« No.465(Web版115号)2 | トップページ | No.465(Web版115号)4 »

No.465(Web版115号)3

 SF essay(284回)

 川瀬広保

 朝日新聞の朝刊(5月11日)にコロナウィルスの世界中の蔓延に関連して、小松左京の「復活の日」を大きく取り上げて、記事にしていた。小松左京は、50年も前に未来を予見していたのだ。こういうことがいつか起こるということを。考えたことはすべて起こりうる。

 さて、SFマガジン6月号がなかなか発売にならない。今までこういうことはなかった。SFMは福島正美が創刊して最初の3号続けばいいと思っていたらしいが、その後ずっと続いてきた。最近になって、隔月刊になった時は、心底びっくりした。それでも偶数月の25日には発売され続けた。値段はその分上がったが、私は購入し続けた。早川書房のホームページにはコロナウィルスのために編集委員が在宅勤務を強いられていて、編集が進まないまたはできないらしい。コロナウィルスはわれわれの生活のどこにまでも侵入してくる。
 SFマガジンに限らず他の出版物や雑誌などにも影響があるようだ。歴史のあるSFマガジンが廃刊にならないよう切に願っている。

 コロナウィルスは、教育界にも大きな影響を及ぼしている。新学期を9月にしようとか分散登校とかオンライン授業とかあれこれ言われている。小1と小6、中1と中3のみが登校するなど大変である。生徒の学力は確実に落ちると思う。たとえ猛暑の8月などに授業をやったとしても。そうならないように教育界あるいはそれぞれの学校は懸命である。コロナはどこまでもわれわれの生活の奥にまで入り込んでくる。
スペイン風邪の時は、世界で5000万人とも1億人ともいわれる人が死亡したと言う。その中に私の母方の祖父母がいた。よく母から聞かされていた。母は別の人に育てられた。私はよくわかっていなかったが、コロナが蔓延し、歳もとって来た今、その大変さが少しわかるような気がする。他にも、そのような境遇の方はいただろう。

 さて、ウェルズの「宇宙戦争」の出だしの部分では「まるで水滴下でうごめく微生物のよう」と火星人がわれわれ地球人を観察していた模様を描いている。コロナから見れば、われわれ人間はやれ3密だ、マスク着用だ、手洗いだ、自粛だとおろおろとうごめく人間かもしれない。その火星人も地球のウィルスにやられて、地球征服は成らなかったのである。

遥か数億年の未来、ダイアスパーという永遠の都市を築いた未来の人類は、あらゆる病気や戦争やいさかいを克服し、芸術にのみ時間を使っていたというくだりが、クラークの「都市と星」の中にある。永遠に午後2時の日差しが照り、働くなど不要になった世界である。もちろん微生物やウィルスに悩まされることもないのだ。
 クラークはオピティミストだった。悲観に走ることはなかったらしい。クラークが生きていれば、このコロナに蔓延された世界について、何て言っただろうなどと考えてしまう。

 どうやらコロナと共存していくしかないらしい。最初に書いたようにSFマガジンがまさか廃刊になどならないよう願うばかりだ。
 では、今月はこの辺で。次回はもう少し、コロナが収束していますように、オプティミスティックに考えていきたい。
(2020・5・16)

|

« No.465(Web版115号)2 | トップページ | No.465(Web版115号)4 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« No.465(Web版115号)2 | トップページ | No.465(Web版115号)4 »