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2020年1月

No.461(Web版111号)4

 「はやぶさ2」の任務についてあれこれ

by 渡辺ユリア

「はやぶさ2」はりゅうぐうをはなれました。11月13日にりゅうぐう近くから出発し、11月18日〜19日にかけてりゅうぐうの重力範囲を脱出し、向きをかえ、そして、12月3日以降にイオンエンジンの本格運転をはじめ、そして地球帰還への旅路につきました。今、この時、「はやぶさ2」は、どこを飛んでいるでしょうか。多くの成果を持ちかえり、来年(2020年)11月〜12月にかけて、地球周辺にやってくるそうです。期待しましょう!!
                    2019.12.19 yullia

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No.461(Web版111号)3

 SF essay(280回)

 川瀬広保

 新年、令和2年の幕開けである。いやでも歳をとる。もう?歳になる。男でも年齢はあまり知られたくない。生徒へはthirty eight と言っているが、みんな笑うだけで誰も信じない。筒井康隆は老人は美学を持てと言っているようだ。「年寄り嗤うな、明日の自分。」

 さて、「ドラえもん」の0巻が出たと言うので、早速注文し、入手した。ドラえもんが未来からのび太の家の部屋の机の引き出しから現れるというのも、たくさんのパターンがあったということがわかる。作者はいくつもの原稿を描いていたのだ。「ドラえもん」の生みの苦しみがあって、これだけだれでも知っている長きにわたって続いている名作マンガになっている。全45巻プラス1冊である。

 さて、臨時講師として働いている。臨時だから1年間のみで、今年3月で終わりだ。臨時は、いいように使われるだけで有給休暇も半分だ。国はあれこれ政策を出している。例えば、教員の休みは夏休みとか冬休みにのみ、集中して取らせて、それ以外の時は働けというわけである。
 授業中にSF映画の話をするとのってくる生徒もいる。教科書に出ているからであるが、教科書ももっとSFを取り入れればいいのにと思う。例えば、星新一の「繁栄の花」は国語に載った。「おーい、出てこい」は英語に載った。ただ、知らない生徒は作品の全体をしらないままになってしまう。教科書の影響は大きい。
 新しい作家の新しい作品を読めないままでいる。来年はぜひ、いいものは読んでいきたい。
 あまり書けない。皆さん、本年もよろしくお願いします。
                    (2019・12・17)

