No.422 (Web版72号)4
不幸なトマソン
加藤弘一
昨年ペリーローダンがめでたく500巻を超えた。
めでたいめでたいなどと思って油断していたらたちまち数冊の新刊がたまってしまった。
今は519巻を読んでいる。
そのなかにトマソンという名の宇宙船の船長が登場するのだが、トラブルに巻き込まれ散々な目に会う。
誠に不幸なキャラクターであるのだが、彼はトマソンなのだ。
プロ野球巨人軍の最強外人助っ人クロマティであるが、最弱はトマソンと言う事になっている。
トマソン選手は鳴り物入りで入団した後、鳴かず飛ばずでシーズン途中解雇されあっという間に帰国してしまったのだ。
怒った画家の赤瀬川源平は「トマソン=無用の長物」という新しい単語を造り出した。
巨人ファンにとってトマソンとはかような存在なのである。
ローダン世界のトマソンは船のトラブルに対し、仲間たちと共に懸命に対処しようとするがうまくいかず絶体絶命のピンチに追い込まれる。
本来なら読者はハラハラドキドキとするべきだが、巨人ファンの末席にいる自分は「やっぱりトマソンだよな!」と冷めた目で見てしまい、今一つ盛り上がらないのである。
そして、そんなつまらない事を考えている自分の前には、ローダンの新刊が次々と積まれてゆくのである。
了
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