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2020年10月

No.469(Web版119号)3

 エイトマンと二人

 加藤弘一

今日は家の奥さんの入院日である。待ち番号は8。(オオ!エイトマン)と心で叫んでしまった。
作画の桑田二郎氏が亡くなった。原作の平井和正氏は2015年に鬼籍に入っているので、二人のオリジナルのエイトマンが出ることはなくなった。
人の操縦する鉄人28号、人の作りしロボットアトム、そして人の記憶と個性を移植されたサイボーグ型のロボットエイトマンとあの時代三つのロボットアニメが放映されていた。そのなかでも後発のエイトマンは殆ど原作ストックもないまま製作が始まった為、原作者平井和正氏がスタッフに名を連ね、氏が後に作家になる豊田、半村氏らを仲間に引き入れた。このため、子供向けよりもちょっぴり重厚なストーリーが展開する事となった。
8マンは少年マガジン編集部で新しいロボット物を作ろうと言うことで原作者と作画家を別々に募集した企画であった。
「デザインされた8マンはどれもウルトラマンのようなボテボテしたものばかりだったが、桑田二郎の8マンは秀逸のものだった。」と、後に平井氏が言っている。
(ウルトラマンがボテボテしたデザインというのは疑問も感じるが)
こうして漫画のタイトルは8マン。アニメはエイトマンとなり、先発のアトム、鉄人を凌ぐ人気を得て順調に行くと思われた。
当時、アニメを見ていた自分はなぜエイトマンの手足が分離して活躍しないのか不思議に思っていた。後年、手足が分離するのはキングロボと言う桑田二郎のオリジナル作品であることが判った。一応、差別化はされているが主人公の本郷一郎は東八郎にそっくりだし、さち子さんのポジションにミチコさんがいたりしてなんか同じキャラクターが別の物語をやっているようだが、当時の読者達は自分のように思わなかったのだろうか。
エイトマンはアニメもコミックもクライマックスの時とんでもないことが起きてしまう。
作画家の桑田二郎が拳銃不法所持で逮捕されてしまったのだ。
コズマ編の最終回は桑田氏不在の中、アシスタントにより作画された作品が雑誌に掲載され、これに怒った平井氏により単行本化は封印されてしまった。
こんな事件があったなら普通コンビは解消してしまうものだが、その後も超犬リープ、エリート(編集者の都合でバットマン日本版で中断させられるが、バットマン終了後第二部を製作)、デスハンターと二人の製作は続いた。
そして、1990年リム出版より8マンの完全版にコズマ編の最終回桑田二郎による作画作品が描き足され物語は完結した。
8マンのロボットテクノロジーは実は古代文明の産物で、コズマ編の後はそれをテーマに物語が展開される予定だったらしい。
あの世で、二人はあの世マガジンに続きを連載しているかもしれませんね。

