No.483(Web版133号)3
未来はどうなる?
中村達彦
11月にBSプレミアムで、SF映画でロバートゼメキス監督の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が、週ごとに放送された。
うだつが上がらない高校生のマーティ・マクフライが、マッドサイエンティストドクに開発された車型のタイムマシンデロリアンで、30年前にタイムトラベル。そこで過去の両親に会い、母親が自分に恋してタイムパラドックスが生じるなどトラブルが相次ぐ。このままでは、マーティが消滅してしまう。
マーティは、その明るさと行動力で次々にトラブルを解決し、現代へ帰還する。
現代では、若干改変があり、家庭が良い方に変わっていた。
上映は36年前の1985年で、年末に日本でも上映されヒットした。
アイデアはタイムトラベルだが、次々にピンチになり、予想できなくて「さあどうなる」とくぎ付けに。マイケル・J・フォックス演じるマーティが当時の若者らしい台詞と共に軽快なアクションで次々にピンチを乗り切っていく姿に魅了された。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は89年にPART2が、半年後に早くもPART3が作られた。
前作の終了直後、新たに改造され飛行も可能になったデロリアンで2015年へ行ったマーティとドク。
未来でマーティの息子が犯した過ちを防ぐが、その後、マーティがしてしまった行動から、過去が改悪されてしまう。
マーティはドクと異なった1985年を経て、再びPART1の1955年の時へ行き、改悪を防ごうと奮闘する。
幸い歴史が改悪されるのは回避されたが、ドクが雷雨でデロリアンごと70年前にタイムスリップ。PART3へ。
マーティは70年前地中に埋められたデロリアンを発掘、55年のドクの助けを借りて過去の世界1885年へ。そこでドクと再開するが、西部劇の世界で新たなトラブルに見舞われてしまう。命を落とす危機に。
果たして2人は現代に帰られるのか?
続きは急きょ作られた感があり、所どころ「あれ?」と思う疑問点もあるが、伏線はあらかた回収され、良い結末で幕を閉じる。
あちこちにSF好きのニヤリとするネタがある。マーティが55年の世界で、若かりし父親がSFを書いており、深夜、就寝中の父親を驚かすが、その際、バルカン星人のダースベイダーだと名乗る。
2015年の世界にタイムスリップすれば、車が空を飛んでいるなど、すでに終わった2015年より進んだ世界(ジョーズは19作まで新作が作られ、バーチャル喫茶店では、実際はこの時亡くなっているレーガンやマイケル・ジャクソンもいる)がある。続いて戻った1985年の世界ではマーティの過ちで、大儲けして羽振りが良い悪役がおり、その姿はトランプ前大統領を連想する……。
そして1885年にはジューヌ・ヴェルヌがアメリカでも知られ、その名前が最後にあることで使われる。
他にも劇中いろいろなお遊びがある。
ジューヌ・ヴェルヌはドクも好きな作家で、彼は「海底二万里」「地底旅行」や「月世界旅行」を書いた。
話は変わるが、ヴェルヌの「月世界旅行」は、それまで書かれた月へ行く話より、科学考証を重視している。世界各地で読まれ、多くの人々に影響を与えた。
BSプレミアムでは月曜日夕方「映像の世紀」と言う番組を放送している。世界各地でこれまで撮影された映像を、歴史やテーマで区切って放送するが、ロケット開発や月への到達について多く取り上げた。
20世紀初頭、ロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキーは独学で宇宙旅行について研究。彼はまたSF作家としても活動し、ソ連建国後、宇宙旅行について作られたSF映画に関わっている。宇宙服や重力環境を正しく予測した。
少し時を経て、ドイツでは、ヘルマン・オーベルトが宇宙旅行について研究、ドイツ宇宙旅行研究会に入り、映画監督フリッツ・ラングの撮った「月世界の女」に関わり、映画の中で本当にロケットを飛ばそうとしたらしい。オーベルトの弟子にあたるヴェルナー・フォン・ブラウンはナチスに近づき、ロケット兵器V2号を開発実用化。戦後にアメリカに亡命、後にアメリカ航空宇宙局NASAで本格的な宇宙開発を進める。同時にディズニーの作品に協力している。
一方、ソ連は第2次世界大戦で、ドイツからV2号や多くの技術を入手。戦前からの自国の研究と合わせ、戦後しばらくロケットの技術で世界をリードした。
しかしガガーリンの宇宙遊泳を成功させるが、当時ソ連領内のロケット基地で爆発事故が起こり、多くの犠牲者が出していると「映像の世紀」で明かしている。
そして1969年、アメリカは月への着陸を成功させる。「月世界旅行」から100年足らず、SF小説が世界を動かしたのだ。
それから半世紀以上が経過した。
2021年ももうすぐ終わる。新型コロナが依然世界にはびこっているが、日本はオリンピックをやり、世界は温暖化問題を話し合った。気温上昇は深刻な問題になっている。
宇宙に目を向ければ、中国が宇宙開発に力を注ぎ、民間企業が次々に宇宙に参入している。ウイリアム・シャトナーも宇宙へ行った。
来年は、未来はどうなるのだろう?
「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」結末、ドクの台詞で締めくくられている。「君達の未来はまだ決まっていない。未来は自分で切り開くものだ」
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