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2020年5月

No.464(Web版114号)4

福田淳一著 
  「石ノ森章太郎とトキワ荘」より

 藤子Ⓐの「トキワ荘青春日記」によると、石ノ森の姉由恵も、上京した石ノ森を心配し、世話をするため1956年(昭和31年)5月15日(火曜日)上京した。この事から、石ノ森が5月4日「トキワ荘」に入居して、10日ほど後に姉の由恵も上京している事が分かる。
 由恵は1935年(昭和10年)4月5日生まれで、1938年(昭和13年)生まれの石ノ森とは3歳違いのように見えるが、石ノ森は1月25日の早生まれであるため、学年では2つ違いになる。よって、石ノ森は「トキワ荘」に入居した時18歳で、誕生日を迎えていた姉の由恵は21歳であった。「手塚治虫とトキワ荘」では、数多くの参考文献を使いよく調べられているが、本人が「小説・トキワ荘・春」の中で”3歳違い”と書いていることからか、由恵が3歳年上と書いていると思われる。
 また、由恵は病弱で、幼い頃から小児喘息の持病を持っており、藤子Ⓐの「トキワ荘青春日記」には、6月9日(土曜日)に喘息の発作を起こし、その後すぐに帰郷した事が記載されている。おそらく東京の空気が合わず、調子を崩していったのだろう。早々に郷里に帰る事になってしまう。よって由恵が最初に上京した時は、「トキワ荘」に1ヶ月も居なかった事になる。だが7月31日には体調がよくなったと、安孫子に暑中見舞いが届いている。その後由恵は「トキワ荘」と郷里を行き来するようになっていく。
 赤塚不二夫は、1956年(昭和31年)6月7日発行の「嵐をこえて」(曙出版)という貸本マンガ似てデビューした。
 この作品は、当時共に漫画家を目指していた横田徳雄(よこたとくお)と共同で住んでいた西荒川の下宿にて描かれたものである。
 その発行日から入稿したのは4月〜5月頃と思われるが、この時期は石ノ森が上京した頃と重なる。最初に住んでいた下宿で倒れていた石ノ森を、赤塚がこの下宿に連れて来た頃だ。この同時期に、ここで石ノ森は上京後の初作品「まだらのひも」を描き、赤塚もデビュー作の「嵐をこえて」を完成させようとしていたのではないだろうか。
 その根拠は、「嵐をこえて」の見返し部分のイラストを石ノ森が描いているからである。石ノ森は赤塚のデビュー作から協力していたことになり、その絆の強さが感じられる。
 その後も、赤塚は同じ曙出版から二作目の「湖上の閃光」(曙出版)1956年8月発行という貸本用のマンガを描いている。赤塚はギャグ漫画を目標にしていたが、このような少女マンガしか描かせてもらえなかった。
 そして三作目の「嵐の波止場」は「トキワ荘」へ移った後に描かれたのだが、気乗りがしないため作品を描くテンポは遅くなっていた。そこで石ノ森は「あと二日で仕上げようぜ」と勝手な締め切り日を宣言したという。
 この単行本「嵐の波止場」は、「狙われたコケシ人形」と「腕時計紛失事件」、そして「あらしの波止場」という三つのエピソードで構成されていた。作画作業は、この「あらしの波止場」の途中まで進んでいたのだろう。残った部分のバックは、風と雨の描写を多用し、長谷も手伝って完成させた。この「あらしの波止場」を見ると、後半は格段に構図やタッチが石森調になっている。
 そして、この本も見返しを石ノ森が描いている。この大胆で斬新な構図には驚かされる。

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No.464(Web版114号)3

幻魔の行方(その二)

