No.416 (Web版66号)3
ロボット刑事
福田淳一(石ノ森章太郎研究家)
石ノ森章太郎は、1962年伝説のトキワ荘時代にアシモフのSF小説(鋼鉄都市)をヒントに「少年同盟」という作品を描いた。「少年同盟」とは、世界中の社会の悪と戦う正義を愛する少年たちのグループである。そして日本代表の風田三郎少年がヒューマノイドのイライザとコンビを組み、事件を解決していく物語である。この作品は、連載終了直後の1963年に一度単行本化されただけの幻の作品であったが、復刊ドットコムの「少年同盟(復刻版)」で、復刊されているので、詳しくはそちらを参照願いたい。
そして1972年、この「少年同盟」をベースに、石ノ森章太郎は2つの変身ヒーロー作品を誕生させることになる。1つは「イナズマン」で、もう1つがこの「ロボット刑事」である。
「ロボット刑事」では、少年 “風田三郎” が老刑事 “芝” に、ヒューマノイドの “イライザ” が主人公 “ロボット刑事K” にと変更され、見事に新たな変身ヒーローとして誕生したのである。よって、企画時の主人公Kのラフデザインの中には、イライザ風のヒューマノイドが描かれていたり、Kがイライザと同様のハンチングをかぶっているのも、そのためだろう。
石ノ森章太郎は、「講談社コミックス(KC)」1巻の袖に、「ロボット刑事」について、以下の文章を寄せている。「“うそ発見器” をはじめとしてさまざまのメカニックが、警視庁の事件捜査にとりいれはじめたのは、ごく最近です。それらの “科学捜査機器” をひとまとめにし、さらに “未来的に” したものを全身に装着している人間、それがロボット刑事Kなのです。機械の持つ強さと弱さ、人間の(感情が)持つ強さと弱さ、そして対立…。人種問題などもふくめた、その “争い” をわれわれの生きかたに結び付けて、などと考えながらこの漫画を描いています。」
石ノ森章太郎は、いつものテレビ作品の中では出し切れない部分を、雑誌に連載されたコミカライズ作品の中で描いている。このコメントは、連載中のモノであり、まさに、「ロボット刑事」の中で描きたかったテーマについて書かれたものになる。
「ロボット刑事」は、『週刊少年マガジン』誌上に1973年1号(1月1日号)から同年41号(9月30日号)まで連載され、テレビ作品は、フジテレビ系にて4月5日から9月27日の半年間に全26話が放映された。この「ロボット刑事」の企画時のタイトルは「ロボット刑事K2」だったが、「ロボット刑事J(ジョー)」となり、最終的に「ロボット刑事」に決まる。Kの愛車空飛ぶパトカー「ジョーカー」の名称は、企画時のJ(ジョー)の車という名残である。
石ノ森章太郎が描いた「ロボット刑事」は、あおりのサブタイトルも “科学事件ドラマ” とされ、変身ヒーローのスタイルは成りを潜めていた。人種差別を根底に、コンビを組む芝刑事との確執や、人間やロボットの感情についてや、事件のトリックの面白さなど、ドラマ性に重点が置かれて描かれている。さらに、主人公の “K” が無表情のロボットとして描かれているため、芝刑事や家族など、周囲の人物の感情表現が豊かに描かれていた。それにより本作は、より一層ドラマチックな作品に仕上がっている。
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