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No.425 (Web版75号)3

SF essay(244回)

川瀬広保

 もう12月も終わりだ。一年過ぎるのは、お決まりの文句だが、実に早い。地球が太陽の周りをたった、一回、回っただけなのに・・・。80回かせいぜい100回も回れば、人間の寿命は尽きるのだ。人間とはなんと哀れな小さな存在かと思ってしまう。

 さて、ハヤカワ文庫SFの新刊に『ボロゴーブはミムジー』(伊藤典夫訳)が出ているのを見て、書店であとがきをちょっと立ち読みしたら、伊藤さんの出身地である浜松のことがたくさん書かれていたのが目を引いた。
 立ち読みから、進歩して買ってきた。さっそく、巻末から読み始める。伊藤典夫さんの青春時代がよみがえる。中でも、レイモンド・F・ジョーンズの名前には私も大いに思い入れがある。『星雲から来た少年』の実に懐かしいタイトルが思い出に残っている。
 解説の最後には第二集の目次はもうできているとある。SF翻訳家としては、私にとって浅倉久志、伊藤典夫の二大巨人しかないといってもいいくらいだ。もちろん、他にもたくさんのSFにかかわる翻訳家はいるのだが、浜松出身ということもあって、このお二人には強い影響を受けてきた。また、『伊藤典夫評論集』がいずれ国書刊行会から出る予定になっているのだそうだ。期待して待つようにしよう。
 SFには傑作を書く作家が目立つが、それを名訳と言われ、訳す翻訳家はどうしても陰に隠れがちだが、このお二人はレベルが違うと思う。ぜひ第二集や評論集も早く見たいものである。

 さて、この一年はどうであっただろうか。天候の異変はもう当たり前のようになっているが、アメリカの次期大統領の話題や韓国の大統領の弾劾を初め、人々の心が何かどこかわけのわからない方向へ向かっているように思う。小学校の英語が教科としてもうじき取り入れられるようになって、それを先取りするかのように幼稚園ぐらいから、英語を言い出す子どもが増え、日本人だかなんだかわからない新人類が増えるのではないかと危惧?している。

 お決まりだが、来年こそ酉年にあった良い年になりますように!

                      (2016・12・23)

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