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No.413 (Web版63号)2

SF essay(232回)

川瀬広保

     明治大学SF研究会OB合宿の記

 ある日、メールが来た。恒例の研修会をやるという内容だった。研修会といっても、飲み会だ。そして、今年は舘山寺で2015年11月15日〜16日にやるという。
 しばらく、そのままにしておいたら、今度はスマホに電話が入った。こうなると重い腰をあげないわけにはいかない。
 「わかりました」と答えた。詳しいことはそのうちメールで連絡が来ると言う。やがて、詳細が送られてきて、いよいよ当日の朝になった。
 前日、前々日からあれこれ考えてはいた。もともと心配性で、小心者なのだ。
 16時ごろを目指して、舘山寺のホテルに向かった。浜松に住んでいても、舘山寺へはほとんど行かない。
 30分で着いた。ロビーへ行くと、もうそこには懐かしの4人がいた。誰が誰か認識するのに、数秒の時間がかかった。そのうち、一人は初対面だった。
 7年ぶりの再会である。お互いにもう高齢者であるのは間違いない。SF研創立から47年。もう3年もたつと50周年を迎える。
 その種をまいたのが私だ。
 昔話はもうあれこれたくさん書いた。思い出を書きだすと、何か郷愁を感じる。
 まずは、部屋でビール。初対面の人は、私が卒業した後に入会した後輩である。初めての出会いである。趣味の集まりというものはそんなものだろう。1970年の国際SFシンポジウム、7年前の東京での研修、そしてあまり覚えていないのだが、「はまなコン」でも会っているそうだ。
 ビールを飲みながら、あれこれ話し合う。会の顧問だった大西尹明先生を知らないというのは、私にとってやはり年令の差を感じる。
 持っていった『SFファン48年』や『テラ』の創刊号のコピーを皆さんに見せる。だが、47年という年月は、もう元へは戻せない。
 やがて、2階で夕食。久しぶりの御馳走である。どうしても、話は糖尿病とか血圧とかコレステロールの話になる。
 「47年前には、そんなこと話さなかったよね」と私が言うと、みんな笑う。写真も撮る。やがて、そこでの食事も終わり、部屋へ戻り、またビール。
 「さて、話題を変えて、年金の話にしようか」と言うと、「その前に、小学生の英語教育についてどう思いますか」と聞く人もいる。道徳の教科化についても話す。
 そのうち、テレビで野球を見始める。野球には興味のない私だが、結局、最後まで見てしまう。やがて、二回目の温泉に入るという人もあれば、私のように一応布団に入る人もいる。
 少しは眠ったか、やがて、朝になる。7時には起きる。家とは違う環境で一晩を過ごした。こうして久しぶりにSF研究会のOBに会うことができた。
 朝食。ホテルでのバイキング朝食は久しぶりだ。やがて、チェックアウトのための清算をしてもらって、金を払い、みなさんと別れる。帰路に着いた。

 

 SFファンというのは、集まりたがる。20代のころからである。それが、大学のSF研創立につながり、あれからもう47年も続いている。
 現在の明治大学SF研はアニメファンの集まりみたいになっているそうである。20代の若さがSFの根本なのかもしれない。
 SFというのは、「若さ」なのだ。「熱さ」なのだ。たとえSFでも、老化には逆らえない。
 だが、やはり私は終生のSFファンであり続けよう。人間がみんな健康である未来を夢想しよう。その方がいいと思う。

 さて、47年前の1968年ごろ、SFでは、2015年は輝かしい未来だった。現実は、テロ、温暖化、格差、貧困など暗い話が多い。だが、探査機は冥王星まで行ったし、鮮明な写真が送られてきた。〈ニュートン〉最新号の付録カレンダーは、その冥王星の大きな写真が目立つ。
 iPS細胞による再生医療実用化は、少し先送りになっているようだが、近いうちに、きっと成功するだろう。また、日本のH2Aは日本初の商業衛星だとのことである。
 47年前には、あまり想像されていなかったように思う。
 SFというのは、想像力であり、その想像力によって、人類は進歩し、発展する。大学のSF研創立がそれに少しでも寄与しているとすれば、うれしいことだ。小松左京が言っていたように、教育に良質のSFを取り入れていくといいと思う。科学の発展だけでなく、人類の心の発展にもつながると信じたい。
 あれこれ考えながら、二日間とその後を過ごした。

 さて、急に寒くなってきた。あと数日で、もう12月である。月並みな言い方だが、一年が過ぎるのは早いものだ。
                     (2015・11・26)

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