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2017年10月

No.434 (Web版84号)3

SF essay(第253回)

川瀬広保

 暦では処暑だというが、8月24日の今日は猛暑である。

 SFマガジン最新号は、オールタイムベストSF映画総解説1である。また、筒井康隆へのインタビューの二回目も載っている。星新一、小松左京、光瀬龍らがもういなくなってしまった今、過去のことを語れるのは筒井康隆ぐらいしかいないので、興味を持って読んでいる。

 さて、ついこの間、浜松市天文台で行われた天文講演会へ行ってきた。兵庫県立大学天文科学センター天文科学専門員、鳴沢真也先生の「いる?いない?地球外知的生命」と題した講演である。70〜80人ほど参加者があったであろうか。
 年に一度のこうした講演会へ行くのもいいだろうと思ったからである。
 優れた天文学者は優れたSF作家になりうるし、逆もまた真であろう。カール・セイガン、アーサー・クラーク等々である。クラークは「生きているうちに宇宙人に会ってみたかった」と述べていた。鳴沢先生もこの講演会でそんなことを言われた。
 セイガンは映画「コスモス」で有名になった。
 この宇宙は善の知的生命で満ちているのだと信じたい。

 さて、想い出話をまた少々しよう。

 昔、私はSFマガジンを53号から買い始めた。その号には、星新一の『夢魔の標的』が連載されていた。後の数多くのショートショートより、何か愛着がある。以前、星新一が浜松へ来られたとき、出演者のひとりひとりが氏に何か要望を直接述べたとき、私は「もっと『夢魔の標的』のような長編を書いてください」と言ったことがある。ショートショートの神様にもっと長編を書けと言ったのだから的外れだったかもしれない。だが、本人はニコニコして聞いていた。

 ショートショートとして、私のお気に入りのタイトルをあげてみる。

「あーん。あーん」

 これは不思議な読後感をもたらす。何か教訓が含まれているような、ただ面白く書かれているだけのような子供向けの作品である。

「最高のぜいたく」

 主人公は、友人から誘いが来たので、そのお宅へ出かけていくと、暑いところなのに、部屋では暖房をしている。今度は、暑すぎて、冷房にするというような内容で、ラストの「最高の贅沢とはこういうものかもしれないな」という主人公のセリフがばっちり決まっていた。

「殉教」

 これは、子ども向けとは言えない。話に深みがあり、何回も読みなおした。生きる意味を考えてしまう。もしかしたら、星新一ショートショート1000編の中のベスト3に入るのではないだろうかと勝手に思っている。誰も漠然と抱いている死への恐怖が取り払われたらいったい人はどうするであろうかというアイディアをうまくまとめてある。

「おーい、でてこーい」

 英語の教科書に取り上げられたのは、この作品だ。将来、起こりうるいろいろなゴミ処理の問題を星新一は、見事にショートショートに仕立て上げた。だが、そんな思想性はもちろん、微塵も感じさせない。
 ついでに言うと、国語の教科書には、「繁栄の花」が採用された。

「ぼっこちゃん」

 不愛想なロボット美女が、飲み客を相手に、オウム返しに答え、最後はだれもいなくなるという考えてみれば恐ろしい内容だった。

「鍵」

 これは、名品である。これもラストのセリフ、「思い出なら持っている」が決まっている。一生かけて幸福を追求した主人公(だいたいエヌ氏とかエル氏など)は、お金に変えられない思い出を得たのだ。

「ごきげん保険」

 ちょっと気に入らないことがあると、すぐに電話をかけて主人公は文句を言う。すると、電話の向こうの人が、「ごもっともです・・・・・」といつも、話し相手になってくれるのだ。ある日、「最近、気がついたのだが、白髪が増えてきた。これは政府の政策が悪いのだ」などと姿の見えない相手にあれこれ思いのたけをぶつける。相手は慣れたもので、「これだけは、申し訳ありませんが、昔から人間の老化は避けられません。しかし、それに見合った金額をあなた様の口座に振り込むことで許していただけないでしょうか」「よし、いいにしてやる」
 最後のオチは、月末に支払う相当額の保険金にほかならないと言うウィットに富んだものだった。これなど、話し相手のいない高齢者にぴったりではないか。星新一は時代を先取りしていたのだと今になって思う傑作である。

