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No.440 (Web版90号)1

石ノ森章太郎
アフリカ旅行と青いけもの

福田淳一

 石ノ森章太郎の海外旅行は、1961年(昭和36年)若干23歳という若さで8月24日から約3ヶ月もの長期間に渡って世界を一周したものが有名である。
 この時は、ハワイ経由でサンフランシスコへ入り、アメリカを横断してニューヨークへ入った。そこからヨーロッパへ渡り各国を巡り、エジプト、香港などを回ってきた。

 続いて1968年(昭和43年)30歳の時、9月27日から10月3日の1週間で香港、マカオ、台湾へ旅行に行っている。これが二度目の海外旅行となる。
 この時は藤子不二雄、園山俊二、つのだじろう、鈴木伸一との旅行であった。いわゆる「トキワ荘」時代からの仲間であり、「新漫画党」の仲間、当時は「スタジオゼロ」のメンバーでもあった。
 この旅行には、遊びに行くという以外に香港、台湾で「サイボーグ009」等の海賊版が出回っていたため、それらの国のマンガ家の良識を促すという目的も持っていた。

 そして、1970年(昭和45年)32歳の時、7月1日から7月25日までの予定で、石ノ森章太郎は藤子不二雄Ⓐと園山俊二のマンガ家仲間三人でアフリカ旅行へ出かけたのである。
 アフリカでは、ケニア・タンザニア・ウガンダの赤道付近の3か国を回っている。このアフリカ旅行は20日頃までで、その後団体旅行とは別に、ニース(フランス南東部)やリスボン(ポルトガル)・ロンドン(イギリス)などのヨーロッパを旅して帰ってきた。
 このようにして「アフリカ旅行」へ行った翌年の1971年(昭和46年)、石ノ森章太郎は、「青いけもの」という作品を1月4日から10月16日まで230回『河北新報』に連載する。
 この『河北新報』は、宮城県仙台市に本社を置き、東北地方を中心に発行されている新聞になる。この新聞に1月4日の月曜日から土曜日まで、日曜日を除き毎日1ページづつ掲載されていた。

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 ある動物学者とそのむすこが世界動物保護連盟の命を受け、世界中の動物保護の状況をカメラに収めるため旅をします。ある時は密猟グループと、ある時は”公害”企業と戦ったり、また動物たちの生存競争に巻き込まれる場合も有ります。そして行く先々で”青いけもの”を目撃するのです。それは深い青い地毛に白い斑紋のある不思議な動物なのです。この青いけものの正体は?敵なのでしょうか、味方なのでしょうか。
 作品の中には世界中の滅びゆく珍獣奇獣が登場しますが、この作品のアイディアは石森氏が河北新報社の以来で、ことし七月、アフリカ旅行をしたさい生まれたものです。作者はここで動物たちの滅亡は人類の滅亡につながることを描きたいと語っています。

 これは熱血冒険マンガです。これは愉快な動物マンガです。これはまたファンタジックなSFマンガでもあり、深刻な社会派マンガでもあります。ふしぎな”幻の青いけもの”を追って世界中を旅する動物学者親子が、さまざまな珍獣奇獣とのかかわりあいの中から、生命とは何か、そして人間とは……という問題を考えて行くのです。動物学者親子は作者の私であり、読者のみなさんでありえたら(になりえたら)この作品は”成功”したことになるでしょう。ご期待の上、ご支援いただきたいと思っています。

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 この「青いけもの」の単行本には収録されていない予告を見ると興味深い。まずはこの作品のアイデアが、河北新報の依頼でアフリカ旅行をした際に生まれたものと書かれていることである。以前から「青いけもの」の内容やテーマを見ると、「アフリカ旅行」での体験が生かされて生まれた作品であるように感じていたのだが、予告を見た時この二つが完全に結びついたのが嬉しく感じられた。
 この様に「アフリカ旅行」は、大自然の中で連鎖のバランスを壊し始めた人類に一石を投じた「青いけもの」という名作を生み出した。だが、この「青いけもの」は全集を除き大都社からB6判の単行本として一回発行されただけで地味であまりメジャーにはならなかったのが残念だ。
 しかし、もう一つこの「アフリカ旅行」での体験から生まれたメジャーな作品がある。それが「仮面ライダー」である。「仮面ライダー」はこの「青いけもの」の連載開始から3ヶ月後の1971年(昭和46年)『ぼくらマガジン』の16号(4月12日号)から登場する。
 仮面ライダーは第1話「怪奇くも男」の中で「大自然がつかわした正義の戦士 仮面ライダー」と名乗りを挙げる。”仮面ライダー”は”青いけもの”とイコールという事になる。そして作品に登場する怪人たちは、環境破壊や公害などにより絶滅の危機にあった昆虫や動植物をモチーフに描かれていた。

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