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2019年10月

No.458(Web版108号)2


ルーナティック32号 アニメ特集について 2

この夏に放送されたSFテレビアニメ「彼方のアストラ」が話題になっています。
集英社のウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』で連載された漫画が原作です。内容は、未来の「世界」で宇宙を舞台にした高校生など9人のサバイバル物語です。
このアニメの評価は高く、ほぼ同時に配信されている世界中での評価も、日本を上回るほど高いものでした。
ですが、皆の評価が高かったわけではありませんでした。
この作品の国内配信サイトのコメント欄に書かれた、辛辣な評価が注目されました。
未知の部分が多い惑星に降り立つのに、描写が雑だ、とか。サバイバルストーリーなのに偶然に頼りすぎている、とか。
これには多くの反論がありました。
少年漫画が原作なんだから、細かい事を言うな、とか。全体のストーリーが面白いのだから、良いだろう、とか。あまり厳密な事を追求するより、若年層SFファンの確保のため、面白い作品は積極的に褒めて薦めるのがSFファンとして正しいのではないか?とか。
また、この辛辣な評価に多くの人が「この意見が役に立ったと考えています」と同意していることも問題視されました。
世の中、心が狭いSFファンがなんて多いんだろう、とか。これではSFの未来なんて無い、SFは死んだ、とか。
これに対して、様々な意見があっても良いだろう、という意見も。
この手の話がこれほど活発に行われる作品は久しぶりなので、では現代のSF入門編としての理想の作品とは何だろう?などという議論にも発展しました。
この作品以外にも、この秋、冬以降に、SF関連の話題作が目白押しで、楽しみです。

特集以外の創作、評論、翻訳等の原稿も広く募集しております。
長い原稿を予定されている方は、事前に内容やおおよその分量を、PM編集部に連絡していただけるとありがたいです。 締め切りは来年の春、3月末くらいを考えています。来年の夏あたりの発行を目標にしています。 原稿の宛先はPM編集部かメールで
cbf06066.cap.y@nifty.com まで。(ルーナティック32号編集部)

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No.458(Web版108号)1

 SF essay(277回)

 川瀬広保

 好きなSF作家はだれかと聞かれたら、アーサー・C・クラークであることには間違いないのだが、ベストファイブを聞かれたら、その中にフレデリック・ブラウンが入ることは私にとって間違いない。ブラウンの名前を忘れていたようだが、ごく最近、東京創元社から彼のSF短編全集が発売されると知って、私は飛びついた。
 昔、初めてのブラウンの「ミミズ天使」を読んだとき(原題は The Angelic Angleworm)
こんな話があったのかとすぐに彼のファンになった。これで、私はミミズの英語を覚えた。
「73光年の妖怪」も好きだ。シリアスな作品の代表としては、「天の光はすべて星」などその傑作だ。
 さて、いつもの書店に電話をしたら、在庫がないので、入ったら連絡すると言う。思ったより、早く電話が来たので、早速取りに行った。そこで知ったのは、来年から再来年にかけて第四集まで出版されるということだった。フレドリック・ブラウンSF短編全集1「星ねずみ」から「すべてよきベムたち」「最後の火星人」「最初のタイムマシン」の4冊、全111編である。後記で鏡明もブラウンを讃えている。このブラウンの全集はお勧めである。
 昔、私はブラウンはすべて買った。ミステリは買わなかったけれど、その奇妙でオチの巧妙なストーリーに、いっぺんにファンになった。ブラウンとの最初の出会いはどの作品だったろう。今となっては思い出せない。これから、楽しみが増えることになる。
 これだけファンの多いブラウンの本もいまや絶版になっていて、手に入らない。そんな中で、この全集の出版はうれしい。ブラウンについてはまた、書きたいと思う。それだけ思い入れがあるということだろう。優れたSF作家、優れたSF作品は忘れられてはならない。
 さて、もう10月だ。これを書いているのは9月16日だが、まだ気温が35度もある。暑さ寒さも彼岸までという言葉があるが、あと一週間で涼しくなるのであろうか。気候がおかしいとは昔から言われていることだが、今年は特にそれを感じる。暑くても寒くても、よいSFを忘れないようにしたいものだ。
                   (2019・9・16)









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No.457(Web版107号)3

 SF essay(276回)

 川瀬広保

 超大型台風接近で日本は揺れた。結局、東海地区はたいしたことなくてよかった。もっとも、全国的に見れば被害があったところがあったようだから、気に留めておかなければいけない。

 さて、DVDプレーヤーが古くなって機能しなくなったので、小さくて安いのを買って、「2010」をまた見始めた。「2001年宇宙の旅」は後半20分ぐらいが不可解だと言われて、不評だったこともあったが、この「2010」はよくわかって何度見てもいい。よいSF、SF映画というのはこういうものだと思い知らされる。クラークが画面の隅に出ていたり、英語の言い方の不備を直していたりするところが面白い。

