« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »

2018年12月

No.447 (Web版97号)3

劇場版「若おかみは小学生!」をみたか?  新村佳三

10月29日現在、全国の映画館で上映されている「若おかみは小学生!」というアニメ映画が話題になっている。
内容は元々は東京で暮らしていた小学生の女の子が、諸事情で祖母が経営している伊豆の温泉旅館の若女将として生きていく、という話である。

この舞台になっている伊豆の温泉街(架空の街で、実はモデルとなっているのは関西の有馬温泉)は、少し奇妙である。
古くからある温泉街という設定になっていて、たしかに伝統ある有名温泉地っぽい雰囲気があるが、どこかしっくりしない。まるで巨大な「温泉街」のアミューズメントパークのような人工的な雰囲気がある。街全体で「温泉街」を演じている感がある。
この温泉街を走り回るタクシーや旅館の送迎車両も変わっている。外観は昭和30年代の温泉街からやってきたような懐かしのクラシックカーだが、エンジン音がない。EVである。
ますます、アミューズメントパーク的だ。

この作品のジャンルがよくわからない。
この物語には、生きている人間と、幽霊と、魔物と称している存在と、死んでいるはずの人間が、登場する。
ファンタジーのように思えるが、リアリティのある丁寧な生活描写が骨格としてストーリーを支えている。
不思議なシーンもある。
特に、主人公と、幽霊と、死んでいるはずの人間が、同時に登場するシーンは、混乱させる。
登場人物のカテゴリーの基準が曖昧なのに、このシーンはリアルな描写なので、戸惑う。
混乱した絵面の中で主人公が、ハキハキと、迷いなく喋ることに、さわやかではあるが奇妙さも感じる。
また、死んでいるはずの人物(作品中では幽霊とも、単なる幻覚とも、想像した人物とも、特に説明はない)が登場する(夢の中とかではなく)シーンでは必ず、「生きている人物」が、鏡やガラスの反射像という形で映っている。何の比喩だろうか?

この作品には温泉街を訪れる客と、それをもてなす旅館側が描かれているが、主人公の小学生が、普段の小学生としての生活描写と、若女将としての描写に違いがある。若女将として「演じている」感が強い。これは、この温泉街の成り立ちとも相まって、まるでディズニーランドのように住民皆が自らの役を「演じている」世界、と考えれば良いのだろうか?

制作スタッフは、かつてスタジオジブリの作品などに参加していた方も多く、「この世界の片隅に」(この作品も、日常生活の中にファンタジー的な奇妙な要素が紛れ込む、という描写があった)と同様に、ポストジブリ系作品ということになるのか?「この世界の片隅に」も、そうであったように、画像だけでなく音響効果にも大変力を入れており、とても丁寧な仕事だと感心する。

9月末から公開が始まって、10月になってからは公開終了する映画館もあったのだが、口コミで評判が伝わり、10月末現在、公開終了を取りやめて延長公開をしている館も多数現れた。
古典的なサイエンスフィクション作品とは少し違うかもしれないが、鑑賞後の、奇妙だが爽快感のする不思議な味わいは、味わって見ても悪くないと、オススメする。
4回見ました。
来週5回目の鑑賞に行こうと思っています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

No.447 (Web版97号)2

SF essay(266回)

川瀬広保

 好きなラジオ番組は、NHKの夏休みこども科学相談である。小さい子ほど、素朴な質問をするので面白い。昔、自分が幼稚園や小学校低学年のころ、どんなことに疑問を持ったか改めて、思い出してみたい。
 人は歳をとると次第に疑問を持たなくなっていく。親に聞いても、「そんなことはいいの、そうなっているんだから」と切り捨てられてもう子供は疑問を持たなくなってしまう。
 どんな科学もある人の素朴な疑問から始まったのだ。誰も考えなかったようなことを小さな子が考えて、それを決して「そうなっているんだからもういいの」とは言わないで、まず「そうだね」と受け入れ、さらに発想を広げていくことが大事である。次のような質問が面白かった。
 「どうして数字はどこまでも続くの?」「無限と言う概念があってね」小学生には難しい。「人間以外の動物は泣きますか」動物は悲しくて泣くのか。答えはオランウータンやチンパンジーなどの類人猿は人間に近いから少しは感情を示すらしいという答えだったようだ。
 先人の発想が科学を発達させた。この番組は子どもの素直な発想を大切にしていて、面白いし、楽しい。毎年、楽しみにしている。これからもずっと続けてほしい。

 日本は災害国である。地震や台風、猛暑など毎日のようにその被害が報道されている。ところが、警報が出ても出勤しなければと無理をして出かける人が多い。昔から日本人は働き蜂だから、国全体が繁栄したのかもしれないが、反面、無理をしてけがをしたりする人もいる。不要不急の外出を控えるようにと盛んにテレビで注意喚起しているが、何の根拠もなく自分だけは大丈夫だと考えている。
 仕事ではなくて、ボランティアだとしても、さあ行かなければと頑張る人が多い。だが、高齢者は無理をする必要はない。高齢者がボランティア活動を生きがいとしていたとしても無理はしないことが寛容だ。自然をあなどらないことだ。
 2020年が近づいている。交通費や宿泊費も出ないので、大学生にはボランティアは経済的に無理があるだろうとある人がインタビューで答えていた。それは、大学生に限らない。
 安全を最優先にして、行動したいものだ。
 常に強い台風24号は、朝からNHKが刻一刻と状況を伝えてくれる。今年は台風が多い。明日10月になろうとしているのに、巨大台風の上陸だ。