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No.461(Web版111号)2

 SF作家大御所の死を偲ぶ

 中村達彦

 前号でも書かれていたが、SF作家の眉村卓が亡くなった。享年85歳。その少し前に、イラストレーターの和田誠が亡くなっている。
 和田は、様々な著名人とのイラストや映画監督、対談や映画評など多種多芸であるが、亡くなるまで現役であった。
 星新一らのSF作品イラストを手がけた。
 一方、眉村は大阪出身。会社勤めをしながら宇宙塵でのファンジン活動を経て、1961年に早川書房のコンテストで佳作入選デビューする。
 以後、ラジオパーソナリティや句作家の顔も持つ他に、亡くなるまでSFを中心に専業作家として創作を続けた。
 初めての単行本「燃える傾斜」、以来、星雲賞を受賞した79年の「消滅の光輪」。他にも「夕焼けの回転木馬」「引き潮のとき」などの受賞作品がある。
 氏の代表作と言えるのが、1971年から発表された司政官シリーズ。
 遥か未来、地球人類が多くの植民地惑星を収めていた時代を舞台にしており、軍に代わって惑星を統治する官僚の物語。
 配下のロボットを操り、植民地の住人と融和を心がけるが、植民地惑星は星ごとに異なり、司政官は様々な問題に悩まされる。この体制は150年以上続き、スケールの大きなシリーズとして成立した。
 それぞれ司政官の物語があり、特定の主人公は登場しない。
 95年までにSFマガジンで長編2本と中短編7本が書かれ、「消滅の光輪」や「引き潮のとき」も含まれる。
 80年代に、ツクダ・ホビーからシミュレーションゲーム化されている。
 眉村の最も有名な執筆活動は、少年ドラマシリーズの原作を手がけたことであろう。
 少年ドラマシリーズは、1970年代に平日の夕方、NHKで20分〜25分、日本の小説、時には海外ドラマも放送され、SFも取り上げられている。
 平凡な少年が主人公で、常識では考えられない怪奇な事件に巻き込まれるストーリーだ。
 毎日、刻々と変化するドラマの展開に釘付けになり、「さあ次はどうなる」と次回が待ち遠しかった人もいるだろう。影響を受けたクリエーターもいる。
 うち74年「まぼろしのペンフレンド」、75年「なぞの転校生」、77年「未来からの挑戦」「幕末未来人」の4本が眉村の原作による(ちなみに池上季実子、紺野美沙子、古手川祐子が出演。ドラマの中で重要な役を演じている)。
 もう40年以上前の作品であるが、少年ドラマシリーズを扱ったムック本が出たり、NHKアーカイブスで「なぞの転校生」「未来からの挑戦」が特集放送されている(7年くらい前に放送された「未来からの挑戦」の回には、紺野美沙子も出演し、当時のことを語ってくれた)。
 2000年のSF大会では、少年ドラマシリーズの部屋と言う企画が催され、「なぞの転校生」のキャストが出演し、思い出を語っている。
 また、「なぞの転校生」などは、少年ドラマシリーズ以外でも設定の一部を変えて、TVドラマや映画化された。
 眉村は、他にも「地獄の才能」「天才は作られる」「二十四時間の侵入者」「白い不等式」「ねじれた町」「とらえられたスクールバス」「侵入を阻止せよ」などの多くのジュブナイル作品を手がけた。
 大筋は、主人公の少年が、未来やパラレルワールドからの非日常な世界にはまりながらも、状況を脱するため行動を起こす様子が丁寧に描かれ、終わりには、主人公を通して、読者にテーマが投げかけられる。
 うち「ねじれた町」は、不思議な力が蔓延する城下町に転校した少年が、ある日、超能力に目覚め、その力を使うものと対決する物語。映像化されたことはないが、少し設定を変えれば、現在でも通用すると思う。
 他にも眉村作品で、86年「時空の旅人」、87年「迷宮物語」、2012年「ねらわれた学園」がアニメ化された。
 最近の執筆活動でよく知られているのに、夫人とのショート・ショートのやり取りがある。
 夫人は眉村の創作活動の理解者であり、読者であった。眉村が作家になってしばらくして、不治の病に侵された。眉村は夫人のために毎日ショート・ショートを書き続け、一時、回復の兆しを見せた。
 夫人は2002年に亡くなったが、その話は美談となってTVなどで紹介された。
 また書かれたショート・ショートは「僕と妻の1778話」「妻に捧げた1778話」で取り上げられ、2011年には夫婦の物語が映画化され、ヒットしている。
 前述したように、眉村は亡くなるまで創作を続けた。うち2013年に書かれた「自殺卵」は印象深い。
 短編集で、タイトルの自殺卵は、孤独な男性を主人公にした近未来の話。ある日、男に「死んでください」と書かれた手紙と針を刺すと即座に死ぬことのできる卵が届けられる。町の人口は急激に減っていく。変化する社会。男の選択は?読み終えて、現在の高齢化社会に有り得るかもしれないと思った。
 他にもショート・ショートや企業を舞台にした小説を発表したり、SFアニメのシナリオを書いたり、幾多の小説コンテストの審査員を務めている。
 審査のコメントは常に辛口で、特にSFに厳しい目を向けたことが印象深い。
 突然、別れが訪れるとは……。また一人、日本SFを支えた大御所が世を去った。
 今年は、眉村以外にも、SF関係者が亡くなっており、それも含め哀悼を述べたい。

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No.461(Web版111号)1

 My BESTS 2019

 中嶋 康年

1「ラブ・デス&ロボッツ」NETFLIX
PM454(6月号)に書いたとおり、NETFLIXで配信中の「愛」「死」「ロボット」をテーマにした15分くらいのアニメーションのアンソロジーである。アニメーションの可能性の見本市のようで、ある種、アニメの到達点のひとつといえるかもしれない。

