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2017年5月

No.429 (Web版79号)2

SF essay(248回)

川瀬広保

 4月後半に入り、やっと暖かくなってきた。桜も散り始めた。日本人は桜の開花に大きな関心がある。季節を感じ、気温が暖かくなるからだろう。入社式や入学式のニュースを見ていると、4月だなと思う。

 さて、韓国の慰安婦少女像の問題で、筒井康隆のブログの発言がやり玉に挙げられていて、大きなニュースになった。『モナドの領域』は、韓国では発売禁止になったようだが、私はそれをすでに読んだ。難しくて、読了に時間がかかったが面白かった。
 決して、批判されるような作品ではないと思う。未来がわかる神がいて、これからどうなるか聞けば必ず答えてくれる。筒井康隆最後の作品という触れ込みだった。

 さて、土星に地球外生命が見つかるかもしれないそうだ。NASAがまもなく重大発表をすると言っている。

 以下、新聞記事の引用

現地時間の4月13日に行われた、NASAの重大発表。それは、土星の衛星「エンケラドゥス」の海で熱水噴出が存在する証拠が発見されたというものでした。
 この熱水噴出は地球でも深海に存在し、生命活動の場となっています。つまり、エンケラドゥスの熱水噴出も生命活動の場となっている可能性がある、というのが今回の発表の概要です。なお、今回の観測には土星探査機のカッシーニが利用されています。
 エンケラドゥスは表面を分厚い氷の層が覆っていますが、その下には海が存在していることが予測されています。そしてエンケラドゥス表面からの噴出には水素(H2)が含まれていることを発見。これはエンケラドゥスの海に継続的な熱水噴出が存在し、それが岩石と反応して水素を形成していると考えられるのです。
 エンケラドゥスは直径が504キロほどの、土星の6番目に大きな衛星です。そしてガスの噴出に含まれている水素の濃度は0.4〜1.4パーセントほど。その他にも二酸化炭素が0.3〜0.8パーセントほど見つかっています。一方地球の深海の熱水噴出孔の周りには、硫化水素やメタンから有機物を生成する微生物が存在し、その周囲には貝やエビ、カニなどが集まる生態系が形成されることがあります。
 今回の発見はまだまだ直接の生命の発見ではありませんが、もしかしたら土星衛星の氷の下にまだ見ぬ生命がいるかもしれない……と思うと、ワクワクしてしまいますね!
 (以上、引用)


 昔、小学生のころ、初めて土星の写真を見て、「どうしてこの星には輪があるんだろう?」と不思議に思い、やがて学習望遠鏡で初めて土星を見た時を思い出す。それから、50年余が過ぎ、このようなニュースに接すると、飛躍するかもしれないが、この太陽系のどこかに土星人などがいるのではないかと思ってしまう。現実の世界は、このニュースのように、まだ熱水が噴出しているというだけだが、われわれ人間の想像力は、われわれ以外の知的生命体を想像してしまう。

 もし、この宇宙にわれわれ人類だけしかいないとしたらー犬や猫、鳥、魚、昆虫、植物なども一切ない無機質の世界だったとしたらと考えると、われわれは全くの孤独に陥ることになる。朝鮮半島で、戦争直前だというニュースより、このエンケラドゥスで熱水が見つかったというニュースの方が何か胸をワクワクさせるものをもっている。この宇宙はきっと生命でいっぱいなのだ。たまたま地球という惑星に生命があふれかえっているだけで、その他の惑星などにも何らかの生命がいるのだ。きっとそうだと期待してしまう。

 そんなことをあれこれ考えさせられる今回のニュースである。

 さて、その地球はどうもきな臭い状況になってきた。毎日、報道されている通り、人間はもともと戦争を好むものなのだ。以前、見たSF映画の中で「和平はない」とエイリアンが冷たく言った言葉はそのまま、地球に住んでいるわれわれ人類のごく一部の人にも当てはまるのだろう。
 だからといって、毎日バカなテレビ番組を見て「アハハ」と笑っている大勢の(?)中に入りたくはない。

 世界のどんな要人や支配者も年齢には勝てないし、この地球から逃れられる人間はいないのだ。人はもっと宇宙も見て、考えて敬虔な気持ちにならないといけない。

 土星の衛星、エンケラドゥスから熱水が噴出しているというニュースの方が、戦争前夜だと騒ぐニュースよりいいと思う。

 人類はおごってはいけないのだ。あまりおごっていると、自滅するのではないかと思ってしまう。

 さて、次は伊藤典夫訳『時間線をのぼろう』の発行を待っています。

                     (2017・4・24)

