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No.445 (Web版95号)2

 SF essay(264回)

 川瀬広保

 藤子不二雄Aの「81歳いまだまんが道を」を注文し、入手した。新刊が出ていることを知らないでいることが多い。書店にも並んでいないとそのままになってしまう。
 私は、藤子不二雄Aの「まんが道」のファンである。これは〈青春グラフィッティ〉と誰かが言ったがまさしく藤子不二雄の青春時代のエピソードがいろいろ綴られている。
 徹夜で作品を書き上げたとか、たくさんの注文を引き受け過ぎて、あらゆる出版社から干されたとか今や伝説になっているような有名なエピソードが多い。藤子不二雄Aは、現在84歳だ。まだ、現役漫画家として働いていることに、敬意を称したい。64年間、漫画家を続けているわけだが、亡くなった水木しげるにも言及して、自分が決して最高齢の漫画家ではなかったとある時気づいたことを認めている。「まんが道」で読んだいろいろのエピソードの文章版だが、気楽に読める。大病をして、入院したりしていたが、もともとおおらかな性格(?)のためか、大事には至っていなかったようだ。
 私は、もちろん藤子・F・不二雄のファンでもある。二人の画風はぜんぜん違う。性格も違う。二人でやってきたから、長く続けられた。もし、ひとりだったら、続かなかっただろう。18歳で高校を卒業して、そのころすでに漫画家としてデビューしていた。高校を卒業して、二人とも、新聞社や製菓会社にいったん就職したが、3日でやめたとか、東京へ行く決心をして、漫画家になるという夢を追いかけたというあたりのエピソードは興味不快。また、手塚治虫に会いに行き、プロとはすごいものだと知らされ、持参した30枚の原稿を見せないまま帰ったという有名な話もある。もし、二人とも民間の会社に就職して、そこでずっと働いていたなら、藤子不二雄も藤子・F・不二雄も藤子不二雄Aも現れなかっただろう。また、手塚治虫やトキワ荘に集まった漫画家たちとの交流がなかったら、「ドラえもん」も「まんが道」もこの世に存在していなかった。
 藤子不二雄Aが84歳でもまた漫画を描き続けているということは、すばらしいなどという簡単な言葉では言い表せない。
 「少年時代」が映画化された時の経緯も興味深い。「まんが道」や「愛・・・知りそめし頃に」が漫画による藤子不二雄Aの自伝だとすれば、この「81歳いまだまんが道を」は文章による自伝である。極真空手の大山倍達とも会っていたとは初めて知った。人との交流が多いのだ。この文庫本は一度、「まんが道」で読んだ数々の場面をまた思い起こしてくれた。著者の自伝にもなっている。読みやすい文章である。

 福田さんから、会員の訃報を知らされて、びっくりした。昔、白柳さんが亡くなったのも、55歳ぐらいだったと記憶している。長く東海SFの会に在籍していると、時々訃報に接する。健康に気をつけていたとしても、どこに何があるかわからない。SFファン活動をするとき、健康は一番だ。亡くなった方のご冥福をお祈りすると同時に、健康でいつまでもSFファン活動をして行きたい。

 森東作さんから、つい最近、「SFファンダムデータベースVER1.8」が送られてきた。いつものことだが、地道なご努力には頭が下がる。SFファンあってのSF界であり、その裾野がずっと広がっている。全国のファンジンを網羅し、それらを保存する作業は大変なものである。昔、私が創設した明治大学SF研究会のファンジン「テラ」のことを忘れていても、これを見れば鮮明に思い出すことができる。また、 PMに載せた古い文章も思い出す。

 ジョン・ウィンダムの「トリフィド時代」を買ってきた。これは名作である。昔、「トリフィドの日」というタイトルで読んだが、再訳である。名作・傑作は新版が出たり、再訳されたりする。版を重ねるというのもあるが、別の訳者によって訳しなおされるということは、それだけ読まれ続けていくということだろう。
 この作品も出だしの文で、読者を引き付ける。SFも一般文学作品も音楽も映画も出だしが大事だ。この「トリフィド時代」の出だしも不思議な雰囲気を持つ文章だった。〈たまたま水曜日だと知っている日が、日曜日のような始まり方をすると何かどこかがおかしいものである〉という奇妙な文章で始まっている。この奇妙さで話に引き込まれ、私はジョン・ウィンダムのファンになった。こういうことは他にもいろいろある。ウェルズの「宇宙戦争」の人類への強烈なサタイアを表現した出だし、クラークの「太陽系最後の日」の最初の文章は人類の責任を表している。すぐれた作家は物語をいかに初めていかに終わるかその作法を心得ているように思う。
 さて、8月ももうじき下旬だ。毎日さまざまなニュースに接していると、現実を追うだけで、SFを読み、未来を想像することを忘れてしまいそうである。そうならないようにしていきたいものだと思っている。

                (2018・8・15)

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