No.468(Web版118号)3
ザ▪ムーンの思い出
加藤弘一
巨大ロボットの大御所と言えば横山光輝大先生であろう。
鉄人28号、ジャイアントロボ、バビル二世のポセイドン、マーズのガイヤー等の数々のロボットを産み出し、何回かの巨大ロボットブームを支えて来た。
そのブームの中で様々な漫画家が巨大ロボット物に挑戦した。
手塚治虫のマグマ大使、魔神ガロン。水木しげるの巨大クジラロボット。
石森章太郎の大鉄人17(ワンセブン)等々。
そして、永井豪のマジンガーZをはじめとする一連のTVアニメシリーズ。
これらの作品は大抵一人のパイロットにより操縦されるタイプだった。
それ以外に複数の人間により動くロボット物もある。
9人の少年少女の心が一つになる時、額の九つランプが全て点灯し無敵のロボットとなるザ▪ムーンはジョージ秋山の作品である。
国家的予算を投じてムーンを作り上げたのは頭がチ◯ポの形をした魔魔男爵。
とてつもない資金を持つ男爵はおそらく正義の人ではないが、正義をなすには何が必要かを考えたのだろう。そして、子供達の心こそそれに一番近く、その数を9人と定めたのだ。
設定がこうだからして、ムーンの敵は悪ではなく己の正義を持つ者たちである。
敵は自らの目的遂行の妨げになるムーンの強力な力を恐れ子供たちに襲いかかって来る。
結果色んな意見を持つ子供達も、仲間を守る為ムーンを動かそうと心を一つにして戦わざるをえなくなるのだ。
しかし、いかんせん9人の心を一つにすると言う状況を作り上げたのはかなりしんどい事で、一人拐われたり疲れて気力が落ちただけでムーンは動かなくなってしまう。
これを上手く切り抜けさせるのがストーリーテラージョージ秋山であるが、読んでいてもどかしい思いにかられたものである。
結果的に最終回、子供たちが次々と倒れムーンは動けない為に作動油の涙を流し続けると言う消化不良のようなラストで終わる。
教訓的な終わり方はたまには良いが、ジョージ秋山の漫画はけっこうこの手の終わり方が多いので、別のラストが見たかったと思う今日この頃である。
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