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2017年3月

No.426 (Web版76号)2

SF essay(245回)

川瀬広保

  「ルナティック」31号に思う

 新年あけましておめでとうございます。と言っても、これを読んでくださっているころには、もう2月になっているでしょう。
 12月31日には、ほとんどの日本人がするように「紅白歌合戦」を見て、途中で眠くなったけれど、ピコ太郎が出たときは、目を覚まし、終わったら、ほとんどの日本人と同様、近所の神社に初詣に行って来ました。
 願意は多くて、自分でも欲張りだと思っても、願わざるを得ませんでした。外国人に言わせると、日本には神社と寺の両方がどこにでもあり、そのどちらへもみんな出かけていきます。神社で手をたたき、寺でも手を合わせているのは、ちょっとどういうものかと彼らは思っているみたいです。

 さて、「ルナティック」31号が送られてきた。東海SFの会のファンジンの最新号である。
 ファンは、ファンジンや会報によってファン仲間とつながる。長い歴史があるとそこには、東海SFの会の重みがある。
 まんが特集だが、それ以外に翻訳やレポートなど満載であり、楽しい。年に一回とはいえ、発行にこぎつけるのは大変であり、関係者のご努力に心から感謝します。
 思えば、50年ぐらい前に「ルーナティック」の創刊号を白柳さんから、いただいたことを思い出す。あれから、今号で31号。この数字を多いとみるか、少ないとみるかは、人によるだろう。SFというのは、想像力の物語だから常にみんなをひきつける。ウェルヌやヴェルヌの時代から、読者やファンは大変多かった。やがて、クラーク、アシモフ、ハインラインという三大SF巨匠に、ファンは夢中になった。作家の元には、常にファンがいた。ファンのやることは、集まって活動をし、ファンジンや会報を発行し、あれこれ書いて乗せることである。
 東海SFの会も同様だ。年に一回発行されるかどうかの「ルナティック」だが、これからも続いてほしいし、続かせなければいけない。
 あれこれ書いている私自身、読んでいないかつての名作や新しい作家の話題作などをもっと読まなければいけないと常に思っている。現実の社会はトランプ大統領が何を言ったかとか、厳冬の大雪のニュースなどの方に心が行ってしまう。
 SFマインドはいつまでも持ち続けなければと思っている。
                   (2017・1・25) 

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No.426 (Web版76号)1

あれから6年              

福田淳一

 三・一一…未曾有の大災害となった東日本大震災から今年で七年目を迎える。その中でも宮城県石巻市は、地震による津波により市中心部を含めて沿岸部一帯が水没するなど甚大な被害を受け、さまざまな課題を抱えながらも、現在も復興に向けてまちづくりを進めている。

 JR石巻駅を降りると、「ようこそ“萬画の国・いしのまき”へ」と言わんばかりに、「仮面ライダー」と「サイボーグ009」がお出迎えしてくれる。駅正面には003、駅舎の屋根には002もいる。さあ「石巻マンガロード」のはじまりである。
 駅から「石ノ森萬画館」方面への約一キロは石ノ森キャラクターのモニュメントが三十体以上立ち並ぶ「マンガロード」が整備されている。
 その終点にマンガミュージアム「石ノ森萬画館」がある。
  その「石ノ森萬画館」が開館10周年を迎えようとしていた二〇一一年三月十一日、日本全土に大きな衝撃を与えた東日本大震災が発生した。
 想定外の巨大な津波が北上川を逆流し、「石ノ森萬画館」にも襲いかかった。その時押し寄せた津波は約六・五メートルの高さにおよび、それにより「萬画館」の正面玄関のガラスは割れ、大量の瓦礫やヘドロが流入し、一階部分は壊滅的な被害を受けたのだった。幸いにも萬画館の一階の天井までの高さは約八mあり、石ノ森先生の原画や、展示物のある二階や三階は無事であった。二階には石ノ森章太郎の原画約九万点も収蔵されていたのである。震災以降、この原画は石森プロに返却され、現在は石森プロが全て管理している。
 また、この「石ノ森萬画館」は、石ノ森先生の発案による未来へと向かう船(宇宙船)をイメージしてデザインされ、斬新な卵型をしていたことも幸いした。その形状により東北地方に壊滅的な打撃を与えた津波の猛威にも耐えることができたのである。