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No.469(Web版119号)2

 時代を超えて読み継がれる「銀河英雄伝説」

 中村達彦

 NHKEテレで、月曜日夜11時にアニメ「銀河英雄伝説」が放送されていた。
 同作は、田中芳樹によるスペースオペラで、徳間書店で発表され、87年に完結。本編10巻、外伝5巻で構成された(現在は東京創元社から刊行中)。88年から一度アニメ化され、今回は二度目になる。コミックやゲームにもなっており、出版社を超えて版が重ねられているヒット作品だ。
 ストーリーは現在から1500年未来、人類は宇宙に広く進出したが、政体は銀河連邦からゴールデンバウム王朝銀河帝国に変わっており、これを良しとしない圧政からの脱出者や亡命者で民主主義の政体自由惑星同盟が樹立。1世紀以上、覇権をめぐって戦いを続けていた。
 そんな時、銀河帝国では、姉を皇宮入りさせられた金髪のラインハルト・フォン・ミューゼルが武勲を重ね、頭角を現すようになる。彼の目的は、愛する姉を奪った王朝や権力への復讐であり、彼と志を同じにする人材が集まってくる。
 一方、自由惑星同盟にも、黒い髪が特徴で、戦争は嫌いだが、無料で歴史を学ぶため、軍に入ったヤン・ウェンリーが頭角を現し、彼のもとにも人が集う。
 ラインハルトとヤン、2人は戦場で出会い、互いを意識し合うようになる。2人により歴史は大きく動き出していく。更に、銀河帝国と自由惑星同盟に挟まれた自治領の暗躍や、かつて人類の活躍の場で、現在は忘れ去られた地球の存在も描かれていく。
「銀河英雄伝説」は、ワープ航法を可能にした宇宙艦船同士の艦隊戦がメインであるが、地表の陣形や補給が、宇宙でも反映されており、またサイボーグやクローン、超能力などの超技術も登場しないし、当時普及していなかったネットや携帯電話も描かれていない。
 田中芳樹が精通していないこともあり、ハードウエアについても巻を重ねるごとに薄くなっていく。
 そのためSF作家などから、「銀河英雄伝説」はSFではないと辛辣な声が発せられた。
 しかしキャラクターの織り成す、采配や謀略を含むアクションや行動、交わされる台詞には、SF小道具を凌ぐ魅力がある。作品では長い宇宙史が語られており、民主主義にも多くの問題があり、両陣営に、良い奴もいれば、嫌な奴もいる。我々の生きる世界に相通じ、考えさせることが多々ある。
「銀河英雄伝説」が始まった82年頃、徳間書店では、荒巻義雄のスペースオペラ「ビッグウォーズ」があった。
 未来、太陽系に広がった地球人類が神を名乗る敵と神人戦争になるストーリーで、本編4巻、外伝3巻が発表された。
 また鶴書房から出たスペースオペラで、ベンボバの「星の征服者」がある。私は何度も読み影響を受けた。
「星の征服者」は、宇宙人ベーカーマンの1人称で語られる。未来の宇宙で、爬虫類型の種族ソウリア人に地球は攻められ、劣勢に陥る。しかし地球人の青年ノーランドは、新しい地球軍を編成し、反撃を開始する。
 司令官に就任したノーランドは、実は超能力者のアランや他の新進気鋭の若者を友とし、他の星々の種族と同盟を結び、ソウリア人と戦い版図を広げていく。次第に銀河帝国を巡る壮大な秘密が眼の前に明かされていく。スケールが大きい物語だ。
「ビッグウォーズ」や「星の征服者」のような作品と思ったが、「銀河英雄伝説」は独自の面白さを持つ物語であり、3巻が出た後に徳間書店並びにSFアドベンチャーでも看板作品となり、87年に本編終了。翌年、アニメ化され、本編外伝併せて100巻以上の大作になっている。
 Eテレで放送された二度目のアニメは、スタッフ・キャストが違うが、ストーリーの流れは87年の原作通りであり、大まかな変更は無い。ちなみに9月までEテレで放映されたアニメは原作の2巻までの分だ。
「銀河英雄伝説」は、その面白さから多くのファンを得た(私もその1人だ)。
 最初1巻が出た時、ヒットするかわからず、2巻が出た時、10巻の構成が決まったそうだ。最初から10巻の構成でスタートしていたら物語はどう違っただろうか?
 また様々な登場人物がドラマを演じるが、対立の焦点とでも言うものを感じさせる。
 ラインハルトには幼い時から付き従う腹心の友キルヒアイスがおり、ヤンには養子になった少年ユリアンがいるが、2人は、主人公に忠誠を尽くし、非凡な才能を持つが、その運命は対照的である。キルヒアイスはラインハルトに疎まれたことが間接的になり、2巻で退場となるが、ユリアンはヤンから多くを学び、後半では第3の主人公といえる存在になっていく。
 田中芳樹は、マンガやアニメのファンである。「銀河英雄伝説」完結後のあとがきで続編は書かないと明言した上、執筆中に来た読者からの「キャラの誰々を殺さないでくれ」との助命嘆願についても丁寧にコメントしており、読者と真摯に向き合っている。
「銀河英雄伝説」が完結した後も、南アジアをモデルにしたファンタジー戦記「アルスラーン戦記」や現代日本を舞台にした伝奇「創竜伝」、性格が悪い美貌の女性警察官僚が怪奇生物を叩きのめす「薬師寺涼子の怪奇事件簿」などのシリーズを書き、ヒットを飛ばしている。キャラクターは魅力的で、文章は字でマンガを読んでいるといっても良い。
 他にもヨーロッパや中国を舞台にしたり、新たにSF世界観を構築した小説なども発表しており、「銀河英雄伝説」1本のヒットに終わっていない。他にもアニメ化された小説は多くあり、その影響を受けた後続作家は少なからずいる。
 現在、田中は執筆途中の作品について、続編を書いている。いつまで書くか不明だが、「銀河英雄伝説」はこれからも読み続けられていくだろう。

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No.469(Web版119号)1

 SFマンガ レインマン(星野之宣作)についてあれこれ

 by 渡辺ユリア

2019年のSF大会の星雲賞候補作の『レインマン(全7巻)』を最近友人から借りて読みました。・・・母の死をきっかけに主人公雨宮瀑(あまみやたき)の運命は激変する。彼は大学生だったが、超心理学研究所という怪しい職場で働くことになり、存在すら知らなかった双子の兄が突然あらわれた。そして…、というサスペンス風の物語…と思っていると次第に世界が広がってゆく。レインマン(雨男)というのはどんな存在か?そういう知的な想像力をしげきしてくれる壮大な物語であると私は思います。
 ぜひ読んでください。               yullia 2020.9.21

