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2022年2月

No.485(Web版135号)3

 

 異世界ゆるふわチート物伝説   新村佳三

1月から始まった深夜アニメに、奇妙な魅力を感じさせる作品がある。
「リアデイルの大地にて」という作品で、内容は、今流行りの異世界転移ゆるふわチート物。主人公が、かつて自分がプレイしていたゲーム世界に転移してしまい、チートな強さを利用して、ひとりで冒険するというもの。1話、2話あたりで、制作が不安定になるほど低予算で、演出、作画も、昭和アニメか?と思わせるほど、古臭い。
主人公視点のモノローグで話は進んでいく。知らない土地を訪ね歩くから、一種の、ロードムービー的な?低予算で、ロードムービー的、というと、思い出すのは星雲賞を取った、けものフレンズ。でも作風は全く違うように感じる。何が違うのだろう?
けものフレンズは、カメラの視点が監督目線で統一されている。物語の舞台であるジャパリパークで監督がカメラを回して二人の主人公の旅の様子を記録していく、というスタイル。
リアデイルはもっぱら主人公目線。物語は主人公のケーナが宿屋で目を覚ますところから始まる。やがて自分が異世界に転移した事に気がついて、この異世界がかつて自分がプレイしたゲームの200年後の世界だと知る。200年経って、自分の知っているゲームとはかなり変わってしまった世界を旅していく。ジャパリパークが、かつてアミューズメントだったモノの廃墟を旅していくのと、似ているといえば似ている。
話が進むにつれ、ケーナは自分が置かれた立場がシビアな事に気がついてくるが、とりあえず宿屋で寝込んで現実逃避する。心配しての周りのちょっかいには余計な事だと暴力で対応する。サバサバ系だ。基本一人で対応する系なので、会話も少なくモノローグ多く静かな展開だ。魔法力がチートで基礎体力もチートなので、ピンチというのは基本なく、安心して見ていられる。

最近、この手の異世界に転移して(しない場合もある)チート能力を持っていて、なぜかゆるふわ展開のアニメが多い。スライム300年とか。防御力全振りとか。どの作品も不思議と中毒性がある。
食堂ものアニメなど美味しい食材や料理で中毒性のあるグルメアニメを「フードポルノ」という向きもある。新海誠作品など、美しい魅力的な背景美術も、そのインパクトから「背景ポルノ」「アートポルノ」などと言われたりもする。
すると「異世界ゆるふわチートポルノ」というジャンルなのだろうか?見ていて気持ちよくて中毒性があり、頭を使わなくて良い。エンターテイメントというより、マッサージを受けている感じ。作品内容とは裏腹に退廃な気分にすらさせる。
20年後、30年後の老人ホームにはこんなのがエンドレスで流れているような気がする。世紀末感が。でも、悪い気はしない。恐ろしい
悪魔がささやく「こんなんで、ええんや、ええんやで・・」

 