 津波に襲われたとき、「萬画館」に残ったスタッフは、近くの橋に残された人々や濁流に流されてきた人たち約四十人を救い出し、「萬画館」に誘導した。この時震災の影響により、混乱は続き自衛隊が「萬画館」に残された人たちを救助に来たのは、なんと震災発生から五日目のことだった。震災から十日程経過した頃には、萬画館スタッフは、瓦礫やヘドロを片付けるようになったが、「萬画館」一階は大きな被害を受けており、電源部が壊れ、電気は付かず全ての機能は停止したままだった。
 そんな中、全国各地から多くのボランティアが集まり瓦礫の撤去や清掃を手伝ってくれるようになった。ボランティアは、先が見えない「石ノ森萬画館」再開に、希望の光も与えてくれた。
 また、「マンガロード」にある「仮面ライダー」の立像は、大震災のとき市中心部を襲った津波にのまれても壊れる事もなく立ち続け、その雄姿は被災した石巻市民に勇気や希望を与え続けた。
 災害時、「マンガロード」に設置されていた石ノ森作品の多数のモニュメントは、津波の被害をまともに受けていた。あるものは瓦礫に埋もれ、あるものは手足が傷つき、なかでも「キカイダー」と「シージェッター海斗」の二体はどこかに流されてしまったのだ。
 さらに、被災した「石ノ森萬画館」がいつ再開できるのか、その見通しがつかないことから、三月三十一日、萬画館の大半の職員が解雇となってしまった。
 しかし、子供たちに笑顔になって欲しいという思いから、各スタッフが自主的に集まり無償で活動し、五月五日、恒例の「春のマンガッタン祭り」が復興イベントとして開催された。
 私も微力ながら、萬画館を応援する冊子を作ってコミケ等で販売し、その売り上げを義援金として送ったりもした。
 七月二十二日には「復活祭」が開催された。
 その時津波で流されてしまった「人造人間キカイダー」が東京アニメフェア実行委員会の支援により蘇り、そのモニュメントの除幕式が行われた。また、有志からなる「江古田原組」からは、津波により流失してしまった車両の代わりに「新・石ノ森萬画館号」が寄贈された。私もその有志の一人で、車体に名前が記載されている。

 二〇一二年八月十一日(土)夜、石巻まちなか復興マルシェにて「劇場版仮面ライダー電王 俺、誕生!」の上映会が行われた。スクリーンは…なんと修復工事中の萬画館の外壁。その企画の主催が、石ノ森と縁のある、「岡田劇場」だった。
 「石ノ森萬画館」が建つ中洲の入り口には、「岡田劇場」と呼ばれる映画館があった。
 この映画館に、石ノ森少年は自転車を走らせ何度も映画を観に来ていた。今、この石巻と生家のある登米市の間には「三陸自動車道」という高速道路があり、自動車でそれを利用しても四十分ほど掛かる距離である。石ノ森少年はその距離を、自転車を使って映画を観るために何度も何度も往復したのである。
 デビュー作となった「二級天使」のアイデアとなったと思われる「素晴らしき哉、人生」や、珠玉の名作「あかんべえ天使」へと昇華させた「文無し横丁の人々」などの映画は、この「岡田劇場」で観たのかも知れない。このように石巻市は、石ノ森少年にとってなくてはならない街であったことからも、石ノ森章太郎はこの地のまちおこしに協力し、やがて「石ノ森萬画館」が建設される一因となった。晩年、石ノ森先生はこの石巻を終の棲家にする事を考えていたと聞く。
 この「岡田劇場」は、震災直前に全面改装が行われているが、地震による津波の被害で建物は流失してしまったが、現在も様々な場所で映画の上映活動を行なっている。特に被災地域では映画の無料上映会などを行い、被災地のみんなの笑顔を取り戻す為、日々復興を目指して頑張っている。
 私が石巻を初めて訪ねたのは、二〇〇〇年七月。「石ノ森章太郎ふるさと記念館」のオープニング式典に出席するため、その前日を石巻で宿泊した時だった。その時「石ノ森萬画館」は来年のオープンに向けて建設の途中だった。
 二〇〇九年からは、自家用車にて家族で毎年この石巻を訪ねている。家からこの石巻までは往復一四〇〇キロ余り、最初は遠かった道のりも今では遠さを感じなくなってきている。
 二〇一二年、震災が発生した年の夏も石巻を訪ねた。「石ノ森萬画館」は休館し、瓦礫の山が何か所もうず高く盛られ、津波の傷も生々しく残り、痛々しい街並みを目にした。
 被災地を案内していただき、震災の恐ろしさを目の当たりにしたのだが、一年、二年、三年と石巻を訪ねる度に、復興していることを感じ、皆さんの努力に頭が下がる思いだった。
 そしてついに東日本大震災から一年八ヶ月後の二〇一二年十一月一七日「石ノ森萬画館」はリオープンを果たした。
 この時「石ノ森萬画館」は、震災前の輝きを取り戻した。しかし、この時はあくまでも「現状復帰」でしかなかった。
 萬画館は次のステップへと向かう。二〇一三年の二月一二日から同年三月二二日まで、館内展示をリニューアルするために再び休館する。
 そしてついに三月二三日、「石ノ森萬画館」は装いも新たにリニューアルオープンを迎えたのである。
 二階の展示室が大幅に改装された。「サイボーグ009の世界」は、誕生編をモチーフにメンバーは緑のコスチュームをまとい、メンバーそれぞれにギミックが仕込まれていた。
 「仮面ライダーの世界」も、全ライダーのマスクが展示され、仮面ライダーに変身できる体験アトラクションも追加された。
 映像ホールも、「龍神沼」と「消えた赤ずきんちゃん」に「シージェッター、海斗特別編」も加わった。
 「石ノ森萬画館」がリニューアルオープンした後も、様々な「まちおこし」の企画が展開されている。昨年は菅原芳人セレクションの「仮面ライダー缶バッジ」のプレゼントがあるスタンプラリーがあった。今年はどんな楽しい企画が待っているのだろう。
 今年もそろそろ、石巻に行こう。

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