2「ザ・ボーイズ」Amazon Prime
こちらはアマゾンプライムにて配信中のアマゾンオリジナル・ドラマ。スーパーマン、ワンダーウーマンなどに似た7人のスーパーヒーローチームが一企業に雇われて活躍しているのだが、こいつらが裏へ回ると悪いやつらだらけで、このチームに参加することになった新人のスターライトと共に彼らに対抗する普通の能力しか持たない男たちのドラマ。

3「接触」クレア・ノース
肌と肌を触れるだけで相手の身体に乗り移ることができるケプラーは、ある日突然殺されるが、死ぬ直前に他人の身体に乗り移り、自分が殺された謎を追う。「ハリー・オーガスト15回目の人生」で好評を博した作者の第2作目。昨年、「ホープは突然現れる」という誰の記憶にも残らない、会ってもすぐに忘れられてしまう女性を描いた第3作もよかったが、面白さで言ったら、こっちかな。

4「天冥の標」小川一水
10巻17冊、10年をかけて完結したシリーズで、長すぎて今年の作品という感じはないが。映画の話だが、「アベンジャーズ」「Xメン」「スターウォーズ」など、僕が追いかけていた長年続いたシリーズがバタバタと完結した年であった。

5「銀河核へ」ベッキー・チェンバーズ
超光速航行用のトンネルを建造する多種族混成クルーの中古船に新人乗組員ローズマリーが入って引き起こされる冒険。このわけありの新人の目線から描かれる、わりとオーソドックスなSF。

6「スパイダーマン :スパイダーバース」(映画)
多元宇宙、マルチユニバースに存在する多種多様なスパイダーマンが一堂に会するアニメ。多種多様なのはキャラクターだけではなく、3DCG、コミック、カトゥーンと多様な表現手法をひとつの画面に集約している。原作としてコミックがあるが、ストーリーは別物。

7「三体」劉慈欣
やはりこれを入れねばなるまい。昨年一番の話題作ではなかったかと思う。それにしては、順位が低いか。3部作のうちの第1作ということで、話としては始まったばかりという感じ。

8「彼方のアストラ」Amazon Prime
TVのほかに配信先は数々あるが、僕はAmazonで見た。一部ネット民の間で何かと話題になったそうだが、これは好きなタイプのSF。どんでん返しというより、次々と明らかにされる衝撃の真実といった感じで、次回が楽しみなアニメだった。

9「終焉の日」ビクトル・デル・アルボル
スペイン内戦後から現代(と言っても1980年だが)まで続くフランコ派の旧体制につながる復讐が絡むミステリ。この時代だけで完結する物語が多い中で、現代までつながる話はあまりない。原題はLa triteza del samurái。「武士の悲しみ」という意味だが、これは日本刀の銘で、この物語に深く関わる少年が父親から贈られたもの。

10「アベンジャーズ・エンドゲーム」映画
「アベンジャーズ」シリーズのみならず、「アイアンマン(2008)」から始まるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のフェーズ1(全22作)完結作。また、映画だけでなく、「エージェント・カーター」などドラマにしか出演していなかったキャラクターまで出演していたほどの集大成。同じマーベルでありながら、権利を持つ会社が違うため、このグループに属していなかった「Xメン」シリーズも昨年の完結だったが、いまひとつ乗り切れなかったところがあった。どうして「フェニックス」の語り直しをするかな。

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その他、印象に残った作品(順不同)
滑らかな世界とその敵、神を統べる者、ホープは突然現れる、ハイウィング・ストロール、20世紀ラテンアメリカ短編選、チェコSF短編小説集、生まれ変わり、シンギュラリティ・トラップ(以上、書籍)
流転の地球。どろろ、鬼滅の刃、炎炎の消防隊。DR.STONE、転生したらスライムだった件、スパイダーマン :ファー・フロム・ホーム、アンブレラ・アカデミー(以上映像作品)

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