No.428 (Web版78号)3
SF essay(247回)
川瀬広保
シルヴァーバーグ「時間線をのぼろう」
「SFが読みたい!2017年版」を買った。毎年、買っている。見るところは、各出版社の今年一年のSF関係の出版予定のページ、海外、国内のランキングなどだ。だが、今号は伊藤典夫へのインタビューが載っていたので、そこを真っ先に読んだ。
かつての名作、傑作、問題作などが次々と新訳版で発行されている。今度は、伊藤典夫訳『時間線をのぼろう』(ロバート・シルバーバーグ)だ。4月末の発行らしいので出たら買うつもりだ。と思っていたら、HPを見ると6月になっていた!
そのシルヴァーバーグにサインをもらったのも、もうだいぶ過去になった。横浜で開催された世界SF大会にシルヴァーバーグが現れたときは、サインをもらおうとするファンが長蛇の列になったことを思い出す。その時にもらったサイン本がこの『時間線を遡って』だった。(新タイトルは少し変えてある)
「小説工場」の異名を取ったシルヴァーバーグだが、サインしてもらったときに、「これはまだ版を重ねているのですか」と聞いてきたので、「そう思います」と答えたら、メモを取っていたことを思い出した。ハードなら唯一のクラーク、面白さを誇るエンターテインメントのハインライン、構成のとれた未来史が圧倒的なアシモフに比べると、シルヴァーバーグは常に平均点以上の小説作りのうまさというべきか、それぞれ個性はあって面白い。
さて、春分の日も過ぎて、もう暖かくなってきたかと思っていたら、今日あたりはまだ寒い。国会は喚問で紛糾しているし、韓国では、大統領は逮捕されるかもしれないし、アメリカはどこまでも二分化してくるし、東京都元都知事は年老いたが攻め続けられるし、全勝を続けてきた稀勢の里はまさかのケガで、休場になったみたいだと思っていたら、強行出場と出ている。このように、この世は混沌としていて、変化し続けている。混沌としているのが常らしい。秩序というものがなかなかない。
SFだけは、明るい未来を創造・想像していきたいものだ。どんなに文明が進歩しても、機械は壊れるし、電池がなければ動かないし、人々の心はより便利さを求めるが、そんなにうまく行くわけはない。
ロボットがお年寄りの会話相手になっているというニュースを見たが、ロボットではなく、老若男女人間同士でわかりあい、伝えあいたいものだが、どうやらそれも難しいようだ。
(2017・3・25)
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