 SFではないが高田明和の「うつのツボ」を読んだ。われわれはどうしても「〜するべきだ。〜しなければならない」などと黒白をはっきりつけたがる。そして、うつへと進んでしまう。高田明和の本は昔からよく読んでいるが、この本も興味を持って読んだ。氏は医者であり、僧侶でもある。この前、「チコちゃん」を見ていたら、専門家としてテレビに出ていた。
 また、もう一冊「自己肯定感を取り戻す方法」という本も読んだ。うつではなくて、超敏感性格がうつのような生活を引き起こすのだそうだ。あれこれ考えすぎる傾向のある人はもっと自分を肯定するように生きた方がいいらしい。この著者はもう84歳になり、自分もうつになった経験があるからこそ読ませるものがある。

 モーツアルトにトランペット協奏曲があるようだと知って、あれこれ調べてアマゾンで注文した。翌日、届いたCDをよく見たら、レオポルド・モーツアルト作だった。アマデウス・モーツアルトの父親作だった。あれこれ調べると、アマデウス・モーツアルトはトランペットという楽器が嫌いでトランペット協奏曲は作曲していなかったらしい。ご存知の方がいらっしゃったら是非ご教示願いたい。

 今後、出版される注目SFは昔懐かしい「フロリクス8から来た友人」だ。フィリップ・K・ディックだ。再販ブームのような気がする。昨日、買ってきた。

 さて、森東作さんから「SFファンジン・データベースVer1.9」をご恵贈いただいた。こうした地道なご努力があるからこそ、SFファンの裾野が広がるのだといつも思う。この場を借りて、感謝したい。ありがとうございます。
 今月はこのぐらいしか書けない。また、来月。
                       (2019・8・22)











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No.457(Web版107号)2

 第58回SF大会Sci-conアフターレポート

 by 渡辺ユリア

 7月27日am9:20頃に会場のソニックシティに到着。バッジネームをケースに入れ、私は8Fの807号室の近くに行くと、大勢の人が並んでいました。そこは”小さなお茶会”の受付場所でした。私は萩尾望都先生の会に参加したかったのですが、11番だったので行けませんでした。(参加者は10人まで)それでpm3:00からの分科会では飛 浩隆先生の”零號琴”を語るに行きました。司会はオキシタケヒコ先生。まずアバンタイトルの場面をオキシ先生が朗読されました。(あの砂漠の場面です)それはやっぱり「零號琴」の世界観が広がっているな・・・と言う感想ですが、文章を声に出して読むほうがとても良いです。そして登場人物の元ネタとか話されて、この作品にますます興味を持ちました。ここでおひとり、鎌倉ユリ子さんという新聞記者が出てくるのですが、浅倉久志先生をもじったらしいのです。そして飛先生の次回作について少々話されました。”廃園の天使”シリーズの次回作にとりかかるらしいです。
 そして2日め。その最初の分科会は”中学生にSFを”にいきました。SF文学振興会の滝さん方の企画されたもので、副題は”中学生にSFを好きになってもらうたったひとつの冴えたやり方”でした。たったひとつではないけれどまずは図書館や図書室に中学生向きのSF本を置いてもらう事が第一条件ですね、と日下 三蔵先生がおっしゃってました。聞き手は現職の中学校教諭の方でした。図書室などにリクエストして、良質の本を入れてもらう事だな、と私も思います。
 そして次の分科会はam11:00からの”堀江美都子さんのミニコンサート”でした。すてきな歌とトーク。堀江さんは声に張りがあって素敵でした。オープニングは”ハローサンディベル” ”花の子ルンルン” ”キャンディ キャンディ”。その後、堀江さんが教授されている洗足学園大学の声優アニソン学科の堀江ゼミの学生さんたちが歌った”怪物くん” ”ドラえもん” ”宇宙戦艦ヤマト”。・・・良かったです。あっという間の1時間半でした。
 pm3:00からの”空想音楽大作戦”は腹巻 猫さんの司会でした。この一年で亡くなられた作曲家の曲が流れました。ミシェル・ルグラン氏の”火の鳥”のテーマ曲。そして京アニの”ヴァイオレット エバーガーデン”のテーマ曲が流れました。では、この辺で
                         2019.8.16 yullia

