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No.482(Web版132号)3

 ゴルゴ13いまだ完結せず

 中村達彦

 さいとう・たかをが亡くなったと言う訃報が伝えられた。享年84歳。
 60年以上マンガを描き続け、多くの作品を世に出した。
 代表作「ゴルゴ13」は68年から現在に及び、単行本は200巻を超える。どこの組織にも属さぬ暗殺者を描いたストーリーだが、多くの人に読まれ、記録的作品である。
 二度実写で映画があり(うち1つは今年新型コロナで亡くなった千葉真一がゴルゴ13役)、アニメも度々作られた。
「無用ノ介」「雲盗り暫平」など他にも多くの作品を発表し水戸黄門や新撰組を題材にした作品もある。日本のマンガでさいとうが果たした役割は大きい。
 彼の前までマンガは子供の読むものとされていたが、さいとうは大人の鑑賞も目指した劇画を目指し、映画の演出を取り入れた。
 自らがストーリーを考え、絵を描くだけでなく、分業制を取り入れ、作画や脚本を自分よりうまい複数の人にやってもらい(中には、プロの作家、マンガ家もいる)大量の質と量を保った。彼自身のプロダクションを有し、後に出版社を興した。
 出版社で出した時代劇雑誌乱で、池波正太郎の「鬼平犯科帳」を自ら劇画化、長期連載した。他にも時代劇のマンガを複数掲載しており、先日亡くなったみなもと太郎の代表作で未完に終わった「風雲児たち」を乱で掲載している。
 さいとうは、大阪で活動を始めた頃に手塚治虫を訪ねたことがあったし、東京では石ノ森章太郎やちばてつやとも親交を結び(藤子不二雄Ⓐの「まんが道 愛…しりそめし頃に…満賀道雄の青春」にもさいとうがトキワ荘を訪ねて、マンガ家たちと親交を結ぶエピソードがある)、後に手塚や石ノ森から原作をもらい劇画で描いている。
 そう言えば、やはり映画から大きな影響を受け、歴史ものでも多くの作品を発表している横山光輝は、88年に大河ドラマ化された新田次郎の「武田信玄」をマンガで描いたが、さいとうも新田次郎の「武田信玄」を手がけている。両方を読み比べてみると、さいとう版の方がドラマの描き方や登場人物の感情の変化が富んでいて面白かった。
 さいとうは、時代劇や現代ものの作品が多く、SFものが少ないように思えるが、70年に連載された2人の主人公が合体してヒーローになる「バロム・1」は、東映で特撮放送された。小松左京の「日本沈没」を少年チャンピオンで連載している。
 67年に連載された「THE・シャドウマン」は、悪の組織に新聞記者の青年が超力を持つ人間に改造されるも、己の正義のため組織と戦う「仮面ライダー」に通じたストーリーで、組織も次々に刺客を繰り出し、主人公の友人や彼を助ける善意の組織も登場する。特撮化されなかったのは惜しい。
 76年の「サバイバル」は、地球が天災により壊滅的被害を蒙り、生き残った少年が家族を探して流離うが、後半では生き残った人々とのドラマがあり、週刊少年サンデーで22巻まで話が続いたヒット作となった。
「サバイバル」は近年別のマンガ家にリメイクされ、90年代には隕石にミサイルを撃ち込んだことで地球が壊滅的な被害を受け、生き延びる人々のドラマをハードに描いた「ブレイクダウン」がある。執筆にあたって阪神淡路大震災も参考にしたらしい。
「ブレイクダウン」の少し前に描かれた「漂流」は本格的SFである。大型宇宙船が遭難、長い月日が流れ、多くの人間を乗せて宇宙をあても無く彷徨っている。その中の青年ゴローは住人たちのグループにリーダーに担ぎ上げられてしまう。
 ゴローはグループをまとめたり、彼の台頭を良しとしないものと対立しながら、様々なトラブルを解決。やがて宇宙船を取り巻く秘密を知り、人々を導いていく。
 その前の66年には、宇宙を舞台に、最新の宇宙船に密航した少年たちが、出発後、教官が事故で死に自分たちの力で宇宙船を動かし、続いて異生物と戦い、独自で生きる道を切り開いていく「サイレントワールド」を週刊少年マガジンで発表している。
「ゴルゴ13」も度々SF設定が使われた。核兵器を無力化させるビームとか、コンピューター生命体が己をイエスキリストと名乗る、イラクで開発されたアメリカまで砲弾が届く長距離砲とか、ゴルゴ13の狙撃を阻止するエスパー、ヒトラーや毛沢東のクローンなど様々なアイデアを用いた。
 印象的なのは、148巻に収録されている「装甲兵SDR2」。ベトナム戦争の失敗から、アメリカ軍はロボット兵器を開発(開発には日本の技術も使われている)。そのテストで世界中のテロリストを無人島に集め、戦わせる。容赦なくテロリストを倒していくロボット兵器バトルスーツSDR2。そこへ偶然ゴルゴ13が迷い込むと言うエピソード。
 他にも面白いアイデアが「ゴルゴ13」には多く用いられ、先取りした話も。
 物語の構成でも、冷戦から現在の混とんとした世界でゴルゴ13は活躍したが、マンネリに終わらず、いろいろな意外な手段を見せてくれた。ストーリーによっては、ゴルゴ13が最後のコマだけ出演する回があったり、毎回事件に巻き込まれるキャラクターを物語の中心にすることもあるなどひねりを加え、飽きさせなかった。
「ゴルゴ13」の最終回はどうなるか?読者の間でささやかれており、既にさいとうの手で描かれているとも言われていた。
 生前のさいとうも結末を考えているとコメントしたが、プロダクションスタッフの手でしばらく続けられると言うことである。

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