 さて、SFに話題を戻そう。SFマガジンに連載された「筒井康隆、自作を語る」は毎回、興味を持って読んだが、今度一冊にまとめられて、発行されたので、買ってきた。
 筒井康隆と言えば、日本のSF界を疾走してきたプロである。石川喬司の言葉によれば、星新一が開拓者として道を開き、小松左京がブルドーザーでならし、筒井康隆はさっそうと口笛を吹きながら、スポーツカーでSFワールドを疾駆するといった例えがあったが、その筒井康隆ももう84歳だと言う。まだ新作を出そうだという意欲がラストのインタビューの答えに見える。筒井康隆に昔サインをもらったとか、エレベーターで一緒になったというかすかな記憶がある。白柳孝さんと一緒だった。私はまだ学生だった。古き良き時代の記憶である。昔は、臆せず、いろいろなプロに会いに行った。サインももらった。星、小松、筒井、福島、クラーク等々である。ファンとプロの垣根がほとんどなかった。良い時代だった。

 この本は書誌学的な意味でも貴重である。筒井康隆のすべてを収めている。対話集だから読みやすいし、末尾には筒井康隆のビブリオグラフティがついている。
 私は筒井ファンと聞かれれば、そうだとはたぶん答えない。星新一にはまっていたし、小松左京にもはまっていた。筒井康隆も買って読んでいた。それぞれ作風が違うから一概に好き嫌いは言えない。日本SF界をその黎明期から知っている大物となると、最近の動向は大いに気になるところだ。

 さて、10月に入っても、話題は貴乃花である。世の中は、争いである。動物も泣くより、怒りの方を本能的に示す。さて、今後、どうなるのか注視していきたい。相撲には関心がある。では、また来月。

                    (2018・10・10)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

No.447 (Web版97号)1

SF人のパニックの過ごし方

加藤弘一

最近映画を見る機会はないがパニック映画みたいな経験はしている。
盆休みに親子3人で北海道に行き、札幌でレンタカーを借りて2日ほどあちこち寄って大手ツアーのとは異なる旅をした。
夕方、札幌でレンタカーを戻し明日の新幹線駅のある函館北斗行きのジーゼル特急に乗る。かなり雨は降っているが、駅弁を摘まんでいれば3時間ほどで到着する予定である。
ところが、2時間ほど走った長万部駅で雨のため特急は止まってしまった。
更に2時間後、先の安全面での保証が出来ないので札幌に引き返すというアナウンスが流れて、車内は騒然となった。
そこで女房と息子に札幌のホテルを予約検索させ、自分は函館北斗のホテルをキャンセルしてから札幌駅に連絡し翌日の始発を特急と新幹線の予約の手配をした。我ながら完璧な手配だと思っていた。
しかし、札幌に深夜着いたときに駅アナウンスは残酷にも翌朝は点検の為9時まで運休と告げたのだった。
翌朝8時に新たな切符を求めに駅を訪れると売場にものすごい行列ができていた。
運休でも切符の売り出しは始まっているのを失念していた我々は、昼過ぎの予約しかできず札幌でウニイクラ丼を食べてから本州へ帰ることになった。

それから一ヶ月後北海道で大地震が発生した
山が崩れ、電氣水道などのインフラが失われ大混乱となった。
JRも不通となり、飛行場も閉鎖されたと言う訳だが、JRの路線のほとんどはジーゼルエンジン車両であり、停電中でも動かせない事はない。そう言う対策はないのだろうかと考えていたら、静岡県が台風に襲われて大停電が発生してしまった。
今回、電気がないということはいかほど大変かを静岡県人は味わった。
昼はともかく夜の暗さは圧倒的に迫って来る。ライトやろうそくがあればよいが、ないときはどうするか?食用油を深皿に入れて糸を垂らせば行灯の出来上がり、食用油が無ければシーチキンの缶詰に穴を開けて同じく糸を垂らせば良い。但し、最近のシーチキンにはノンオイル商品もあるので注意が必要である。
災害時に必要なものはキャンプ用品とほとんど同じだと言われている。屋根となるテント、布団の寝袋、煮炊きする道具類等々である。お金に余裕があればキャンピングカーがあればもっといい。
停電に強い家にしておくのも一つの方法である。屋根にはソーラー発電、蓄電池とプラグインハイブリッドカーがあればなんとかなる。
水は井戸を掘っておくといい。飲用にならなくても生活用水にしておくのも一つの方法ですが、水道水のように細かい塵がろ過できていないのでウォッシュレットは使えないかも知れない。

十数年前父と出掛けたネパールではどのホテルに泊まっても出てくる水は茶色く濁っていた。入浴と洗濯はその水を使い、歯磨きとかはミネラルウォーターで済ませていた。

ガスはイワタニのカセットコンロがあればよい。
阪神大震災経験者が言っていたが、停電だと銀行のキャッシュコーナーが使えないので、現金も最低十万位は必要である。インドネシアなら暴動で商品を持ち出してしまうが、日本ではお金を出して買った方が良い。支援物資が届くのに二三日がかかるのに、備蓄分で過ごす期間を考えておく必要がある。
それから、情報を手にいれる為のアイテム〜ラジオ、ワンセグ携帯も大事です。電気が使えない時は、充電バッテリーも必要である。
後は、SF発想を持って行動することだね。うん。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »