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No.453(Web版103号)2

怖い話

加藤弘一

産経新聞の記事を読むと支那でもネット小説が盛んに読まれているらしく、売れっこ作家の年収は1億を超えると言われている。
一番好まれている設定は主人公が過去にタイムスリップし現代の知識を利用してのしあがっていくパターンである。
例えば、清の時代に来てしまったキム(仮名)が支那の為、アメリカ、日本、ロシアと戦う話。
キムは最大の敵アメリカを倒す為、覚醒剤を作りアメリカに蔓延させる。
こうして、アメリカは弱体化しキムは莫大な資金を手にする。
さらにキムは未来にノーベル賞を受ける科学者をピックアップして誘拐し彼の為働くよう強制し従わない者は容赦なく殺してしまう。
そして、巨大な軍隊を造りだし敵を粉砕し遂に世界を征服してしまう。

だが、ちょっと待てよ・・・・麻薬を使ったり人をさらって殺したりと、これは主人公のやることではないぞ。
敵役のやることじゃあないか?
こんな極悪非道なやり方で天下を取っても日本いや世界でも批判されこそすれ、賛辞されることはないはずである。
しかしながら、支那での評価は上々で、「スカッとした」とか好意的な意見が多かったらしい。
何かオカシイ感じの一杯の話である。

日本でも未来を変えようという話はある。
「ジパング」ではタイムスリップした自衛艦みらいがアメリカと戦うが、敵も味方も被害を最小限に止め、決して非道なことはしなかった。

支那の歴史教科書は習主席を始めとする歴代の指導者により、阿片戦争で負けた事、義和団事件、日中戦争など国民にとり屈辱的な歴史ばかり強調されている。
この為、若者の間で異民族に対する憎しみの感情が親の世代と比べると極端に増長してしまっているので、このての小説に共感を持つ者が多くなってしまっているようだ。

こういう民族主義を煽るスローガンに浸った若者たちが、将来支那社会の担い手となったとき、どんな国家となるのかとても心配である。

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