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2021年2月

No.473(Web版123号)3

 会津磐梯山はすごい山だ

 by 渡辺ユリア

 磐梯山は表側のなだらかな斜面と異なって裏側は、切り立った崖がけわしく見える。丁度裏磐梯レイク・リゾートの前庭からよく見えます。山体崩壊した場所が痛々しくみえますね。その崩壊した岩が川をせきとめた結果、数多くの湖は沼が出現したわけです。五色沼などは美しいです。青い色彩でも沼ごとに異なった色です。
 そして磐梯山の周辺には熱塩温泉があって(そのあたりは昔々海だったそうです。凝灰岩が地表に出ているばしょがあるそうです)そして温泉の湯をあたためて、蒸発させて塩をつくるのです。江戸時代には、その塩を売って会津藩は藩の収入にしていたそうです。
(株)KADOKAWA発行 ブラタモリ8巻より
                  yullia 2021.1.14

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No.473(Web版123号)2

 55年目のウルトラマン

 中村達彦

 昨年2020年は、新型コロナに苦しめられた1年で、他にアメリカ大統領選挙や香港民主化の問題があり、騒動は現在も続いている。また多くの方が亡くなった。ご冥福を祈りたい。11月23日にSF作家で小林泰三が亡くなった。58歳。
 1995年に「玩具修理者」でデビュー、以後創作活動を続け、SF以外に「アリス殺し」など推理小説や「脳髄工場」などホラー小説も多数発表した。短編から長編まで幅広く、残酷で猟奇的描写や記憶を巡る作品を書いた。1998年「海を見る人」、2004年「AΩ超空想科学怪奇譚」、2010年「天体の観測について」、2012年「天獄と地国」などの作品があり、2度星雲賞を受賞している。
 まだまだ活躍してもらいたかったが。
 亡くなる前に「ウルトラマンF」と言う作品を発表していた。2015年にSFマガジン誌上で連載され、翌年単行本化され、2018年には文庫化、また2017年に星雲賞を受賞した。
 物語は、「ウルトラマン」の世界観で語られ、ゼットンとの戦いが終わってから、科学特捜隊を中心にすすむ。
 世界各国は、怪獣の残骸から各々兵器の開発にしのぎを削った。科特隊は、未知の技術メテオールを用いて、ウルトラマンをベースにした強化服ウルトラアーマーの開発を進め、かつてウルトラマンだった科特隊員早田進は人体実験に従事させられていた。
 実験に異議を唱える科特隊の富士明子は、かつてメフィラス星人に仕掛けられたナノシステムの仕組みが作動、巨大化してしまう。また外国の天才学者インペイシャントが行う巨人兵士計画研究からの圧力、次々に世界を超えて来襲する侵略者と凶事が相次ぐ。
 物語の主人公科特隊の井出光弘は苦渋の決断で、ウルトラアーマーを武装強化し、巨大化した富士隊員に装備することに。
 ウルトラマンFの誕生である。
 人類の生み出した科学技術がきっかけで生まれた侵略者が街を襲い、科特隊やウルトラマンFは立ち向かう。ウルトラマンに似た敵、通常世界を超えた敵との戦い。
 最後、ハイパーゼットンとの対決。戦いが終わってから、井出に送られるウルトラマンからのメッセージとは?
 イラストは円谷プロの後藤正行が担当。
 読んでみて、残酷的な描写があり、それは「ウルトラマン」の世界観とそぐわない。
 しかし、後に作られる「ウルトラマンネクサス」や「ウルトラマンメビウス」の敵や登場人物も絡んでくる。キャスト的にもニヤリとさせられる設定もあり、ウルトラシリーズへの深い想いを感じてしまう。
 最後まで面白く読ませてもらった。
 小林泰三は、円谷プロとSFマガジンが2015年にコラボしたが、そこでも「ウルトラマンギンガS」の外伝「マウンテンピーナッツ」と言う小説を書いている。その時、他にも複数の作家がウルトラシリーズを舞台にした作品を発表し、「多々良島ふたたびウルトラ怪獣アンソロジー」で書籍化された。
 ちなみにウルトラシリーズの第1作「ウルトラQ」もSF作家クラブが企画に協力し、ストーリーを提供したりしている。
 承知の通り「ウルトラQ」と続く「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」は高視聴率の大ヒットとなったが、昨年亡くなったマンガ家の桑田二郎や一峰大二は、放送当時、雑誌でウルトラシリーズのマンガを描き、両氏の代表作の1つになった。まだビデオソフトが普及する前で、読んだ人もいるだろう。
 TVの作品をベースにしているが、ストーリーや怪獣のデザインで独自のアイデアを入れることもあった。
 昨年の初めに、脚本家の上原正三も亡くなった。上原は「ウルトラQ」以来、ウルトラシリーズの脚本を多数書き、他にも東映などの多くの特撮・アニメ作品を手がけた。傑作と言われる脚本が多くあるが、没になった話も少なくない。
 その中には「ウルトラセブン」のエピソードで、「宇宙人15+怪獣35」がある。視聴率もブームも下降気味な時、盛り返しを目指した。「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」の宇宙人・怪獣が大挙して攻撃、ウルトラセブンやウルトラ警備隊が迎え撃つ。監督は実相寺昭雄を予定していたが、没になった。
 映像化されていれば注目のエピソードになったであろう。
 40年後の2007年、一峰大二に「宇宙人15+怪獣35」はマンガ化された。一部絵柄、設定が合っていないところもあるが、昔の一峰のマンガを思い出してしまう。
 円谷プロは一時経営が困難になったものの、持ち直し、近年は「ULTRAMAN」「SSSS.GRIDMAN」と話題作のアニメを発表し、特撮のウルトラシリーズも新作が続いている。現在は半年間の放送だが、2013年から連続している。もっとも「ウルトラマン」と比べ、デザインが用途に応じて次々に変わるなど設定やストーリーフォーマットが昔とは異なるが。
 去年放送された「ウルトラマンZ」も話題作となった。
 ウルトラQやウルトラマンの怪獣が登場する世界で、Zと言うウルトラマンが活躍する話だが、防衛隊は、セブンガー、ウインダムなどのロボット怪獣を操縦して戦っている。劇中いろいろアイデアで工夫しているので、一度観ていただきたい。
 スタッフで脚本・構成で貢献した吹原幸太と言う方がいたが、「ウルトラマンZ」放送開始前に逝去した。
 このように昨年はウルトラマン関係のクリエイターが次々に亡くなったが、今年はウルトラマン誕生から55年。
 初夏には、庵野秀明企画脚本、樋口真嗣監督の映画「シン・ウルトラマン」が公開されると言う。
 ウルトラマンの物語は続いていく。