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No.485(Web版135号)2

 2022年は多難に
 
 中村達彦
 
 朝日新聞1月11日の朝刊20面で、太陽から100光年以内に、惑星が横切る時の恒星の明るさから分析したトランジット法によると、恒星が75個あり、それを回る惑星のうち水のある惑星は29個あるとのこと。
 その中に知的生命体を有する惑星があるかもしれない。
「ET」の様な友好的宇宙人がいるかもしれないし、「インデペンデンスディ」や「マーズアタック」、「バトルシップ」の如く、戦争になることもある。
 どの映画でも最初接触してきた宇宙人に、地球は友好的に接するも、攻撃を受ける(「バトルシップ」では、地球から宇宙に発した送信から、宇宙人が地球を知って攻めて来る)。
 現在、地球から宇宙にメッセージを送っているが、映画のせいかそれは危険で、控えるようにとの声も。
 宇宙空間から人工衛星で、地球へ接近し衝突するかもしれない小惑星を防ぐプロジェクトが進んでいると去年ニュースになった。人工衛星から金属体を発射、小惑星に命中して、進路を変えるそうだ。
「ディープ・インパクト」や「アルマゲドン」が頭に浮かぶ。
 そう言えば「インデペンデンスディ」は96年公開、「マーズアタック」は同年に少し遅れて、「ディープ・インパクト」も「アルマゲドン」も98年公開だな(アメリカ映画で次々に封切られたが、あちこちネタが被る。大きくトラブらなかったが、日本と違ってアメリカは寛容なのか?)。
 今年の初め、ニュースによると、昨年後半は治りかけていた新型コロナが新年になってからぶり返し、急速に感染者が増えているとのこと。
 またいろいろ規制されるな。
 今度は死者が少ないが、外国は日本よりひどいことになっていると……。アメリカも日本より、感染者も死者も多い。3年目だ。これから大丈夫なのだろうか?いつまで続くのだろうか?2020年の正月はこうなると想像してなかったが。
 コロナ下でも、大国同士の対立は続いている。昨年アメリカと中国、ロシアとの対立が表面化し、加えてアメリカは昨年大統領選挙後の騒乱で、国民が議会に乱入し、国外ではアフガニスタンから撤退すると大国の威信が失われる事態が続いた。
 アメリカとロシアや中国との対立。更にイランや北朝鮮との対立もある。
 北朝鮮は核兵器やミサイルの開発を進め、今年もミサイルを日本海に発射して、ニュースになった。
 表に出ないが、北朝鮮国内は新型コロナでひどいことになっている。アメリカの制裁措置で貿易もままならない。
 にも関わらず、ミサイルが発射できるのは、中国がひそかに援助しているかららしい。
 2月に北京で冬季オリンピックが開かれるが、アメリカや日本、韓国などは開催にあたって政府高官を派遣しないと宣言し、他にも香港や台湾で中国と対立を深めている(新型コロナの発生源は中国との声も)。
 日本も無関係ではいられない。アメリカと中国の狭間にあり、どちらとも深い歴史的繋がりがある。これから重要な選択をさせられることになるだろう。
 38年前に核戦争の惨禍を描いた「ザ・デイ・アフター」と言う映画がアメリカで作られたが、劇中の惨状は実際に起こるとされるものを幾らか抑えたと言われる。
 これまで多く核戦争を扱った小説やマンガが発表されてきた。
 昨年1月に核兵器禁止条約が発令され、今年1月3日にアメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスの5か国が核戦争に勝者なしと軍縮を訴える共同声明を行った。
 世界は良い方に向かっている。軍拡が進み嫌なニュースも流れているが、核兵器が広島・長崎以来76年一度も戦争で使われていないのも事実。人類の理性・良心を信じたい。
 だが、第1次世界大戦後、世界各国は大戦争を防ごうと国際連盟を樹立し軍縮を行ったが、第1次世界大戦終結から20年後に更に悲惨な第2次世界大戦を引き起こしたし、スペイン風邪が流行したのも、その原因は第1次世界大戦の軍隊の移動である。
 世界はいろいろな問題に悩まされている。
 19世紀以来、石炭や石油と言ったエネルギーを使い続けることで、気温の上昇、海水温上昇が続き、砂漠化、山火事が世界のあちこちで年々広がり、氷域の融解や水面上昇も北極や南の島々で起こった。
 日本も台風をはじめとする水害に苦しんでいるが、地球温暖化が関係している。
 昨年国際会議COP26が開かれ、今世紀末に気温の上昇を大幅に抑えないと取り返しがつかないと警告された。
 廃プラスチックの問題も表面化した。
 海も陸もプラスチックのごみで溢れ、生態系も脅かされている。
 これからも増え続けるだろうが、その処分はどうするのか?
 各国や大企業で対策が話し合われ、プラスチックに替わる材質の使用などが始まっている。優れた研究もあるが、すぐには問題を解決出来ない。
 他にも、今年になってから南太平洋で海底爆発が起こったり、昨年末、日本で人の心の闇が起こした凶行で沢山の人が亡くなった。
 多くの事件や天変地異は何の前触れもなく起こる。2022年もどんなことがあるだろうか、無力を感じてしまう。
 いっそのこと、宇宙人がやって来て、多くの問題を優れた力でまとめて解決してくれないかと思うのだが、あれっ?