中井 良景

「サンデーうぇぶり」に連載されていた「幻魔大戦Rebirth」が完結した。月次掲載で第六十六話「終章約束の扉」が最終回だから、五年半連載されていたことになる。
 原作者の平井和正と石森章太郎亡き後、七月鏡一と早瀬マサトが頑張ってそれを継いで来た。これまでの幻魔シリーズから多くのシーンをなぞって本作で再描写している。特に、原点である少年マガジン版「幻魔大戦」からかなりの部分を持って来ている。キャラクターも作画も当時の作品そのままだ。これは早瀬マサトが石森プロ所属であることを考えれば当然ともいえる。そしてそれは、本作を少年まんがと位置づけ、表現することとしたことを意味する。つまり「新幻魔大戦」にも「真幻魔大戦」にもならないということを連載開始時に宣言したということだ。
 ふたりは、独自に創作した登場人物のほかに、平井、石森双方の作品から様々なキャラクターを連れて来て本作に投入した。001しかり、ミュータント・サブしかり、さるとびエッちゃんしかり、ダミアンしかり、ジュンしかり、アニマしかり、数え上げたらきりがない。宇宙全てを破壊しようとする幻魔との戦いだから、対する地球戦団にも強力な超能力者がいないことにはお話にならない。
 「幻魔大戦」という特にスケールの大きな作品だから、作品枠を超えて様々なキャラクターが集結するのは納得出来る。しかし、他の幻魔シリーズに登場していて本作には出て来ないキャラクターもかなり多い。どうしても物足りなさともったいなさを感じる。リアリー、風魔亜土、蘭、犬神明たちだ。いずれも魅力あふれるキャラクターだけに登場させないのは本当に残念だ。逆に考えれば、登場に値する活躍のさせ方を考え出せなかったのかも知れない。役不足にさせないための策だったとも考えられる。
 全話読み終えて、やはり全体的に物足りなさを感じた(先入観もあるかも知れない)。頑張っていることは素直に認めるが、何よりもまず絵が古い。五十年前の絵だ。石森プロの早瀬マサトなのだから、劇画ノヴェルの「新幻魔大戦」やビッグコミック版の「佐武と市捕物控」くらいの絵にしてほしかった。そうすればストーリー展開にも多少幅が出たかも知れない。また、せっかくの幻魔大戦なのに、スケールの大きさが感じられなかった。ただひとつ感心したのは、地球に向かって落ちてくる月を、東丈が真っ二つに切断するシーンだ。ファンならば誰でも、落ちてくる月を地球エスパー戦団はどうするかということを一度や二度は考えたのではないか。真っ二つは私の想像を超えていた。別次元の月を持ってくる(次元を超えて)ことや、次元を変えることも描かれているが、こちらはあまり感心しなかった(画力にもよるのだろう)。
 最終話の締めくくり方は私の納得のいくものだった。このようにスケールが大きく、タイムリープ、パラレルワールド、生まれ変わり等何でもありの作品は、こうでもしない限り完結させることは出来ない。初回作から五十年以上に亘って「幻魔大戦」全シリーズを読んで来たファンとして、いい加減な終わり方はしてほしくなかったが、これならば及第点を付けられる。考えてみれば、数多くの本シリーズの中で、本作は初めて完結したと言えるものではないか。突っ込みどころは多いが、それを言い出したらきりがない。エピローグに描かれた、シグが作り出した世界での丈とルナの改めての出会いも、どこかで見たようなシーンだがこれはこれで良い。これまでの多くの作品の中で丈とルナは結ばれず、イライラしていた読者も多かったことだろう。私もそのひとりだが、やっと幸せなで嬉しい限りだ。ドク・タイガーの記憶が消えていないことで、今後の新たな展開の余地も残している。ここは賢く憎いやり方だ。完結させ得たことについて、若いふたりの作者に敬意を表する。
 さて、単行本(全十一巻)を買って頭から読み返してみよう。
                         二〇二〇年一月

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No.464(Web版114号)2

 SF essay(283回)
 川瀬広保

 とうとう一年間の臨時講師が終わった。コロナウイルスの影響で、離任式も放送で行うという異常事態だった。こちらが話したことが生徒に通じたかどうかわからない。
全校体制として、生徒はさっさと帰宅させた。翌日も、最終日も生徒がいないのに出勤した。年休(有給)がもうないからだ。そして、30日16時30分に職員室にいた教員にあいさつして帰った。

