだけの数字が出てくるだけだ。女性が輝く社会をと盛んに言うし、少子高齢化を何とかしなければと盛んに言う。日本が抱えている問題のために奔走したのかもしれない。国民の義務だと言われれば協力せざるをえない。


 さて、SFでは早川書房は創立70周年を迎え、かつての名作の新訳版の出版ラッシュだ。
 その一冊が「宇宙の戦士」である。思わず買ってしまった。翻訳者が変わると、趣きも変わる。
 比べること自体がおかしいことかもしれないが、「吾輩は猫である」の英訳は"I am a cat."となっている。これだと、「私は猫です」という意味だけはわかるが、味も素っ気もないタイトルになってしまう。英語を日本語に直すということは、訳者の力量だけではない何かが含まれている。
 矢野徹訳とは冒頭から何かが違うような気がする。原書で読み、細かいニュアンスまでわかればそれでいいのだろうが、それができる人は少ないだろう。
 これからも、かつての名作の名訳が新訳になっていくのだろうか。

 さて、季節は確実に変わりつつあり、寒くなってきた。世の中、どんどん変わっていく。マイナンバー制度などどうなるのだろう。管理され過ぎた未来社会を描いた「1984」のようにならなければと願う。そうだ、星新一のショートショート「はい」も思い出した。コンピューターに管理され過ぎた未来社会を見事に描いていた。
 SFは最近のこうした変化に良い意味で影響を与えるようになってほしいものだ。
                      (2015・10・26)

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