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2019年2月

No.449 (Web版99号)2

SF essay(268回)

川瀬広保

 今年もあとわずかだ。来年は新元号の年になる。平成も終わるらしい。いやきっと終わる。30年も続いた。30年前は、私も?歳だった。まだ若かった。
 さて、今年、2018年はどんな年だっただろうか。台風による停電などの災害はなくならないし、話題はつきない。今年の漢字は「災」だそうだ。
 SFではどうだったろうか。過去の有名な作品の再販や再訳が多かったような気がする。

 昔、星新一のショートショートに次のような作品があった。ある男が、医者から病気を宣告され、自分の回りをすべて清算した。知人にも手紙を出した。やりすぎたために、もうその男の存在は社会から全く忘れ去られてしまうというような内容だった。実は、男の病気は大丈夫だったのだ。非常にサタイアに富んだ作品で印象に残っている。何でも事前にやりすぎてはいけないのだ。未来はどうなるかわからないのだから。
 「明日は、土曜日です」というのを「明日は土曜日でしょう」と言ったらおかしい。今日が金曜日だったら、明日は必ず土曜日になる。こういう未来はそのようになる。
 「明日、東京へ行きます」と言えば、大雪で電車が不通にならない限り、強い意志があるのだから未来はほとんど決まる。
 明日の昼食は、ラーメンにしようかご飯にしようかなどという時は、気分で決まる。気分は天候だったり、気温だったり、テレビのコマーシャルの影響だったりという不確定要素がからんでくるので、未来も不確定だ。こんなことを書かなくても、星新一ははるかにスマートにショートショートにした。

 人材不足だから、外国人をもっと多く日本に取り入れようという話が進んでいる。
しかし、なぜ外国人を入れるのか。日本人をなぜもっと多く採用しないのか。日本を外国人でいっぱいにさせたいのか。昔から、日本人には欧米崇拝主義のようなものがあって、外国人からみると、それだけで崇拝(頭を下げる)する。
 少子高齢化の社会だから、子どもが少なく、高齢者が多い。もっと高齢者に職を与えなければ日本はよくはならない。高齢者が元気になれば、若い人もよくなる。しかし、現実はいかに世にあぶれた高齢者が多いことか。人は仕事としてやることがなければだめになる。今、職がある人は外国人を取り入れればいいと言っているが、今仕事がなく年金暮らしで、過ごしている人には空念仏としか思えない。ある青森市議が、本音が表れる裏アカウントで「年金ジジイ」と書き込んだ。自分が市議という立場は捨てたくなく、自分もいつか年金暮らしになるのだから、もっと年金暮らしの人々の生活向上を考えた方がいい。
 さて、筒井康隆が新刊を出した。エッセイ集のようだ。「不良老人の文学論」。84歳の著者の本音が描かれている。老人になったら、わかりのいい素直な人間ではなく、いいたいことはいい、やりたいことはやる老人の方がいいらしい。同じような年齢の男は同じように考えるようになる。ものわかりのいい老人はいないのだ。
 もう出版されているようだから、また購入したら目を通そう。

 SFマガジンでほとんど一番先に見るところは、執筆者たちの消息を書いた巻末にある今月の執筆者である。次は何を出すかということよりも、本人たちが元気かどうかの方に目が行ってしまう。

 人間はいつのころからか、時間を気にするようになった。腕時計をはめ、常に今何時か気にして、カレンダーや日めくりで今日が何日で、今何時かを気にしている。動物は時間を気にしているようには思えない。水星が太陽の周りを回るには88日しかかからない。地球は365日もかかり、天王星は84年もかかるのだ。これをどう見るかは人間の感覚にすぎない。小松左京にとって何十億年はどうということはないというような言葉がSF作家としての小松左京の大きさを示していた。

 最新のニュースから

 「太陽系外からの使者「オウムアムア」、初の恒星間小惑星と確認」

 はるかな宇宙から、たった一回の「訪問」のようだ。小惑星なのだそうだ。これこそ「ビジター」と言えよう。このように、まだ未知の天体がこの宇宙には無数にあるのだろう。金星も地表や地下はどうなっているかわからないし、天王星の軌道は、なぜ他の惑星より98度も傾いているのか、小惑星帯はなぜまたいつどのようにできたのかよくわからない。われわれのこの太陽系でさえ、わからないことがたくさんあるのに、太陽系からはるか離れた宇宙には、未知の天体や現象がたくさんあっても何もおかしくはないだろう。