 コロナウイルスは社会のあらゆるところに影響している。浜松城のボランティア活動もしばらく中止になった。年一度のボランティアの総会も中止。特に高齢者は自宅にいなさいということだが、テレビばかり見ているだけだと、身体が不活発になる。
 全国民にマスク2枚を配布するのだそうだ。あれこれ言う人がいるけれど、マスク不足の今、さっさと配ればいいと思う。
 このコロナウイルスで思い出したのが、小松左京の「復活の日」だ。この作品では未知のウイルスがばらまかれて、人類は滅びて、生き残ったわずかの人たちが南極に移動して、やり直すという話だ。こんなことがSFでなく、現実として起こらないとも限らない。ノストラダムスの予言はあたらなかったということになっているが、時期がちょっとずれて2020年ぐらいに本当に人類滅亡が起こるのではないかと心配する。明日、緊急事態宣言が出る。かつてないことだ。(4月6日)7都道府県に緊急事態宣言が出された。
 SFが現実になった。かつてはSFだったことが現実になってきているように思う。まさか今年の2月ごろには、まだこのコロナウイルスで緊急事態宣言が日本で出るとはだれも思わなかった。それが今は、この話題で日本中が大変だ。あれこれ言っているときではない。
日本、いや世界が汚染されている。ひどくなる一方だ。台風や豪雨も怖いが、目に見えないウィルスも怖い。皆さんはどうですか。

 さて、SFにできることはあるだろうか。SFはかつて数々のディザスター・ストーリーを描いてきた。しかし、「・・・そして、人類は滅亡した。ジ・エンド」というのはなかったと思う。明るい未来を期待していきたい。クラークの「太陽系最後の日」を思い出す。人類は愚かではないと信じたい。
(2020・4・9)

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No.464(Web版114号)1

ルーナティック32号 アニメ特集について 5

4月初旬時点で、まだまだ原稿が少ないので、再募集します。
6月末を最終締め切りとして、原稿を募集します。 これまでに原稿を書かれた方でも、修正や、追加したい部分がある方は、ぜひ6月末までに、よろしくお願いします。
原稿サイズはB5です。できればテキストデータもありましたらありがたいです。
原稿の宛先、事前のご相談等はPM編集部かメールで
cbf06066.cap.y@nifty.com まで。 

さて、コロナの影響か、YouTubeなどで旧作のアニメがいくつか無料公開されています。
5月7日まで限定で、2007年にテレビ放送された「怪物王女」の本編25話まで無料公開されています。
舞台は浜松市の佐鳴台(作品中では笹鳴町と表記)で、少し小高い丘の上に立つ怪しい洋館に住む、全ての異形の者の上に君臨する王の娘「姫」を、主人公の中学生ヒロが助けたことで、姉と共に洋館で暮らすことになります。偶然、工事現場から落ちてきた鉄骨から姫を助け、自分が犠牲になってしまったヒロ。姫の不思議な力で蘇り不死の体になり、姫の家来にさせられたのです。
姫は見た目は色白金髪の清楚な美女ですが、その瞳は獲物を狙う爬虫類のようです。
姫の周りには、見た目は幼女だが、人語は話せず「フガ」としか言わない怪力無双の人造人間や、普段はオフロードバイクを乗り回すただの大食漢だが、満月の夜は無敵の狼女とか、ヒロの通う学校の高等部に在籍している皆に人気の美少女、正体は姫の不思議な力を持つ血を狙っている吸血鬼、などがいます。
姫の王国では、王位継承の条件として王の子供達の生き残った者一人、という厳しい条件があり、当然、兄弟同士で戦いが発生します。姫も他の兄弟からの刺客と毎回戦うことになります。透明人間、ミイラ男、半魚人、獣人、魔女、洗脳された人造人間、人に寄生し操る怪生物、首のない騎士、過去から来た亡霊、などです。戦いの中でヒロが気を失い近くの病院に担ぎ込まれますが、院長はマッドサイエンティストで地域医療より不死の体への興味を優先し「不思議の謎を解かねばならぬ」ヒロもヒロも大ピンチです。
姫は他人に不死の力を与える以外にはこれといった能力はなく、姫自身も不死ではありませんが、群がる敵にも怯むことなく、仲間と共に腕と度胸と得意のチェーンソーで立ち向かいます。
少し前の作品でオープニングやエンディングは素晴らしいのですが、本編は脚本と演出と作画に少々難があるかもしれません。そこは想像力の翼を広げましょう。
今宵も佐鳴台(作品中では笹鳴町と表記)にチェーンソーのエンジン音が鳴り響き、惨劇の幕が開くのです。     

                 (ルーナティック32号編集部)

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