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No.455(Web版105号)3

SF essay(274回)

川瀬広保

 テレビは真夏日だと言っている。あれだけ寒かったのに、天候は変わっていく。年金は先細るから、自助を促せという新聞の見出しが躍っている。やれ非常勤だ、臨時だ、アルバイトだといろいろあるが、すべて若者向けだ。みんな歳をとるのに・・・。

 まだ、5月だというのに猛暑だ。真夏日だ。トランプ大統領の大相撲観戦で国技館の警備が大変だ。朝の山という名前も知らなかった力士が優勝して、予測がつかなかった。

 さて、SFの話題はなかなか見つからない。SFと結びつくものは天文、星、未来、過去、永遠など人間の想像力だ。現実は、仕事がうまくいかなかったり、身体が痛かったりといろいろある。そこで、人は想像をして楽しむ。それが、現実化するのだ。AIもそうだし、自動運転もそうだ。

 ハヤカワSF文庫から「伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触」が出たので、早速買ってきた。
 伊藤典夫さんに昔、会ったことがある。浜松出身だし、関心があった。その伊藤さんが訳したなつかしい作家の名前がたくさん出てくる。「最初の接触」はマレイ・ラインスターの作品で、人類が異星人と最初に遭遇して、接触したときに、どんなことになるであろうかというSF作家を刺激するテーマを扱った作品である。また、ジョン・ウィンダム、ジェイムス・ブリッシュなど、懐かしい名前が多く見られる。
 昔、矢野徹さんが日本SF界の翻訳者を評して、「浅倉神(かみ)に伊藤仏(ぼとけ)」と言ったことがあるが、その「伊藤仏」が訳したものを厳選したものが本書である。

 「最初の接触」はファースト・コンタクトテーマの傑作と言えるもので、伊藤さんの前書きによると、これをしのぐ作品はあらわれていないということである。この作品では、異星人は地球人と似ていて、性は二つあり、冗談もわかることになっているらしい。
 異星人との遭遇は、SF作家の想像力を刺激するものだ。ウェルズの「タイムマシン」の80万年後のエロイ族やモーロック族、クラークの「宇宙のランデブー」などの傑作が思い浮かぶが、われわれはいつか異星人と遭遇するのだろうか。
 相当熱心であらゆる傾向のSFを読んでいるファンならともかく、そうでないとしたら、こういう傑作集はありがたい。ゆっくりと味わいながら読むとしよう。「ボロゴーブはミムジー」も忘れないようにしよう。第3作を期待したい。

 さて、だいぶ暑くなってきた。季節は間違いなく、進む。SFを読んだり、SFについて書くのを忘れないようにしたいものだ。
(2019年 令和元年6月16日)







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