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No.468(Web版118号)3

 ザ▪ムーンの思い出

 加藤弘一

巨大ロボットの大御所と言えば横山光輝大先生であろう。
鉄人28号、ジャイアントロボ、バビル二世のポセイドン、マーズのガイヤー等の数々のロボットを産み出し、何回かの巨大ロボットブームを支えて来た。
そのブームの中で様々な漫画家が巨大ロボット物に挑戦した。
手塚治虫のマグマ大使、魔神ガロン。水木しげるの巨大クジラロボット。
石森章太郎の大鉄人17(ワンセブン)等々。
そして、永井豪のマジンガーZをはじめとする一連のTVアニメシリーズ。
これらの作品は大抵一人のパイロットにより操縦されるタイプだった。
それ以外に複数の人間により動くロボット物もある。
9人の少年少女の心が一つになる時、額の九つランプが全て点灯し無敵のロボットとなるザ▪ムーンはジョージ秋山の作品である。
国家的予算を投じてムーンを作り上げたのは頭がチ◯ポの形をした魔魔男爵。
とてつもない資金を持つ男爵はおそらく正義の人ではないが、正義をなすには何が必要かを考えたのだろう。そして、子供達の心こそそれに一番近く、その数を9人と定めたのだ。
設定がこうだからして、ムーンの敵は悪ではなく己の正義を持つ者たちである。
敵は自らの目的遂行の妨げになるムーンの強力な力を恐れ子供たちに襲いかかって来る。
結果色んな意見を持つ子供達も、仲間を守る為ムーンを動かそうと心を一つにして戦わざるをえなくなるのだ。
しかし、いかんせん9人の心を一つにすると言う状況を作り上げたのはかなりしんどい事で、一人拐われたり疲れて気力が落ちただけでムーンは動かなくなってしまう。
これを上手く切り抜けさせるのがストーリーテラージョージ秋山であるが、読んでいてもどかしい思いにかられたものである。
結果的に最終回、子供たちが次々と倒れムーンは動けない為に作動油の涙を流し続けると言う消化不良のようなラストで終わる。
教訓的な終わり方はたまには良いが、ジョージ秋山の漫画はけっこうこの手の終わり方が多いので、別のラストが見たかったと思う今日この頃である。

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No.468(Web版118号)2

 SF essay

 川瀬広保

 コロナは蔓延している。とうとう浜松にもクラスターが発生した。全国ニュースのほとんどトップにそのニュースが出ている。浜松城がライトアップだ。まず、黄色に、もっと感染者が多くなれば赤にするという。だが、我が家からは浜松城は見えない。見えたとしても、双眼鏡の大きなものでも持ってこなければ、黄色か赤かわからないだろう。アクトタワーの方がいいと思う。アクトは市が関係していないからだめなのだろう。

 さて、先月にも書いたが、五島勉氏の「ノストラダムスの大予言」に1999年7月に人類は滅亡するということになっていたが、7月が過ぎ8月が過ぎても滅亡しなかった。だが、どこかに書いてあったように思うのだが、2020年または2023年にずれこんだのではないであろうか。そうだとするとこのコロナの蔓延がその予言だったのかもしれない。
 人は予言が大好きだ。大相撲でどちらが勝つか、あなたの未来はどうなるか、みんなこの手の話は大好きである。未来には二つあって、一つは単純未来、もう一つは意思未来である。明日は金曜日だとか来年は2021年だというのは変えられない。だが、明日東京へ行くつもりだというのは、突然台風が来て、新幹線が止まるということがなければ行くのだろう。
 コロナもみんながマスクをして、外出を自粛して、三密を避ければ、感染者数は減っていくのだろう。その辺は人類が滅亡しないための意思未来である。
 It will be Friday tomorrow.
 明日は金曜日です。
 I will go to Tokyo tomorrow.
 明日、東京へ行きます。または、
 I won, t go to Tokyo anymore.
 (コロナが収束するまでは)
 東京へはもう行かない。
 これは強い意思未来である。
 前者は地球が太陽の周りを公転するのをやめたとか、自転もやめたということでもなければ、明日は金曜日である。変えられない。
 後者は台風が来ようが、新幹線が止まらない限り、その人の意思で東京へ行くのである。
 コロナもウィルスにかからないために、マスクをして、手洗いをして、密集を避ければ感染者数は減るのだろう。ただ、日本の多くの人は言われるようにしている。それでも、コロナは蔓延し、毎日がこのニュースである。ノストラダムスの予言が実はコロナだったとならないようにするために、未来は意志で変えられると信じたい。
 ドラえもんも言っている。「未来は変わるからね」のび太が一生懸命勉強すればテストの点がアップし、成績もよくなる。ドラえもん頼みだと一時よくなってもすぐまた成績が下がり、居残りも多くなる。
 意思によって未来は変わるという考えと、未来はもう決まっていて変えられないという考えもある。こんなことは家の猫を見ていると、人間だけしか考えないことだと思う。
 さて、森東作さんから、例のSFファングループ資料研究会のデータベースのCDーRが送られて来た。いつものことながら、森さんの息の長いこうした活動には頭が下がる。SFはファンあってのことであって、ファン活動は昔からずっと続いてきたのだ。これからもぜひ続けてほしいと思っています。
(2020・8・1)

 この「ペーパームーン」の創刊当時から、「SFエッセイ」を連載していた川瀬広保さんが、今月分の原稿を書き終えた8月5日に近所の神社にて倒れて入院し、緊急手術を受けました。
 硬膜下血腫と脳挫傷により、長期入院になる見込みとの事です。
 この「SFエッセイ」もこの原稿以降休載になります。今の所再開の予定は全く立っていません。
 川瀬広保さんの一日も早い回復をお祈り申し上げます。   (福田)

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