No.478(Web版128号)2
金融な人々
中井 良景
◯ 塵も積もれば(休眠預金)【再掲載、一部修正、追加】
東日本大震災の復興財源が問題になった時、銀行等の「休眠預金」の活用が提案された。休眠預金とは、長期間引き出しや預け入れが行われていない預金のことで、銀行では十年以上経過して預金者と連絡がつかないものを対象としている。
私が仕事をしていた頃、私の職場でも数万件の休眠預金(私の職場では睡眠預金という名称だった)口座があり、年々増加していた。金額は憶えていないがかなりの額にのぼり、それを管理するオンラインシステムも整備されていて、けっこう管理に手間が掛かっていた。休眠預金の払い戻しもそれなりにあった(これがかなり面倒なのだ)。私の職場だけではない。全国の銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、JAバンクなどの休眠預金合計繰り入れ額は年間一千億円に達するとも言われている。だから、休眠預金の一部を復興資金に充てようという構想が持ち上がったのも不思議ではない。その後、政権が変わってどうなるのかと思っていたら、二◯一六年一一月に休眠預金法が成立した。やはり自民党も、というよりも財務省は格好の財源を忘れていなかったのだ。しかし塵は積もるものだ。
ちなみに、郵便貯金は休眠預金になってから十年経過すると国庫に繰り入れられて、貯金者本人であっても払い戻しが出来なかったが、二◯◯七年一◯月の郵政民営化以降にゆうちょ銀行へ預入された貯金は、休眠預金になっても他の銀行同様払い戻しが可能である。
◯ 分散乗車【再記載、一部修正】
二◯一六年一一月、コロンビアで旅客機が墜落し多くの人が亡くなった。中には七十数名のサッカー選手がいた。そのチームはどうなったのだろう。
私は若い頃、金融機関に勤めていた。支店の職員旅行に初めて参加した際、先輩から “旅行で船や飛行機に乗るときは必ず二班に分ける” ということを教わった。万一の場合、翌日から支店を開けられず営業が出来なくなってしまう(実際に開けられるかどうかは疑問だが)からだ。地域での金融機関の重要性とプロの厳しさを知って納得した。それから暫くは職員旅行で船や飛行機に乗ることはなかった。その後、私は本部へ異動になり、そこでフェリーに乗るケースに遭遇した。その時の旅行幹事は別の先輩だったが、全員(本部の職員旅行参加人数は支店の数倍である)を同じ船に乗せた。乗船時間は決して長いものではなかったが、それでも転覆する可能性はある。幸い何もなく無事に旅行は終了したが。二班に分けるというのは色々な組織で行われているとは思う。
その後、私は職場でリスク管理やBCPのマニュアル等を作成した。しかし旅行での乗車分散のことは盛り込まなかった。頭になかったのだ。リスクはそれこそどこにでも存在するが、細かく対抗するのは至難だ。必要であることは論を俟たないが。
二◯二一年四月
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