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No.473(Web版123号)1

 My BESTS 2020

 中嶋 康年

1「シオンズ・フィクション」イスラエルSF傑作選 竹書房
去年辺りから「竹書房」のSF部門が立て続けに注目作を出している。その中の一つで、これはあたりでした。「アレキサンドリアを焼く」「完璧な娘」「シュテルン=ゲルラッハのネズミ」が中でも感銘深い。「ギリシャSF傑作選」も企画されているというので、楽しみである。

2「日本SFの臨界点」伴名練 編
去年「なめらかな世界とその敵」がヒットした伴名練が編んだ日本作家短編集。[怪奇編]と[恋愛編]の2冊に分かれている。あまり知られていない作家のいい作品、名の知られている作家の隠れた名品など、よく集めたものだと思う。PM11月号の表紙に使わせてもらった。

3「マーダーボット・ダイアリー」マーサ・ウェルズ
保険会社の人型警備ユニットが自らを縛る統制モジュールをハッキングして自由になりながら、そのことを隠して契約者の保安業務をこなしていく物語。いわゆる、「意識あるロボット」のひとり語りで、1人称が原語では単に“I”なのだが、それを「私」ではなく「弊機」と訳している訳者が素晴らしい。

4「ドラキュラ伯爵」NETFLIX
ブラム・ストーカーの原作「吸血鬼ドラキュラ」の登場人物を使いながら今までにない展開のミニシリーズ。意外な展開の連続で、「そう来るかー」とのけぞる。ただし、原作を知らないとどこが面白いのかわからない可能性ありです。

5「メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち」シオドラ・ゴス
「ジキル博士とハイド氏」のジキルの娘とハイドの娘、「モロー博士の島」のモローの娘、フランケンシュタイン博士の娘、「ラパチーニの娘」の呼気に毒が含まれるベアトリーチェという娘の5人がシャーロック・ホームズと「錬金術師協会」の謎を追う。他にも名作と呼ばれる小説の登場人物が多数登場する。キム・ニューマン「ドラキュラ紀元」の趣向です。

6「三体II」劉慈欣
近頃、懐古調・復古調的な作品を読むことが多いと感じているが、これもその一つ。どこかレトロチックな感じがする。乱暴な言い方をすれば「I」はモダンで「II」はレトロ調。このベスト10では、2・4・5・6・7・8あたりがそれ。山村正夫とか生島治郎、今月と昨年7月の表紙に使ったエドモンド・ハミルトンの新刊などが出ていて、世間的にもそんな傾向か。

7「ワンダーウーマン1984」(映画)
言わずと知れた女性スーパーヒーロー映画の第2弾である。昔は「スーパーヒロイン」という言葉を使っていたが、最近は男性でも女性でも「スーパーヒーロー」と呼ぶようになった。ワンダーウーマン役の女優としては、ガル・ガドットはまさにはまり役でアクションも素晴らしい。

8「幻綺行」横田順彌 著╱日下三蔵 編
1989年に「SFアドベンチャー」に掲載され、90年に「中村春吉秘境探検記」シリーズと銘打たれて単行本が出たが、未収録だった2編を追加して「完全版」としてとして文庫化。明治SFものなのでレトロチックなのはもちろんなのだが、そのレトロ具合が気持ちよく、めっぽう面白かった。

9「ロック&キー」NETFLIX
父親を殺された3人の子供(といっても2人は高校生、1人は小学生)が母親と一緒に父の実家の屋敷に引っ越してきて、父の死の真相を探るミニシリーズ。このドラマの面白さは秘密のドアがいくつもあって、末っ子の男の子がどこからかその鍵を見つけてきて開けていくというところ。そのドアの向こうは自分の行きたいところにつながっていたり、人の心の中だったり、体から抜け出して霊体となって空を飛べたりするのである。

10「ザ・ボーイズ」season2 Amazon Prime
昨年のベスト10で2位につけたドラマの続編。新しい女性のスーパー(アンチ)ヒーローの登場で、ますますエグさ倍増。ヒーローチーム「セブン」のリーダー、ホームランダーの心の闇も深く描いて充実のシリーズ。

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その他、印象に残った作品(順不同)
君待秋ラは透き通る、東京の子、プロジェクトぴあの、月の光、堕地獄仏法/公共伏魔殿、婆沙羅/少年室町倶楽部、きらめく共和国、ワンモア・ヌーク(以上、書籍)
サルベーション/地球の終焉、SHAZAM、ドロヘドロ、BNA、グレートプリテンダー、シスター戦士、オールドガード、呪術廻戦、ママは世直しヒーロー、スタートレック・ピカード、波よ聞いてくれ、TENET、キングズマン・ゴールデンサークル(以上映像作品)

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