No.464(Web版114号)3
幻魔の行方(その二)
中井 良景
「サンデーうぇぶり」に連載されていた「幻魔大戦Rebirth」が完結した。月次掲載で第六十六話「終章約束の扉」が最終回だから、五年半連載されていたことになる。
原作者の平井和正と石森章太郎亡き後、七月鏡一と早瀬マサトが頑張ってそれを継いで来た。これまでの幻魔シリーズから多くのシーンをなぞって本作で再描写している。特に、原点である少年マガジン版「幻魔大戦」からかなりの部分を持って来ている。キャラクターも作画も当時の作品そのままだ。これは早瀬マサトが石森プロ所属であることを考えれば当然ともいえる。そしてそれは、本作を少年まんがと位置づけ、表現することとしたことを意味する。つまり「新幻魔大戦」にも「真幻魔大戦」にもならないということを連載開始時に宣言したということだ。
ふたりは、独自に創作した登場人物のほかに、平井、石森双方の作品から様々なキャラクターを連れて来て本作に投入した。001しかり、ミュータント・サブしかり、さるとびエッちゃんしかり、ダミアンしかり、ジュンしかり、アニマしかり、数え上げたらきりがない。宇宙全てを破壊しようとする幻魔との戦いだから、対する地球戦団にも強力な超能力者がいないことにはお話にならない。
「幻魔大戦」という特にスケールの大きな作品だから、作品枠を超えて様々なキャラクターが集結するのは納得出来る。しかし、他の幻魔シリーズに登場していて本作には出て来ないキャラクターもかなり多い。どうしても物足りなさともったいなさを感じる。リアリー、風魔亜土、蘭、犬神明たちだ。いずれも魅力あふれるキャラクターだけに登場させないのは本当に残念だ。逆に考えれば、登場に値する活躍のさせ方を考え出せなかったのかも知れない。役不足にさせないための策だったとも考えられる。
全話読み終えて、やはり全体的に物足りなさを感じた(先入観もあるかも知れない)。頑張っていることは素直に認めるが、何よりもまず絵が古い。五十年前の絵だ。石森プロの早瀬マサトなのだから、劇画ノヴェルの「新幻魔大戦」やビッグコミック版の「佐武と市捕物控」くらいの絵にしてほしかった。そうすればストーリー展開にも多少幅が出たかも知れない。また、せっかくの幻魔大戦なのに、スケールの大きさが感じられなかった。ただひとつ感心したのは、地球に向かって落ちてくる月を、東丈が真っ二つに切断するシーンだ。ファンならば誰でも、落ちてくる月を地球エスパー戦団はどうするかということを一度や二度は考えたのではないか。真っ二つは私の想像を超えていた。別次元の月を持ってくる(次元を超えて)ことや、次元を変えることも描かれているが、こちらはあまり感心しなかった(画力にもよるのだろう)。
最終話の締めくくり方は私の納得のいくものだった。このようにスケールが大きく、タイムリープ、パラレルワールド、生まれ変わり等何でもありの作品は、こうでもしない限り完結させることは出来ない。初回作から五十年以上に亘って「幻魔大戦」全シリーズを読んで来たファンとして、いい加減な終わり方はしてほしくなかったが、これならば及第点を付けられる。考えてみれば、数多くの本シリーズの中で、本作は初めて完結したと言えるものではないか。突っ込みどころは多いが、それを言い出したらきりがない。エピローグに描かれた、シグが作り出した世界での丈とルナの改めての出会いも、どこかで見たようなシーンだがこれはこれで良い。これまでの多くの作品の中で丈とルナは結ばれず、イライラしていた読者も多かったことだろう。私もそのひとりだが、やっと幸せなで嬉しい限りだ。ドク・タイガーの記憶が消えていないことで、今後の新たな展開の余地も残している。ここは賢く憎いやり方だ。完結させ得たことについて、若いふたりの作者に敬意を表する。
さて、単行本(全十一巻)を買って頭から読み返してみよう。
二〇二〇年一月
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