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No.489(Web版139号)3

 ウクライナの戦争に昔の日本を見た

 中村達彦

 ロシアとウクライナの戦争は2月24日以来続いている。戦争になるまい、寸前でロシアが思い留まるだろうと予想していたが、本当に戦争になってしまった。
 3か月以上経つが、まだ続いている。ウクライナは善戦し、ロシアは苦戦。
 車輌の残骸が廃墟のあちこちに転がっている戦場の映像を毎日眼に。戦火に苦しむ人々、日本に亡命する人もいる。
 惨禍はSNSを通じて多く眼にし、戦場ではミサイルやドローンと言った兵器が使われている。日本から遠く離れての戦争だが、ロシアもウクライナも己が正しいと主張し、フェイクも含め多くのニュースが飛び交う。昔、ベトナム戦争では考えられない。SFだ。
 日本を含む欧米各国は強くロシアに抗議し、次々に制裁を実施。ロシアも対抗処置を、核兵器使用すらほのめかし、国内では批判の声もあるが戦争を終える様子は無い。
 戦争の影響もあり、食糧やエネルギーの価格が上がっており、TVでも毎日伝えられ、地球の裏の出来事などと軽々しくない。
 昔から、ウクライナはロシアに苦しめられてきた。かつてソ連の一部だった時に、収奪され何百万人も死亡している。第2次世界大戦では、ドイツから攻められ、ウクライナはこの時も戦場に。ウクライナの人は、当初、ドイツを解放軍と歓迎したそうだ。しかしドイツも、ウクライナに収奪や虐殺を行い、戦後もソ連による支配が続いた(ソ連のスターリンは、プーチンやヒトラー以上の苛烈な悪しき独裁者である)。チェルノブイリ原発の事故もある。日本と朝鮮以上に、遺恨は深い。冷戦終結、ソ連解体と共に、ウクライナは独立したが、当然の帰結であろう。
 国際連合も、ロシアが拒否権を行使し、無力だ。もっともアメリカも過去イラクやアフガニスタンに戦争を仕掛け、ロシアを一方的に非難できないと思うが……。
 ロシアとウクライナ、欧米の関係は、85年前の日本と中国、欧米の関係とあてはまる。
 日本は軍事大国で明治以来大陸に侵略、当初は日本を守るためのものだったが、次第に欧米同様侵略へ。中国と戦争を続け、反対する声を抑え言論統制。欧米各国は日本を非難し、中国を援助、太平洋戦争に突入した。
 戦争と言えば、小松左京の書いた小説「戦争はなかった」を思い出した。
 人々が太平洋戦争のことを口にしなくなり、忘却している。それに気付いた主人公は抵抗するが、周りの人々にもまれていくと言う内容。30年前に「世にも奇妙な物語」でドラマ化されている。
 太平洋戦争や日本が昔アメリカと戦ったことを知らない若い人が多いが、30年前からのことで、フィクションではない。
 4月に急死した藤子不二雄Ⓐも71年に「赤紙きたる」と言う作品を描いている。
 平凡な青年、小池伸一(鈴木伸一がモデル)に届いた召集令状。彼はいたずらだと思うが、冷ややかな視線を感じる。出頭期限が来た後、何も起きないので安心するが……。
 戦争の時代に逆戻りする話は昔からあるが、現在、ウクライナの戦争、防衛費増額、中国や北朝鮮との問題と言ったニュースでリアルに感じてしまう。
 1940年、日本は、中国との戦争や欧米からの続く圧力にこの先どうなるかと、総力戦研究所を設立した。政府や軍部からのエキスパートで模擬内閣を作り、機密のデーターを盛り込み、いろいろな課題を設け、今後予想される未来について調べた。現在で言うシミュレーションである。
 日本はこのままではアメリカやイギリスとも戦争になり、破滅すると言う結果が出た。
 当時の日本政府閣僚たちにも伝えられるが、かん口令が敷かれ、間もなく太平洋戦争が始まり、予測した通りになった。
 陸軍大臣で首相にもなる東條英機も、総力戦研究所の結果を知らされ、陸軍でも総力戦研究所とは別で研究して、この先日本が中国と戦争を続ければ、欧米とも戦争になり苦戦するとの予測が出ていた。
 政府も軍部も負ける結果が既に出ていたが、戦争を選択した。どうすれば回避できるか行わず、敗戦へ転がり落ちたのだ。
 総力戦研究所についても、30年前ドラマ化され、取り上げられている。
 戦前、日本国民は、ほとんどが政府や軍部の言いなりになり、大陸への侵略に賛成した。
 人気マンガ「のらくろ」「冒険ダン吉」にも、戦争について、日本が正しいと宣伝している部分があり、読者はそれを信じた。
 昨年亡くなった半藤一利は、歴史探偵として昭和史の研究で知られるが、少年時代に東京大空襲を経験し、政府への不信や何故こうなったかと感じたのがきっかけと語った。
 5月10日に早乙女勝元が亡くなったが、半藤同様少年時代に東京大空襲を経験し、長く戦争の悲惨さを訴え続けてきた。マンガやアニメの原作になった作品もあり、彼が書いた児童文学「猫は生きている」は印象深い。
 ある猫の一家とそれを見守る家族。戦時下に生きているが、3月10日の東京大空襲が襲う。一家は必死に逃げるが……。
「猫は生きている」は75年に人形アニメで映像化され、小学校で上映された。私も小学校4年生で観たがショックを受けた。
「はだしのゲン」「火垂るの墓」同様、戦争の悲惨さを伝える容赦ない作品である。
 ウクライナの戦争は、「猫は生きている」の悲劇が現在も繰り返されているのだ。まだコロナ問題が解決していないが、中国や北朝鮮はどうするのか?下手をすれば第3次世界大戦に繋がるだろう。
 いかなる結末を迎えるかわからないが、1日も早く終わることを祈ってやまない。

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