No.428 (Web版78号)4
SF映画がまた熱くなってきた
中村達彦
2017年も早くも3ヶ月が経とうとしている。その間にSF映画は幾つも面白い作品が公開された。昨年、日本のSF小説はハヤカワ書房が一人勝ちした感がある(SF作家・森下一仁による自サイトで毎年恒例のSFベスト2016は、先生の日記3月1日から入っていけるので、ご参照ください)。またSF映画は「シン・ゴジラ」と「君の名は」が大当たりし、紅白歌合戦で取り上げられるほどになったのが印象深い。
2017年に入ってからは、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」だろう。一昨年公開された本編続編にあたるエピソードⅦは、新作に心が躍ったものの、正直、物足りない感をぬぐえなかった。これに対し、外伝の「ローグ・ワン」は本当に面白かった。
幼い頃に両親と生き別れた女性戦士ジンが、自らの自由と引き換えに、自分の父の消息を探るうちに、行動を共にする出身も性格も異なる仲間たちと出会う。後半はチームローグ・ワンを結成し、帝国軍に戦いを挑む。鍵は、帝国軍の最終兵器デススター。
親の仇で非道な帝国軍長官に加え、ダースベーダーも登場する。顔見世程度ではなく、悪の権化の活躍もきちんと見せてくれた。
エピソードⅣ直前の物語ではあるが、ラストはぴたりと繋がった。
本作公開直後に訃報を聞いたキャリー・フィッシャー演じるレイア姫の登場はうっときた。本家への敬意と同時に追い越そうとするスタッフの心意気が伝わってくる。
強く美しいジンは主人公として申し分ない。残念ながらルークやソロと出会うことはなく、おそらくこれっきりの出演となるが、相応のインパクトを見せてくれた。インパクトでは、デススターの強力な破壊力も圧倒的な迫力をみせてくれた。
作品を撮ったのは、ギャレス・エドワーズ。『GODZILLAゴジラ』の監督である。手がけた作品は少なく、まさに大抜擢である。今後の活躍が注目される。
「宇宙戦艦ヤマト2199」の続編で、「宇宙戦艦ヤマト2202」がスタートした。前作と同じ全26話の構成である。1978年に公開された「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」と「宇宙戦艦ヤマト2」をベースとしており、敵はもちろん白色彗星帝国。
第1話から想像を裏切る展開となった。まだ作品を見ていない人のためあまり言えないが、最初から激しい戦闘シーンが勃発し、新造戦艦アンドロメダなど懐かしいメカが続々と登場し、顔見せだけに終わっていない。そしてヤマトも。
第2話は少しダウンした感があるが、地球各地で働く主要人物のその後が相応に描かれている。ラストは、沢田研二のあの歌で締めくくられている。
全7章26話で、第2章は6月下旬公開予定とのこと。今回鍵になるスタッフは、小説家の福井晴敏、「機動戦士ガンダムUC」、4年前にCGアニメで制作された「宇宙海賊キャプテンハーロック」の原作でも知られる。唯のリメイクに終わらず、テレサや森雪、前作で亡くなった沖田艦長について、新設定を用意しているとのこと。ちなみに重要な秘密を持つテレサの声は、「アナと雪の女王」で注目された神田沙耶加が演じている。
「さらな宇宙戦艦ヤマト」を作るにあたって、主要スタッフがハワイまで「スターウォーズエピソードⅣ」を観に行った。両作を見比べると、確かに通じるものがある。そして40年後、両作品の同時期公開、因縁めいたものを感じさせる。
同時期、アニメ映画「ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール」が「ヤマト2202」よりヒットしているようだ。電撃文庫でシリーズ化されたライトノベルシリーズが、2012年から2度TVアニメ化され、ゲームやコミックなどなど複数の展開を続けている。
電脳空間の中で作られたファンタジーの世界へ入って剣と魔法の世界でプレイヤーを演じるが、その電脳空間ソードアート・オンラインが意図的に現実世界と隔絶され、主人公の少年キリトと少女アスナは戦い、現実世界への帰還を目指す内容である。原作もアニメも電脳空間から現実への帰還を果たしたが、現実世界で新しい陰謀と立ち向かっている。
舞台は現在から数年位未来の東京で、電脳空間やバーチャルリアリティの技術が、現実の生活により深く影響を与えている。
今回の映画は、再び新たな陰謀に立ち向かう内容である。物語の鍵のバーチャルアイドルの声を、こちらも神田沙耶加があてている。ストーリーの構成はやや定番だが、明らかにサイバーパンクSFである。主人公キリトの人柄に惹かれた仲間たち(ほとんど少女)とチームを組み、ヒロインアスナも戦いに赴く。いささか一見さんお断りの感もあるが、ソードアート・オンラインシリーズは今後も幾つかの展開が予想され、注目される。
他にも同時期の「君の名は」には興行成績では及ばないが、完成度の高さから注目された長編アニメ「planetarian〜星の人〜」について紹介する。
遠い未来、核戦争で荒廃した地球をさすらう老人が、人々が細々と生き残るコロニーにたどり着き、子供たちと出会う。自分が若いころに体験した、優しい少女アンドロイドが管理するプラネタリウムとの出会い。
かつて無人兵器の攻撃をかわし偶然、プラネタリウムに立ち寄った青年は、人がいなくなってからもプログラムに従ってガイドを続ける少女と出会った。その思い出が、その後の人生に大きな影響を与えたのだ。
実はプラネタリウムのある場所は浜松がモデルで、見覚えのある場所があちこちにある。東海SFには、この作品について聞いた方がいるかも。
最近、DVDのレンタルがスタートしたので視聴してもらいたい。主人公の青年を「ヤマト2202」で古代進を演じる小野大輔があてている。泣ける。隠れた小粒の秀作だ。
どの作品もストーリーもさることながら、コンピューターグラフィックなどデジタル技術の向上により、作画の乱れが昔に比べて少なくなり、エフェクトでもより迫力ある演出が可能になったことも見逃せない。
他にも、3月下旬に封切られる「ひるね姫」が面白そうだ。もうすぐ「キングコング」の新作が公開される、ゴジラもアニメも作られるとのこと。こちらは「魔法少女まどか☆マギカ」のほかにも、「楽園追放」などのSFテイストの作品を手がけたニトロプラスが脚本を手がけるそうで楽しみである。
また東映は、映画で「マジンガーZ」新作もやるそうでそれも気になる。
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