« No.472(Web版122号)2 | トップページ | No.473(Web版123号)2 »

No.473(Web版123号)1

 My BESTS 2020

 中嶋 康年

1「シオンズ・フィクション」イスラエルSF傑作選 竹書房
去年辺りから「竹書房」のSF部門が立て続けに注目作を出している。その中の一つで、これはあたりでした。「アレキサンドリアを焼く」「完璧な娘」「シュテルン=ゲルラッハのネズミ」が中でも感銘深い。「ギリシャSF傑作選」も企画されているというので、楽しみである。

2「日本SFの臨界点」伴名練 編
去年「なめらかな世界とその敵」がヒットした伴名練が編んだ日本作家短編集。[怪奇編]と[恋愛編]の2冊に分かれている。あまり知られていない作家のいい作品、名の知られている作家の隠れた名品など、よく集めたものだと思う。PM11月号の表紙に使わせてもらった。

3「マーダーボット・ダイアリー」マーサ・ウェルズ
保険会社の人型警備ユニットが自らを縛る統制モジュールをハッキングして自由になりながら、そのことを隠して契約者の保安業務をこなしていく物語。いわゆる、「意識あるロボット」のひとり語りで、1人称が原語では単に“I”なのだが、それを「私」ではなく「弊機」と訳している訳者が素晴らしい。

4「ドラキュラ伯爵」NETFLIX
ブラム・ストーカーの原作「吸血鬼ドラキュラ」の登場人物を使いながら今までにない展開のミニシリーズ。意外な展開の連続で、「そう来るかー」とのけぞる。ただし、原作を知らないとどこが面白いのかわからない可能性ありです。

5「メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち」シオドラ・ゴス
「ジキル博士とハイド氏」のジキルの娘とハイドの娘、「モロー博士の島」のモローの娘、フランケンシュタイン博士の娘、「ラパチーニの娘」の呼気に毒が含まれるベアトリーチェという娘の5人がシャーロック・ホームズと「錬金術師協会」の謎を追う。他にも名作と呼ばれる小説の登場人物が多数登場する。キム・ニューマン「ドラキュラ紀元」の趣向です。

6「三体II」劉慈欣
近頃、懐古調・復古調的な作品を読むことが多いと感じているが、これもその一つ。どこかレトロチックな感じがする。乱暴な言い方をすれば「I」はモダンで「II」はレトロ調。このベスト10では、2・4・5・6・7・8あたりがそれ。山村正夫とか生島治郎、今月と昨年7月の表紙に使ったエドモンド・ハミルトンの新刊などが出ていて、世間的にもそんな傾向か。

7「ワンダーウーマン1984」(映画)
言わずと知れた女性スーパーヒーロー映画の第2弾である。昔は「スーパーヒロイン」という言葉を使っていたが、最近は男性でも女性でも「スーパーヒーロー」と呼ぶようになった。ワンダーウーマン役の女優としては、ガル・ガドットはまさにはまり役でアクションも素晴らしい。

8「幻綺行」横田順彌 著╱日下三蔵 編
1989年に「SFアドベンチャー」に掲載され、90年に「中村春吉秘境探検記」シリーズと銘打たれて単行本が出たが、未収録だった2編を追加して「完全版」としてとして文庫化。明治SFものなのでレトロチックなのはもちろんなのだが、そのレトロ具合が気持ちよく、めっぽう面白かった。

9「ロック&キー」NETFLIX
父親を殺された3人の子供(といっても2人は高校生、1人は小学生)が母親と一緒に父の実家の屋敷に引っ越してきて、父の死の真相を探るミニシリーズ。このドラマの面白さは秘密のドアがいくつもあって、末っ子の男の子がどこからかその鍵を見つけてきて開けていくというところ。そのドアの向こうは自分の行きたいところにつながっていたり、人の心の中だったり、体から抜け出して霊体となって空を飛べたりするのである。

10「ザ・ボーイズ」season2 Amazon Prime
昨年のベスト10で2位につけたドラマの続編。新しい女性のスーパー(アンチ)ヒーローの登場で、ますますエグさ倍増。ヒーローチーム「セブン」のリーダー、ホームランダーの心の闇も深く描いて充実のシリーズ。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

その他、印象に残った作品(順不同)
君待秋ラは透き通る、東京の子、プロジェクトぴあの、月の光、堕地獄仏法/公共伏魔殿、婆沙羅/少年室町倶楽部、きらめく共和国、ワンモア・ヌーク(以上、書籍)
サルベーション/地球の終焉、SHAZAM、ドロヘドロ、BNA、グレートプリテンダー、シスター戦士、オールドガード、呪術廻戦、ママは世直しヒーロー、スタートレック・ピカード、波よ聞いてくれ、TENET、キングズマン・ゴールデンサークル(以上映像作品)

|

« No.472(Web版122号)2 | トップページ | No.473(Web版123号)2 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« No.472(Web版122号)2 | トップページ | No.473(Web版123号)2 »