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No.466(Web版116号)3

 「幽霊船」と「空飛ぶゆうれい船」

 福田淳一

 「幽霊船」は、石ノ森章太郎が「トキワ荘」時代に描いた初期のSF作品で、『少年』(光文社)に1960年(昭和35年)7月号から1961年(昭和36年)8月号まで1年あまり連載された。
 この作品は、謎の幽霊船を巡り主人公の嵐山イサムが、空や海を舞台に大活躍する姿を描いている。その中で幽霊船が飛行したり、巨大ロボットのゴーレム0や、アトランティスの末裔の海底人、海底魔王ボアーが登場するなどのSF的な要素が満載であるが、当時はまだ “SF” という用語は一般的ではなく “痛快冒険まんが” や “痛快探偵まんが” と編集部でタイトルに付加されていた。
 この作品は、本編や単色の扉の原稿はほぼ残されているが、私は5枚のカラー扉の原画は見た事が無かった。その中で2回目の1960年8月号と4回目の10月号のカラー扉は、「まんだらけマンガ目録⑧」(1995年3月21日発行)にそれぞれ95000円と15万円で出品されていた。当然そのとき貴重な原画が散逸してはいけないと申し込みをしたが、見事に両方とも外れてしまった。この2点の原画は恐らく現在も、この時当選して購入した方が所有しているものと思われる。
 この「幽霊船」は、新書版の単行本が発行され始めた頃の1966年(昭和41年)、「ダイヤモンドコミックス」(コダマプレス社)から11月10日発行で初めて単行本化された。連載終了から5年後の事である。石ノ森は単行本化の際、広告等で空いていた部分に加筆することはあるが、その他の部分に手を加えることは少ない。しかしこの作品では、全体的に岩などに影の部分等を加筆し、作画の密度を上げて、よりメリハリのきいた見やすい画面に仕上げている。この頃は、新書版サイズの単行本が出だした頃で、単行本化の際は丁寧に加筆や修正をしていたのだ。

 なおこの「幽霊船」は、「空飛ぶゆうれい船」とタイトルを変更して1969年(昭和44年)7月20日に劇場公開されたアニメーションにより、多くの人に知られる作品となった。
 このアニメが制作された当時は、長編のフルアニメは時間と費用が係る事から、フルアニメとリミテッドアニメの中間的な、上映時間が1時間ほどの中編アニメとして「サイボーグ009」の一作目が制作された。それが大ヒットした事により、それが主流となってこの作品も制作されている。
 このアニメ版では、幽霊船長の仮面がドクロに変更され不気味感を盛り上げ、ゴーレム0の制作者である左巻博士や暗黒団の黒潮鳴人が登場しないなど、登場人物が変更されているのだが、全体的に原作を踏襲し、当時一番原作に近いアニメーションに仕上がっている。
 さらに、このアニメ版では宮崎駿が原画で参画していることにより戦闘シーンなどに迫力が増している。このようにして、「空飛ぶゆうれい船」は、多くのファンを持つ名作として名高いアニメになったのである。
 石ノ森章太郎は、この「幽霊船」の連載を1961年(昭和36年)8月号にて終了して間もなく、次々と「トキワ荘」から仲間が去っていくなか、このままマンガ家を続けるべきかといった悩みなどを抱え、まだ海外旅行が自由化されていない中、世界を一周するという旅行へと旅立って行くのである。

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