 星新一のこうした多くの作品は、生半可な批評家の批評を超えたところにある。昔、筒井康隆があとがきで述べていたことが思い出された。簡単に批評されるような作家ではないのだ。

 さて、クラークは自伝『楽園の日々』で自分のことを語り、アシモフも自伝『アシモフ自伝』で自分の過去を詳細に述べた。尿管結石になったことまで書かれていた。小松左京も『SFへの遺言』で氏の自伝のようなものを書いた。
 星新一だけは、書かずに終わったが、死後、別の人が自伝を書いた。その人は生前の星新一に会ったことがないと述べられていた。私には信じられなかった。まあ、そういうこともあるのだろう。

 好きなSF作家を挙げよと言われれば、私は星新一をすぐにあげる。星新一には敵がいなかったと言われている。その人格と才能からであろうと思っている。
 星新一の作品は膨大である。名作・傑作も数知れない。その中から、何作かを選ぶことなどもともとできない。
 また、思い出したら、続きを書くかもしれません。

 さて、最近のアメリカと北朝鮮の過激な言葉のやりとりが毎日、大きなニュースになっている。狭い地球にミサイルが飛び交い、ごく一部の国の暴挙でこの地球がそれこそ壊滅しなねないように願う。日本にも被害が甚大にならないように、また日本以外の国にもだ。
 ごく最近では、太平洋上で、水爆実験をやるなどと言い出した。平和とは逆行している。
 最近の天候同様、予測がつかない。それもこれも、世界を動かすのは、人間の心だ。
 心を動かす善と悪は永遠のテーマだ。
 さて、もっと明るい話はないかな。

                       (2017・9・24)

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No.434 (Web版84号)2

 ドンブラコンLL

 中嶋康年

 前回の「ドンブラコンL」から6年、再び静岡市でのSF大会が8月26-27日、前回と同じ東静岡駅前の「グランシップ」で開催された。今回も「科学魔界」「BAMU」「イスカーチェリ」が発行している「SFファンジン」にコラムを書いた関係で、大会スタッフをしている「SFファンジン」の編集長にゲスト扱いにしていただいたのだが、参加費は払っているし、企画にもでないので、一般参加者と変わりはない。それより、今回もホール舞台の上に掲げてあった「第56回日本SF大会ドンブラコンLL」の看板を作らせてもらったことの方が貢献できたかな。
 例によって、基本はディーラーズをベースにして、ふらふらと歩き回っていたのだが、今回はディーラーズのホール内でAOIクラフトビールの販売、一部で有名らしい静岡市の「オタクな酒屋」の出店、昼時には弁当、モツ煮込みカレーの販売、駿府楽市、江崎書店の出店、カフェスタイルの出店など、飲食関係が多くあった。また、ホールの一角ではFMしみずの公開録音があり、鬼塚大輔が未公開SF映画の紹介をしたり、星雲賞海外長編部門受賞のピーター・トライアスのインタビューをした。同じホール内とはいえ、かなり距離があるので、ディーラーズに座っていてはまったく聞こえないので、わざわざ聞きに行かなくてはならなかったが。今年は、星雲賞が大会開催時より前に発表されたので、各種プロモーションがやりやすくなっている。先述したインタビューもしかり、ホール内の江崎書店にも受賞作がずらりと並んだ。サイン会も同じホール内で行われたが、ここではノンフェクション部門受賞の池澤春菜の人気がすごかった。他の受賞者が1列で済んでいるところ、池澤春菜だけが長蛇の折り返し。池澤の人気はここだけではない。開会式、閉会式の司会もやり、企画のパネラーとしても各所に出ていた。星雲賞受賞者発表の様子は「ニコニコ生放送」で7月22日に公開されたのだが、このときのゲストも池澤春菜で、話も面白く、各所でもてはやされているのもわかる。閉会式でも、なにかといえば引っ張り出され、「人遣いが荒いんじゃないですか?」と文句を言っていましたが。
 もうひとり、今年のSF大会を彩った人物は、草野原々であろう。正統派の池澤に対して、草野は「なんだこいつは?」という一種、芸人を見るような感じか。日本短編部門受賞挨拶にしても、声を張り上げるので目立つ、目立つ。暗黒星雲賞でもゲスト部門受賞、コスチューム部門次点(カエアンの聖衣)、企画にもパネラーとして多数出演とこちらもかなり忙しかった模様。
 夜は、イスカーチェリ・メンバーの三浦氏、安田氏と御年84才にして新刊「もはや宇宙は迷宮に鏡のように」が出た荒巻義雄氏、立命館大准教授で日本SF研究家のフランス人、ドゥニ・タヤンディエー氏、巽孝之氏と静岡の街へ繰り出しました。