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No.457(Web版107号)1

アニメが日本でもっとも知られた2つの出来事

中村達彦

 ルナティックの次の号は、アニメを特集するとのこと、楽しみである。
 NHK朝の連続TV小説はちょうど100回目になる現在放送中の作品は「なつぞら」。戦災に遭った少女が北海道の牧場に引き取られ、成長後、「ポパイ」や「ファンタジア」と言ったアメリカの作品を観て、アニメに興味を持ち、東京のアニメーション会社に入って奮闘する物語である。
 NHKは、100回目となる朝の連続TV小説ということで、キャストにこれまでの朝の連続TV小説で主演した人を多数充てている。6月からはアニメーション制作現場が舞台であり、それを反映して、OPや劇中のそこかしこにアニメを用いている等の試みを行っている。
 当時の、昭和30年代の東京街並みも再現されている。
 主人公の奥原なつ(演・広瀬すず)が東京の東洋動画の入社試験に合格、同社が手がける漫画映画に関わり、仕上げから動画、作画を任されるようになっていく。ドラマでは、声優が声を吹き込む部分も描かれている。
 また、なつの面倒を見た北海道牧場の家族の話が出て来たり、戦争で散り散りになった実の兄妹の話があったりして飽きさせない。現在、視聴率は20パーセント前後。
 なつが最初に手がける漫画映画は「白蛇姫」。彼女が勤める東京のアニメーション会社、東洋動画は東映動画(現・東映アニメーション)、「白蛇姫」は「白蛇伝」がモデルである。彼女を温かく見守る先輩、同僚や後輩には、森やすじ、大塚康生、高畑勲、宮崎駿等がいる。彼らは、東映動画にいたが、やがて活躍の場を外に見出し、幾つかの傑作アニメに関わっていく。彼らをモデルにしたアニメーターが登場している。名前こそ違うが、言動やアニメに対する姿勢から、誰が誰だかわかる。
 他に小田部羊一は、OPでアニメーション時代考証に名前を出している。なつにも、モデルになった女性アニメーターがいるらしい。
 これまで、東洋動画は劇場作品を手がけていたが、7月下旬の放送からTVアニメにも関わっていく。舞台は昭和38年。ちょうど手塚治虫の虫プロ「鉄腕アトム」がヒットした頃だ。
 なつたちは、虫プロと同じ低予算かつ限られた時間で済むTVアニメ作りを余儀なくされる。劇中で、「鉄腕アトム」の映像と共に同作に対抗する企画が提案される。
 「なつぞら」は9月末まで放送されるが、当時の作品をモデルにしたアニメがまだ描かれるであろう。
 そう言えば、NHKの「歴史秘話ヒストリア」では1月放送の回で、虫プロを立ち上げた話や「鉄腕アトム」の放送を取り上げ、アニメーションスタジオを立ち上げた手塚治虫の苦悩が特集されていた。
 昭和30年代、アニメ会社を舞台にするなど「なつぞら」は思い切った試みに見えるかもしれない。しかしNHKは昔から漫画やアニメに一定の理解があった。朝の連続TV小説やその他のドラマで漫画家やそれを見守る人を主人公にした作品は、前から幾つもあった。
 「なつぞら」で描かれた時代から数十年後の現在、様々なアニメ作品がTVや映画館で上映され、ヒットが続いている。
 作品が多い割に、アニメーターの生活が改善されない等の問題もあるが、ジャパニメーションという言葉が出るほど、日本はアニメ大国である。
 しかし、7月18日、凶報が襲った。京都にある京都アニメーションのスタジオが放火され、大勢の死傷者を出した。アニメスタジオが放火されるとは、これまで無かった前代未聞の事件であり、死傷者の数も桁違いである。
 京都アニメーションは、京都から始まった異色のアニメーション会社である。80年代に下請けから始まったが、2005年から、オリジナル制作を手がけるようになった。
 2006年には、ライトノベルのSF「涼宮ハルヒの憂鬱」をアニメ化させている。以後、「けいおん」「響け!ユーフォニアム」等のヒット作を生み続けて来た。
 その丁寧な作品作りから、TVや劇場作品で多くの作品を手がけており、京アニファンは少なくない。
 京アニは、魅力あるキャラクター作りに定評がある。更に細部や背景美術に力を入れ、地元やその周辺を舞台にした話題作を念頭に入れ、その結果、聖地として扱われている場所も少なくない。
 ここ数年の間、手がける作品も多かった。来年以降の新作も準備中であった。
 しかし今回の事件で、新作の予定は未定になり、何より死傷したベテランアニメーターは、20代の若手から60代まで膨大な数になる。京アニが、日本のアニメ界が蒙った被害は計り知れない。
 亡くなった人を悼む声、事件に荒げる声は各地から寄せられている。
 突然の事件、何と言っていいか。未だ詳細や事件の動機が明らかになっていないとは言え、理不尽である。
 しかし事件の後、東京や他の地方、外国からも、大勢の人が京都を訪れ、弔問や献花を行ったり、ネットで会社や亡くなった人のために使って欲しいと資金集めが続いていると言う。アニメを愛する者の良心の表われではないか。
 何より、京都アニメーションとこの事件で傷を負った人の回復を心から祈りたい。

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