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No.429 (Web版79号)1

手塚治虫先生の初期長編マンガについてあれこれ

by渡辺ユリア

皆様今日は。今年の桜は長く咲いてキレイでした。お花見には行かれましたか?
さて、今回はSFマンガについて語らせて頂きます。ルーナティック31号の特集にもタイトルだけは書入れました。「地底国の怪人」
この本は、角川書店発行の角川文庫 手塚治虫初期傑作集の1冊で平成6年11月25日発行。同じく12月10日再版発行と奥付けに記入されています。元々は1948年2月20日不二書房より発行されたもので、発行当時の復刻版なので2色ずりである。この角川文庫には「地底国の怪人」と「魔法屋敷」が載っています。
では「地底国の怪人」の紹介を。…最初の1Pめで大爆発が起こり、次のページをめくると、大きな飛行機が降下しているではありませんか。見ひらきのページで、まずその2P〜3Pめで構図の斬新さに驚きました。当時(1948年)には、、もっと驚いたでしょう。そして4Pめには、その飛行機は墜落する。5Pめには、その事件の号外新聞を走って配る売り子の少年の図。テンポいいですね。その下には事故現場に急ぐ救急車と人々の図。この5Pで私はすっかりその物語の中に入りこんでしまいました。
そして、その飛行機のパイロットは病院のベッドで息子のジョンに言葉をかける。『おまえは大きくなったらきっと安全ですばらしいのりものを発明しておくれワシの遺言じゃ』…と言って、そして次のページでタイトルがあらわれます。その扉をひらくと、ふしぎなウサギとそのまわりの多くの科学者たちの絵、そのウサギの動きが面白いのです。その後、科学者たちの力によって進化したそのウサギは耳男(みみお)と名づけられました。進化させられたウサギ…。
その後、耳男はその屋敷を抜け出し、やがて街に出る。服をきたウサギ。その後、ジョンの屋敷に転がり、やがてジョンの助手となる。ジョンはロケット型の地底列車の計画を立てていた。地球を貫通して12700㎞を12時間で疾駆するというロケット列車を。そしてその列車は完成し、ジョンは耳男と共にロケット列車に乗り込み、地の底への旅へと出かけていく。ロケットの先がのこぎりのようになっており、地中の岩をみずからほって、トンネルのようにして地底へと行くロケット列車なんて。しかし、ある所まで来てロケット列車は止まってしまう。その後2週間後、その列車のほった穴をたどってジョンの仲間が自動車に乗ってジョンたちのそうさくを開始した。そこで車の前にあらわれたふしぎな人々…その正体は何であろうか…というストーリーである。人々の動きやポーズや構図などがそしてロケット列車のアイディア。その当時、斬新であったと思われます。  ではこのへんで。
                    2017.4.17 yullia




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No.428 (Web版78号)4

SF映画がまた熱くなってきた

中村達彦

 2017年も早くも3ヶ月が経とうとしている。その間にSF映画は幾つも面白い作品が公開された。昨年、日本のSF小説はハヤカワ書房が一人勝ちした感がある(SF作家・森下一仁による自サイトで毎年恒例のSFベスト2016は、先生の日記3月1日から入っていけるので、ご参照ください)。またSF映画は「シン・ゴジラ」と「君の名は」が大当たりし、紅白歌合戦で取り上げられるほどになったのが印象深い。