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No.434 (Web版84号)1

ドンブラコンLLアフターレポート

by 渡辺ユリア

皆様今日は。今年の日本SF大会は静岡市のグランシップで8/26〜27にひらかれました。今年で第56回です。まず受け付けで参加証とひきかえにスーベニアブックなどの入った袋をもらいました。名札ケースに名札を入れようとしたら、…ケースに名札が入りませんでした。しかたないので少しおりまげて入れました。その後、ディーラーズルームに行って東海SFの会のスペースで新村さんと中島さんにお会いしました。少しおしゃべりできたので楽しかったです。少しいすにすわっていたら、向かいのスペースが菅浩江先生のMAIAのスペースでした。後で菅先生とおしゃべりして本を1冊かいました。サインつきです。『末枯れの花守り』の本です。
 では、開会式と星雲賞受賞式…司会のMCは、聞いたことがある声‥と思っていたら声優の池澤春菜さんでした。でもと中でFMしずおかのパーソナリティの方に交代されました。
 理由は、…池澤さんは星雲賞のノンフィクション部門で受賞されたのです。本は「SFのSはステキのS」エッセイストでもあるのです。受賞のコメントがおもしろかったです。…子供のころからどうしても上手に地球になじめなかった私。とくに学校ってものが危険だった。それで本をいつも読んでました。一番すきなのはSF。何でもありで自由で、そして6年前にSF大会によばれて(ドンブラコンLで)MCやって、そして参加してみたら、安心しました。みんな変でした。ちょっとほっとして、次のSF大会にも参加しました。SFのステキさをかいたこの本、SFありがとう…でした。
 ではコミック賞。秋本治先生の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が受賞。バックのスクリーンに、両津さんが月に行く‥という回のページがうつされました。先生のコメント…両さん自身がSFではないでしょうか‥に会場のみなさん‥大笑いでした。そうかもしれません。両さんのあのタフさは、人間ばなれしているかもしれません。
 海外短編部門受賞のケン・リュウ氏のビデオレターがあったり、海外長編部門のピータートライアス氏本人がステージにあがってコメント発表されたり、…と楽しかったです。トライアス氏をはじめてみた感じが、‥アニメやマンガ好きの日本の若者のノリと似ているな‥という感じです。英語もゆっくりと話してくださったので、なぜか大体のイミがわかってしまいました。きいたことのある単語があったせいもあります。そのあと中原氏が日本語にかえて話して下さいました。
 そして日本短編部門受賞の草野原々(くさのげんげん)氏が登場。白地に赤い文字でカエアンとかかれたTシャツ姿の原々氏は若い、デヴュー作で星雲賞受賞という方。でもなにか かわった人‥という印象でした。
 では分科会のことを…急きょきまった『秋本治「星雲賞」受賞特別企画』に参加してきました。司会はマンガ家の一本木蛮先生。話はたのしかったです。亀有えきの北がわにある交番に行くと、もし「両津さんはいますか?」とたずねると、奥の方にいらっしゃる年ぱいのおまわりさんが‥「今、両さんはパチンコに行っているよ…」とこたえるそうです。では次回へ
                       yullia 2017.9.22

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