No.451 (Web版101号)2
SF essay (270回)
川瀬広保
ボランティアで〈犀が崖資料館〉へ行ったとき、7年間で初めて、外国人が訪れたという珍しいことがあった。彼はイギリス人で日本の古い歴史に詳しく、徳川家康も武田信玄もよく知っていたし、阿弥陀如来と言う言葉まで出てきたのにはびっくりした。今、日本は世界のブームなのだろうか。日本的なものが世界に浸透していて、寿司や刺身などという食べ物だけでなく、寿司や刺身などという食べ物だけでなく、家康などの歴史や仏教や神道などの宗教にも大いに関心を持つ外国人がどうやら増えていることは確かなようだ。
これは国際コミュニケーションという観点からいってもいいことだ。難しい歴史的なことはなかなか英語で話せなかった。私が英語で話すより、彼が日本語で話す方がより通じていくと思った。しかし、いい刺激にはなった。
横田順彌が亡くなった。まだ73歳という。往年のSF作家や関係者が亡くなっていく。実に寂しいことだ。朝日新聞の訃報欄にて知った。今朝の朝刊に載っていた。SFマガジンに連載の「SFこてん古典」の出だしの部分・おしゃべりをよく読んだものだ。
さて、AIの進歩もいいことかどうかわからない。人は機械に向かって話しかけ、孤独から離れられるというのはおかしな話だ。
世の中が進歩(退歩?)すると本人を証明するのにやれIDだ、パスワードだ、免許証だ保険証だ、さらには指紋だなどときりがない。自分が自分であることの証明などできるものなのだろうか。この世にあなたとまったく同じ顔、服装、言葉を話す人がいたとしてもまだそれは偽物だと疑って、「証明」をいくつも取らなければいけない。マイナンバー、運転免許証、パソコンだったらIDやパスワードなどいくつも設定しなければいけないことになる。それらを時々、再設定しないとその先に進めない。
人って何だろう。悪いことを考える人間がいるからだ。詐欺とかなりすましなどだ。日本人一億二千万のたったひとりを確定・認定するには、まず性別の確定、これで約半分に減る。年齢、職業でまた狭まる。同姓同名や性別不明などではっきりしないまま残ってしまう。
宇宙の星には番号がついている。月のクレーターも名前がついている。昔、双子は別のクラスにしたものだ。
これからの世の中、ますます個人の証明が複雑になっていくような気がする。そのうち、自分が自分であることを決められない未来が現出し、AIに決めてもらうようになりはしないか心配である。
私はだれか。永遠のテーマなのかもしれない。
さて、創元から「重力への挑戦」の新番が出た。ハル・クレメントだ。懐かしい名前である。注文しておいたら、来た。平積みになるような新刊本ではないが、新版になれば、また買ってしまう。名作だからであろう。訳者が変わったり、イラストが変わったり、あとがきが変わったりといろいろあるが、そこがまたいい。活字の大きさも大きくなり、読みやすくなったりする。そして、原文と比べてみたりするかもしれない。なかなかそうはいかないが。英語のニュアンスを日本語に置き換えることは難しい。困難だ。例えば、ウェルズの名作「宇宙戦争」の現代は“The War of the Worlds”だが、worldには普通は、宇宙という意味はない。あるにはあるが、宇宙の英単語は、universe,cosmicなどだ。「世界戦争」ではあまりインパクトがないように思う。
今朝の朝日新聞の声欄に中学生の投稿で、「なぜ中学生はアルバイトをやってはいけないのか」という趣旨の文が載っていた。理由はおこずかいだけでは、足りないからということだった。
中学生なら、毎日の食事は親が作るだろうし、給食代も親が払うだろう。また、病気になれば治療費は高くても出費を惜しまない。虐待をする親は別だが。
英語の勉強をしたいから、辞書を買いたいと言えば、親は喜んで買ってくれるだろう。残念ながら、中学生のアルバイトは、認められていない。やがて、高齢者になると、年金暮らしにならざるをえなくなり、また病気も増え、医者代や薬代がばかにならない。年金だけでは足らないのだ。おこずかいが足らない気持ちはよくわかる。
投稿した中学生は、接客業ならできるかもしれないと言っている。私の意見では、やはり、今は、中学生として、毎日の勉強や運動を頑張っていくことだ。
繰り返すが、英語の辞書や科学の図鑑や歴史まんがなどがほしいと言えば、どんな親もきっと買ってくれる。ボランティアをしていると、子どもたちの知識は図鑑から得られることがわかる。その辞書や図鑑などで大いに勉強して、何かで認められたり、成績がアップしたりすれば、おこずかいもアップするかもしれないよ。「ねえ、おこずかい増やして」と親に言うだけより、早道かもね。
さて、この前、浜松城へ行ったら、インドネシア人やインド人が来た。また台湾からの女性も来た。なかなか国際色豊かだ。台湾人は日本語が十分通じた。インドネシア人やインド人は英語が通じた。
「星際色」豊かなともいうべき時代の未来の地球や宇宙の様子を思い描くことができる。
「どちらからおいでですか?」
「アンドロメダ星雲からです」
「どちらからおいでですか?」
「天王星からです」
「どちらからおいでですか」
「シリウスからきました」
「いつからおいでですか」「80万年後の地球からです」等々。
あれこれ考えると、そんな「星際色」豊かな日がいつかくるかもしれない。
宇宙のどこかにメスクリン人がいてもおかしくないだろうと思う。知性のある生命が二足歩行動物だけとは限らない。
さて、ついこの間、豆をまいたかと思うと、今度はひな祭りと季節は次々と動いていく。SFの傑作・名作を再読し、未来や過去を考えることはいいことだと思う。
今月はこの辺で。
(2019・2・16)
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