 2017年に入ってからは、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」だろう。一昨年公開された本編続編にあたるエピソードⅦは、新作に心が躍ったものの、正直、物足りない感をぬぐえなかった。これに対し、外伝の「ローグ・ワン」は本当に面白かった。
 幼い頃に両親と生き別れた女性戦士ジンが、自らの自由と引き換えに、自分の父の消息を探るうちに、行動を共にする出身も性格も異なる仲間たちと出会う。後半はチームローグ・ワンを結成し、帝国軍に戦いを挑む。鍵は、帝国軍の最終兵器デススター。
 親の仇で非道な帝国軍長官に加え、ダースベーダーも登場する。顔見世程度ではなく、悪の権化の活躍もきちんと見せてくれた。
 エピソードⅣ直前の物語ではあるが、ラストはぴたりと繋がった。
 本作公開直後に訃報を聞いたキャリー・フィッシャー演じるレイア姫の登場はうっときた。本家への敬意と同時に追い越そうとするスタッフの心意気が伝わってくる。
 強く美しいジンは主人公として申し分ない。残念ながらルークやソロと出会うことはなく、おそらくこれっきりの出演となるが、相応のインパクトを見せてくれた。インパクトでは、デススターの強力な破壊力も圧倒的な迫力をみせてくれた。
 作品を撮ったのは、ギャレス・エドワーズ。『GODZILLAゴジラ』の監督である。手がけた作品は少なく、まさに大抜擢である。今後の活躍が注目される。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」の続編で、「宇宙戦艦ヤマト2202」がスタートした。前作と同じ全26話の構成である。1978年に公開された「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」と「宇宙戦艦ヤマト2」をベースとしており、敵はもちろん白色彗星帝国。
 第1話から想像を裏切る展開となった。まだ作品を見ていない人のためあまり言えないが、最初から激しい戦闘シーンが勃発し、新造戦艦アンドロメダなど懐かしいメカが続々と登場し、顔見せだけに終わっていない。そしてヤマトも。
 第2話は少しダウンした感があるが、地球各地で働く主要人物のその後が相応に描かれている。ラストは、沢田研二のあの歌で締めくくられている。
 全7章26話で、第2章は6月下旬公開予定とのこと。今回鍵になるスタッフは、小説家の福井晴敏、「機動戦士ガンダムUC」、4年前にCGアニメで制作された「宇宙海賊キャプテンハーロック」の原作でも知られる。唯のリメイクに終わらず、テレサや森雪、前作で亡くなった沖田艦長について、新設定を用意しているとのこと。ちなみに重要な秘密を持つテレサの声は、「アナと雪の女王」で注目された神田沙耶加が演じている。
「さらな宇宙戦艦ヤマト」を作るにあたって、主要スタッフがハワイまで「スターウォーズエピソードⅣ」を観に行った。両作を見比べると、確かに通じるものがある。そして40年後、両作品の同時期公開、因縁めいたものを感じさせる。

 同時期、アニメ映画「ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール」が「ヤマト2202」よりヒットしているようだ。電撃文庫でシリーズ化されたライトノベルシリーズが、2012年から2度TVアニメ化され、ゲームやコミックなどなど複数の展開を続けている。
 電脳空間の中で作られたファンタジーの世界へ入って剣と魔法の世界でプレイヤーを演じるが、その電脳空間ソードアート・オンラインが意図的に現実世界と隔絶され、主人公の少年キリトと少女アスナは戦い、現実世界への帰還を目指す内容である。原作もアニメも電脳空間から現実への帰還を果たしたが、現実世界で新しい陰謀と立ち向かっている。
 舞台は現在から数年位未来の東京で、電脳空間やバーチャルリアリティの技術が、現実の生活により深く影響を与えている。
 今回の映画は、再び新たな陰謀に立ち向かう内容である。物語の鍵のバーチャルアイドルの声を、こちらも神田沙耶加があてている。ストーリーの構成はやや定番だが、明らかにサイバーパンクSFである。主人公キリトの人柄に惹かれた仲間たち(ほとんど少女)とチームを組み、ヒロインアスナも戦いに赴く。いささか一見さんお断りの感もあるが、ソードアート・オンラインシリーズは今後も幾つかの展開が予想され、注目される。

 他にも同時期の「君の名は」には興行成績では及ばないが、完成度の高さから注目された長編アニメ「planetarian〜星の人〜」について紹介する。
 遠い未来、核戦争で荒廃した地球をさすらう老人が、人々が細々と生き残るコロニーにたどり着き、子供たちと出会う。自分が若いころに体験した、優しい少女アンドロイドが管理するプラネタリウムとの出会い。
 かつて無人兵器の攻撃をかわし偶然、プラネタリウムに立ち寄った青年は、人がいなくなってからもプログラムに従ってガイドを続ける少女と出会った。その思い出が、その後の人生に大きな影響を与えたのだ。
 実はプラネタリウムのある場所は浜松がモデルで、見覚えのある場所があちこちにある。東海SFには、この作品について聞いた方がいるかも。
 最近、DVDのレンタルがスタートしたので視聴してもらいたい。主人公の青年を「ヤマト2202」で古代進を演じる小野大輔があてている。泣ける。隠れた小粒の秀作だ。

 どの作品もストーリーもさることながら、コンピューターグラフィックなどデジタル技術の向上により、作画の乱れが昔に比べて少なくなり、エフェクトでもより迫力ある演出が可能になったことも見逃せない。
 他にも、3月下旬に封切られる「ひるね姫」が面白そうだ。もうすぐ「キングコング」の新作が公開される、ゴジラもアニメも作られるとのこと。こちらは「魔法少女まどか☆マギカ」のほかにも、「楽園追放」などのSFテイストの作品を手がけたニトロプラスが脚本を手がけるそうで楽しみである。
 また東映は、映画で「マジンガーZ」新作もやるそうでそれも気になる。

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