 「中国で世界初の遺伝子編集ベビー誕生」

 クローン人間はどうなったのだろう。ウェルズの「モロー博士の島」を思い出す。ヒトを操作してはいけないのだ。神の領域に立ち入るべきではない。「2001年、宇宙の旅」の冒頭部分、原人が骨を投げ上げ、一瞬にして宇宙船に変わる有名な部分があるが、あの原人にとっては、宇宙船に乗っている人はほとんど神であり、ラスト部分で「星の子ども」になって生まれ変わる未来の子供は、未来の「神」であろう。何か「ドラえもん」の中にも似たような発想があったような気がする。そうすると、遺伝子を編集する科学者は、その生まれた「ヒト」にとっては「神」なのかもしれない。願わくば、善の神であってほしいものだ。宇宙は“善”であると信じたい。
 筒井康隆の「不良老人の文学論」を買ってきた。気になる個所を読み始めたところである。
著者の発表した文章の集大成だからどこかで読んだことがあるなと思うのもあるが、まとめられてまた読むと面白い。星新一のこと、小松左京のこと、手塚治虫のことにふれた部分は面白い。彼らはみんな故人となったが、昔のことを知るのはもう筒井康隆ぐらいしかいないと思う。

 暖冬である。12月なのに、夏日のところもあった。しかし、急転直下、真冬が来て明日あたりから雪が降るとテレビは伝えている。
 人間は「炭素型二足歩行動物」(クラークのエッセイから)だから、寒くても暑くても歩かなければいけない。今思い出したが、昔クラークが来日したとき、大学生だった私は明治大学SF研究会発行の「テラ」にサインをもらおうと持参した。クラークの前にそれを差し出し、自分が訳した「土星の出」のページを差し出した。クラークは裏返して見ている。私は“Meiji University Science Fiction Club”と声に出して言った。何の返答もなかったが、クラークはサインしてくれた。たったそれだけの思い出だが、今となってはその時、彼が何を考えたかわからない。氏は、「ファンは大事にしたい。晩年の保険だから」と書いていた。私はクラークのファンだった。
 クラークは“True genius”だった。真の天才だった。彼が亡くなったとき、その時ににいた学校のALTは私が言った言葉、“I'm sad. He really was a true genius…”に“Yes, he really was!”とすぐに返答したものだ。彼もクラークのファンだったのだ。

 ハインラインの名作「夏への扉」の献辞に、〈すべてのaelurophileに捧ぐ〉とあった。この特殊な英語は、「猫溺愛症」とでも訳す言葉だということをその昔、初めて知った。それ以来、こうしていつまでも覚えている。その反対は、aelurophobiaである。「猫恐怖症」とでも訳す。SFを読んでいると、こうした英語を覚えることがある。anglewormはブラウンの「みみず天使」で覚えた。angelwormという単語は辞書には載っていない。〈天使虫〉などという英単語はないからだ。また、同じハインラインの「夏への扉」で、Peter Piper picked a peck of pickled peppers. A peck of Peter Piper picked Where's the peck of Peter Piper picked? という早口言葉も、この作品を読んだことがきっかけだった。今では、中学の英語教科書に一部が載っている。
 このように、SFを読むことは、私にとって英語の勉強にもなっていたのだ。教科書では学べない語を知って、語彙が増えた。日常会話ではめったに使わないけれど。
 ことわざについても、教科書で学んだことが生かせる。教科書に載らないことわざをネイティブに言ってみたことがある。さすがネイティブだから、すぐ反応した。「すべての雲には銀の裏打ちがある」というものだ。英語では、Every cloud has its silver lining. という。「不幸のあとには必ず幸福が来る」というような意味合いが込められている。
 話題がなかったら、会話は続かないから、知っていることを言ってみただけだが、脳の活性化には役に立っただろう。浜松城でボランティアをやった時の話だ。

 さて、12月も後半に入り、日々師走から新年へと時が素早く動いていく。何かあわただしい。新年に入ると元号が変わると言うし、消費税も上がる。
 変化だけがこの世の常である。

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No.449 (Web版99号)1

「鈴木健介を偲ぶ会」

「鈴木健介を偲ぶ会」を2019年2月16日(土)に開催を予定していましたが、一周忌頃の7月開催に変更することになりました。
会場はまだ未定です。
「偲ぶ会」では、冊子を作りたいと思います。つきましては鈴木健介の思い出を下記のアドレスにお送りくださると助かります。恐らくまだ募集中だと思います。
 mnh-0914@next.odn.ne.jp  齋藤眞規

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