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No.485(Web版135号)1

 My BESTS 2021

 中嶋 康年

1「エターナルズ」クロエ・ジャオ監督(映画)
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)系列の現時点での最新作。これでMCUはまた違う方向に広がり始めた。このPMが出るころには「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」が公開されていることと思うが、マルチバースがテーマになるようなので、またまた違う方向に広がりそうだ。

2「テスカトリポカ」佐藤 究
直木賞・山本周五郎賞受賞作品。私は賞を取ったからといって読むことはないのだが、まだ賞を取る前、題名がアステカの神の名前なので「守備範囲」だなと思って読んだ作品。圧倒的な闇を描いているので「全部読み通せなかった」という人もいると聞く。

3「デューン 砂の惑星」ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(映画)
続編が制作されることに決まったようなので、まずはめでたい。「アクアマン」のジェイソン・モモアもよかったが、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のドラックス、デビッド・バウティスタもいい味を出していた。リンチ版でスティングが演じたフェイドがまだ出てないので、これが誰になるかだな。

4「この砂漠の片隅に」(パワードスーツSF傑作選)
副題の通り、パワードスーツをテーマにした短編集だが、テーマの性質上「AI」が密接にかかわってくるので、人工知能関連の話が多くなるのは仕方がない。「ケリー盗賊団の最期」「外傷ポッド」「ドン・キホーテ」が良かった。

5「ファルコン&ウィンターソルジャー」ディズニー・プラス
「アベンジャーズ・エンドゲーム」の後、5年にわたり消失していた全人口の半数の人々が戻ってきたとき、世界はどう反応したかという「フェーズ4」と呼ばれるMCUに属する全6回のドラマシリーズ。戻ってきた人たちだけが優遇されることに反発するテロ組織の発生、引退したキャプテンアメリカを引き継いだ人間が陥る闇などテーマは深い。

6「三体III」劉慈欣
ベストセラーとなった「三体」シリーズの完結作。期せずして昨年と同じ第6位となったが、本作は時空のスケールが大きく広がった。ここまであっちこっちに振り回しながらうまくまとめたのは圧巻である。しかし、広がりすぎちゃった感があり、小説としての面白さは「Ⅱ」のほうが上という人も多い。

7「笊ノ目万兵衛門外へ」山田風太郎
大名からあつい信頼を得ながらも様々な事件の中で想像を絶する程の不条理に出逢い、非業な最後を遂げる同心を描いた表題作を始めとする5編の短編集。河出文庫解説の縄田一男氏は「もし、山田風太郎の短編の中から一編を選べ、といわれたら、私は坂下門外の変秘聞ともいうべきこの一編を推す」と書いている。

8「ワンダヴィジョン」ディズニー・プラス
またまたMCU「フェーズ4」に属する全9回のドラマシリーズ。面白いのは最初はMCUと全く関係がないような「奥様は魔女」風の30分の白黒のシットコムで始まるのだが、だんだんと部分的に色がついてきてMCUパートが侵食して来るにつれてドラマの1回の時間も伸びてきて、最終回では51分の番組となる。基礎知識が必要となるので、一見さんはお断りかも。

9「アーケイン」NETFLIX
ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」のネットフリックス・オリジナルアニメ化作品らしいのだが、ゲームの方は全く知らなかった。すごいのはアニメの表現方法。筆で描いたような絵画調の絵がグリグリと動くのである。「Love,Death & Robots」であらゆるアニメの手法が表現されたかと思ったが、それとはまた違う全く新しいアニメだ。

10「花嫁殺し」カルメン・モラ
スペインで2018年にベストセラーとなった「La novia gitana」の全訳である。シリーズ3作の1作目なのだが、原作は白地にいっぱいにそれぞれ「✖️」「◯」「◇」という装丁で非常に目を引く。それ以上に大きな話題となったのは「マドリードの女性作家」とだけわかっている覆面作家という触れ込みだったのだが、2021年プラネタ賞授賞式のステージに上がったのは3人の男性脚本家だったこと。「カルメン・モラ」とは3人の共作ペンネームだったのだ。
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その他、印象に残った作品(順不同)
機龍警察 白骨街道、時の子供たち、播磨国妖奇譚、元彼の遺言状、ドラキュラ戦記、ドラキュラのチャチャチャ、時のきざはし、函底のエルピス7、機巧のイヴ・帝都浪漫篇、ネットワーク・エフェクト、機忍兵零牙、猛き箱舟、赤い魚の主婦、室町御伽草子(以上、書籍)
クイーンズ・ギャンビット、ゴジラ・シンギュラポイント、ホームランド、不滅のあなたへ、サニーボーイ、Vivy、StarTrek:LowerDecks、ホワット・イフ?、シン・エヴァンゲリオン、ブラック・ウィドウ(以上映像作品)

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