No.439 (Web版89号)1
シマ・リン。孤独なアストロノートの魂の軌跡 新村佳三
2018年の冬アニメ、話題作、問題作が目白押しだ。
だが、その中で最も注目を集めているのが、シマ・リン、という名の高校生の物語だ。
舞台は現代の山梨県の本栖湖あたり。シマ・リンは、そこの高校に通っている。
春夏秋は、普通の高校生として生活しているが、冬になると、一人で孤独なキャンプ生活を送る。
作品では、シマ・リンの野外での生活の様子が、淡々と描かれている。
はじめのうちは、別にとんでもない事件が起きるわけではない。静かな生活描写が続く。
冬のある日、近くのキャンプ場に自転車で出かける。管理事務所で手続きを行う。
キャンプ場のテントを張る場所を決める。冬なので、他のキャンパーはあまりいない。
「他のキャンパーが少ない」
これがシマ・リンが冬にキャンプをする理由らしい。
テントを張り、椅子を設置し、読書をする。
寒くなってくると、火を起こし、日が落ちてくると、コンロを用意して、食事をする。
これがなぜか面白い。
理由は、シマ・リンの様子である。
ほとんど表情の変化はない。だが、楽しそうなのは伝わってくる。
キャンプ場の周辺部の散策、焚き火用の枯れ木の採集の様子が、
シマ・リンのモノローグと共に描かれる。
探検者の好奇心の充実が感じられる。
まるでアストロノートのように。
シマ・リンにとっては、自転車が宇宙船であり、キャンプ場が辺境の惑星、
そしてテントが着陸船なのだ。
冬のキャンプなので、防寒のために重装備になるのも、雰囲気を出している。
積荷が満載された自転車で、すれ違う車もほとんどない寂しい山道を一人走っていく様子など、
アストロノートの孤独な宇宙飛行を思わせる。
シーズンオフのうら寂しいキャンプ場に佇み、白い息を吐くシマ・リン。
折りたたみ椅子に座って、毛布に包まれたまま暖かい飲み物を飲み、本のページをめくる。
本の内容は、地球の不可思議、怪異、もしくは宇宙の神秘、などだ。
孤独なアストロノートが、遠い故郷に想いを馳せるかのよう。
夜になれば、頭上は満天の星。
帰路の無事を願い、眠りにつく。
だが、突然、静穏は破られる。
エイリアンが現れ、喧騒と狂乱の只中に…
後は、どうか作品をご覧ください。
ナレーションは、新スタートレックのライカー副長役の大塚明夫氏です。
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