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No.419 (Web版69号)2

SF essay (238回)

川瀬広保

映画「オデッセイ」ほか

 「スーパーマーズ」という言葉がテレビ、新聞に踊った。火星の最接近のことだ。マイナス2等星に輝く赤い星が見えるというので、望遠鏡を出して見てみた。7600万キロも遠くにいつもより、煌々と輝いていて、心なしか大峡谷も「見えたかな?」という感じだった。
 その火星に実際に行って、困難に打ち勝つという物語が次のSF映画である。

『火星の人』、映画の原題は ”The Martian”、映画のタイトルは、『オデッセイ』を見ている。久しぶりにツタヤで借りてきた。
 これは一人火星に取り残された男のサバイバル物語だ。火星の嵐で、他のクルーは火星を離れる。一人ワトニーは火星に取り残され、けがをしているのを、自分で止血する。このような場面は、アメリカ人の強さを描いているように思う。日本人だったら、あきらめてしまうだろう。自分を自分で手術できない。
 彼は生き延びようと考えたあげく、水を作り、ジャガイモを火星の大地に植えようとする。肥料はどうする?他のクルーの残した「人糞」だ。宇宙は汚してはいけない。不要物を宇宙に残してはいけないのだ。だから、宇宙船の中に保存してあったのだろう。
 それが良かったのか、ジャガイモがついに発芽する!
 また、彼は火星の大地に「パスファインダー」を見つける。こういうエピソードも心憎い。時々、現れる明るいバックグラウンドミュージックや早送りの画面が、この映画を深刻なものにしていない。
 火星の嵐によるアンテナの損傷が、ワトニーの腹に刺さっただけでなく、地球と交信できなくなってしまった。
 しかし、ワトニーは死亡されたとされ、NASAも早々に彼の葬儀を執り行ったが、生きているとわかって、今度は救出へと動き出す。テンポは早い。
 われわれ人類は宇宙へ進出したがる。しかし、事故や失敗も多い。その失敗や、考えてみもしなかった事件を乗り越えていこうとする「負けない精神」「頑張り」がこの映画を見るものの心を打つのではないだろうか。主人公は神に祈ったりしない。孤独に耐えるためか、音楽を流す。決して、絶望してはいない。
 最後に、次期宇宙飛行士候補たちの前で、ワトニーは、君たちが宇宙へ行ったらマニュアル通りにやればいいというものではないということを、体験したものでなければわからない言葉で言い聞かせて終わっている。
 次に、スターウォーズの最新作『フォースの覚醒』を借りて、見た。こちらは、深い何かの意味が含まれているわけではないが、いつものように空中戦や銃撃戦、異性の奇妙なエイリアンが出てくるのを、SF映画として素直に楽しめばいいのだろう。R2D2もC3POも進化している。銀河帝国の圧政から逃れるために、「レジスタンス」のメンバーは、最後には自由と平和を手に入れる。必ず「善」が勝つというシナリオは安心して見ていられる。

 さて、先日、国立天文台の縣秀彦教授が天文講演会を行うというので、浜松天文台へ行って来た。専門家の最新の天文の話題が聞けてよかった。70人ぐらいが集まって、テンポよく最新の天文の話題が聞けた。私も質問してみた。SF作家と天文学者の接点について、どう思うか。「アメリカにタイソンという人物がいる。日本では・・・」
 優れたSF作家であり、優れた天文学者でもあるという人材はなかなかないのであろう。アーサー・C・クラークやカール・セイガンのような有名人なら、両立させていたのだ。

 さて、舛添都知事は責められてとうとう辞職させられ、一言も発せずに都庁をあとにした。アメリカでは、クリントン候補とトランプ候補は終わることのない言い争いをしているし、テロは止まない。一番よくないのは、慢心してしまったわれわれ人間である。
 気候が狂ったり、熊が人を襲ったり、予想もしないようなことが毎日のように起こっている。優れたSFを読んだり、優れたSF映画を見たり、接近してきた火星を見たりして、人類がいかに小さな存在であるかということを、幼い時から学ぶようにすれば、人の「心」が原因の困った事件や事故は減るのではないか。そんなふうに思っている。

 さて、次回はたぶん、ハル・クレメントの『20億の針』『1000億の針』について。新装版、新訳版が出ている。前者だけ入手したが、まだ未読である。懐かしのタイトルである。

                     (2016・6・20)

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