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No.470(Web版120号)3

 金融な人々(ATM操作の違い)

 中井 良景

 ATMと言えば、現金の払い戻しだけではなく、現金預け入れ、残高照会、振り込み、通帳記入、定期預金契約・解約、暗証番号変更、払戻限度額変更等様々な機能を備えている。中には宝くじ購入、税金等払い込みが可能なものまである。“Automatic Teller Machine”の名のとおり、テラー(窓口係)の役割を十分に果たしている。
 そんなATMだが、、普段あまり気にならないし、気にする人もほとんどいないと思うが、操作方法も銀行によって様々だ。銀行はそれぞれ独自のオンラインシステムを構築していて、ソフトウェアでATMを制御している。ソフト開発者(企画立案者)により当然操作方法は異なる。いずれの開発者も利用者が使いやすいようにとの気持ちからそれぞれ工夫しているのだが、如何せん、使いやすいと思う感覚が開発者により異なるのだ。
 ATMでの現金払い戻しの場合、利用者が入力する項目は暗証番号四桁と金額だけである。それだけなのにATMの画面は銀行により大きく異なる。ある銀行は初画面で「払戻」にタッチし、その後キャッシュカードをカード口へ挿入する。そうすると暗証番号と金額の入力画面が表れる。別の銀行では、「払戻」にタッチせず、そのままキャッシュカードを挿入すれば取引が始まる。さらに別の銀行では、「払戻」の前に「取引開始」の画面があり、そのパネルにタッチしなければ何も始まらない。この三つのケースだけでも二ステップ違う。一、二秒の違いだが、急ぐ利用者には不評だろう。しかし、それぞれのソフトウェアにはそのようにした理由がそれぞれあり、開発者はそれぞれ自分の開発したものがベストだと思っているに違いない。
 一 「取引開始」タッチ →「払戻」タッチ → キャッシュカード挿入 → 暗証番号入力 → 金額入力
   このソフト開発者は、操作が誰でも分かるよう、順次ステップを踏むことを重視している。
 二 「払戻」→ キャッシュカード挿入 → 暗証番号入力 → 金額入力
   このソフトの開発者は「取引開始」画面を省略し、ステップを踏みつつスピードアップを図っている。
 三 キャッシュカード挿入 → 暗証番号入力 → 金額入力
   このソフト開発者は、ATMの利用は八割以上が払戻であることを踏まえたうえで、スピードアップを目指している。初期画面には「取引開始」も表示されていて、他取引への遷移もワンタッチで可能である。
 三種類の操作方法のうち、どれが優れているとは一概に言えない。前述の通り開発者(銀行)は我こそがベストだと思っている。こればかりは仕方ない。
 「払戻」操作だけでもこのような違いがある。もっと細かいところを見れば、金額の入力方法だって銀行により異なっている。金額くらい、単に数字を入力するだけだから同じだろうと考えていたが、そうでもない。
 例えば、十二万三千円を払い戻す場合を考えてみよう。
 一 「1」、「2」、「3」、「千」、「円」を順次入力
 二 「1」、「2」、「万」、「3」、「千」、「円」を順次入力
 前記『一』の入力が一般的だと思うが、『二』の入力方法を採用している銀行もかなりある。この時、「万」を入力(タッチ)しないと次に進めないのだ。また、別の銀行では、『一』の方式で「万」を入力しないと、千円札が百二十三枚払い戻される仕組みになっている。「万」を入力することにより万円札と千円札の払い戻し枚数を決めているのだ。私も実際に「万」を入力せずに操作し、千円札が大量に払い戻されて焦ったことがある。
 このように、ATMのほぼ同じと思われる操作でさえ様々な方式があるものを実際に体験すると、自動車の運転方法が世界共通であることに今更ながら感心する。

 二◯二◯年一◯月

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